成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2014.01.27
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カテゴリ: 高速路線バス
さて、では「高速バスの観光シフト」とはなんだろう? 

実は先日、バス趣味友達と一緒に群馬県北部を1泊で回った。メインは、季節限定で今シーズンから運行開始した 「上州湯けむりライナー 伊香保・四万温泉号」 。東武バスウエストの西上尾車庫を起点に、上尾駅、川越駅経由で両温泉へ向かう高速バスである。都心から両温泉への高速バスは以前からあったが、今回は郊外始発。上尾は東武バスの営業エリア、川越は東武バスのエリアであるとともに東武鉄道の拠点駅。もちろん、運行する関越交通も東武系事業者。

三連休初日。多くの路線で続行便が出たはずだが、さすがに新規路線なので満席までは行かず、実乗19人。乗車改札時にこそっと覗き込んだ予約者リストから推測するに、 東武トラベル企画実施によるフリープラン の比率が圧倒的に大きい様子で驚いた。フリープランとは、往復の交通と現地の宿泊だけがセットになり、添乗員が同行しない旅行商品。航空や宿泊の団体(旅行会社)向け価格設定を活用するために形の上では募集型企画旅行としているが、実質的には個人旅行という商品形態で、特に航空の世界ではおなじみだ。

始発(わざわざ路線バスで移動した西上尾車庫)から乗ったのは、さすがに我々のみ。上尾駅で乗車した20代の女性二人(学生時代の友人どうしか職場の同僚か)と、川越駅からの女性(要するにおばちゃん)7~8人の小グループはフリープランらしい(地元客または帰省客らしきご夫婦などは個札の様子。それ以外は不明)。発車後、高速バスらしくテープによる案内放送に続き乗務員がワンマンマイクで補足放送を行ない、最後に名乗って放送を終えたところ、予想外にも前方に座るおばちゃん小グループからは拍手が上がった。

つまり車内は(厳密にはその小グループは)、クラツーやトラピックスのバスツアーの雰囲気なのだ。同様に観光地に向かう高速バス、例えば京王の富士五湖線や小田急箱根高速バスではほとんど見かけない光景だ。早い話がそのおばちゃん達は(一歩譲って、<今度、バスで四万温泉に行きましょうよ>と言い出したご本人はそうではなくとも、<いいわね、じゃあ●●さんも誘いましょうよ>と話に乗った方の残りのおばちゃん達は)、この高速乗合バスを「バスツアー」の貸切バスだと思っている(少なくともその区別がついていない)のである。

おそらく、東武バスの車内や東武東上線の車内、駅に「バスで行く四万温泉」のポスターが大きく貼ってあるはずだ。東武鉄道の広報誌や沿線情報誌にも掲載されているのかもしれない。オフシーズンの新規路線で10人以上の上積みはありがたく、私鉄系の底力を感じる。だが、そうなるとここで考えてしまう。この、「関越交通(運行)/東武トラベル(企画実施)/東武鉄道(沿線での告知)」という組み合わせなら、どの大手私鉄でも実現する。しかし、例えば、京王系の高速バスを使う京王観光の石和、諏訪などへのフリープランが、この関越交通のように乗客のほとんどを占めているなんていう話は聞かないし、近鉄(クラツー)や阪急(トラピ)に至っては、高速バスではなくバスツアー(貸切バス)で一大帝国を作り上げてしまった。かと言って東武グループが他の私鉄と比べて沿線住民を強くグリップしているかと言えば、むしろその点では、「私鉄経営の優等生」阪急や京王と比べて遅れ気味という気もする。なぜ、他の路線でもこの結果を出せないのか、考え込む。

一方、四万温泉は、湯治で知られた山深い小さな温泉街。草津などと比べればいたって静かだ。今回、私たちは、「上州周遊湯切符(関越交通の高速バス乗客限定で販売される、エリア限定ながら同社の路線バスに乗り放題のフリー乗車券)」でバスを乗り倒し湯檜曽温泉に泊まったが、ここも静かな温泉街。こぶりな宿(特にお風呂)には満足したが、それでも、ゆっくり飲みながら楽しんでも20時には夕食も済み、部屋食だから食事は下げられ部屋には布団がしかれてしまう。裏寂れたスナックでもいいから飲み屋は、と女将さんに聞いても、<タクシーで隣町まで>と言われる。まあ、早く寝てふだんの倍くらいの睡眠を取れたので、旅の意味は意外とそこにあるのかなとも思いつつ、時間を持て余したのは確かである。



つまりこういうことだ。何度も述べたように、大都市部での高速バスの認知は遅れている。本来なら高速バスを使った方が便利な地域へさえ、鉄道などを乗り継いで行く観光客も多い。一方で旅行会社が企画するバスツアーはそれなりに顧客を掴んでおり、当事者が意識したかどうかは不明だが、バスツアーのフリをした「カメレオン作戦」なら、一定の顧客を「バスツアー」から奪えることを関越交通の事例は示している(バス業界全体で見ればカニバリだけど)。

しかし旅行というのは常に目新しいネタを投下し続けないといけない商品分野なので、目的地を取り替えられる旅行会社ならともかく、路線に縛られたバス事業者の場合は、親会社に当たる鉄道の沿線住民だけに告知をしていてはいつかは飽きられ長続きしない(「認知・販路の限界」)。また、現地側の宿泊施設や観光集客施設も、クルマや貸切バスでの移動を前提にしており、高速バスを使った旅行では物足りなさ、もどかしさが残る(「商品の限界」)。

とはいえ、前回まで見てきたように、旅行会社が企画実施する総花的な旅行商品(マスツーリズム)は、長い目ではシュリンクしていく。旅行者のニーズは多様化し旅行形態は個人化が進むのだ。その流れは、次が高速バスの出番であることを、理屈では、明確に示している。

我々はいま、先に挙げた「認知・販路」と「商品」という、二つの限界を乗り越えることを求められている。しかしそれを乗り越えられた先には、マスツーリズムの退潮により縮小を余儀なくされる貸切バスマーケットの受け皿どころか、若者のクルマ離れや高齢化進展により増加する「自家用車を使わない旅行客」、さらには現時点でも急増しているFITといった新しい市場が待っているのだ。難しいことではない。30年前、共同運行クローズドドアという新しい運行形態を得て、地方部において「都会への足」として高速バスを定着させた「第二フェーズ」の大先輩たちのように、そしてここ数年、インターネットを最大限に活用して大都市間夜行路線を急成長させた、私自身も含めた「第三フェーズ」の担い手たちのように、もう一度、次なる市場と出会うために、試行錯誤を続けるだけのことである。

次回は、まず「商品の限界」から順に、我々の前に立ちはだかる壁についてもう少し詳しく見てみたい。





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Last updated  2014.01.27 16:25:54
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Re:「第三の市場」の輪郭線(その5)(01/27)  
551planning さん
御無沙汰しております。

なお、苗場WSSは平日午後ということもあってか7人乗車、うち3人が冬季応援スタッフの一時帰宅?利用というなるほどな感じでした。 (2014.01.31 07:14:44)

Re[1]:「第三の市場」の輪郭線(その5)(01/27)  
551planningさん、いろいろ(?)お疲れ様でした。

ご指摘の件は議論を深める起点として様々な要素を秘めている話でして。例えば苗場線の場合、苗場という明確なデスティネーションがあり、スキーというこれまた明確な旅行目的(スタッフの移動も含む)がある以上、関越TNと三国峠両方の選択肢を確保し冗長性を上げる方が優先かと思います(営業エリア論はこの際置いておくとしても、ですね)。一方で10往復を超えるような高頻度運行路線で、3~4割以上くらいを観光客が占めているような場合、あえて運行ルートを多様化(●●スカイラインといった観光道路を経由。観光施設などでも停車。など)するなど、一部の便に限定して「色気」のある商品作りを進めることが可能になります。二次交通との連携も進めやすいですし。

まずはどこかの路線でテスト的にチャレンジしたいんですがね。 (2014.01.31 12:30:50)

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京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
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