成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2015.05.13
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引き続きインバウンド(訪日外国人)は急増を続けており、新聞やテレビでその話題が続く。インバウンド急増は、ついこの間まで、経済ニュースの一つとして取り上げられていたが、最近では「訪日ツアーに密着。日本のおもてなしを絶賛」とか「外国人急増で地元困惑」とかいった切り口で、主に専業主婦が見るような情報番組までインバウンドの話題だ。

総数の急増のみならず、その中で観光客の比率が増えさらに団体ツアーから個人旅行へのシフトが起こるので、FITの数は急増どころか特急増である。バス業界にとって「インバウンド」は、一握りのインバウンド専門の小規模事業者だけのものでは既になく、高速バス、定期観光バス、そして路線バスを運行する乗合バス事業者のものにもなりつつある。そしてもちろん、観光客は訪日外国人だけではない。邦人客でも、旅行形態の個人シフトが進む。

先日、西日本出張のついでに広島へ足を延ばした。中国JRバスが運行する観光ループバス「めいぷるーぷ」の路線図を見ながら適当に目星を付け「お好み村前」停留所を見に行った。一目見て、ああこれは停留所設置(の各種調整)に苦労しただろうなあ、という立地。停留所標柱は「お好み村」のビル敷地内に据え置き。なお「お好み村」は、当初は、路上に並んでいた屋台を収容した地元客向けの飲み屋ビルだったが、今では観光客にも人気の施設。平日の午後ではあったが、「お好み村」に入居する各お好み焼き屋、居酒屋向けに納品作業中の酒屋さんのトラックの陰(正直なところ、観光客を対象としたビルでなければ、ここに停留所を新設することは困難だっただろう)に、FITを含む観光客が続々と集まってくる。

同社が広島市内で観光ループバスを運行…とニュースで聞いたときは、役所とのお付き合いで嫌々始めるのかなあくらいのことを感じたものだが、なかなかどうして、驚きの人気。同市内には路線バスと路面電車が稠密な路線網を高頻度で運行しているが、逆に言えばその分わかりづらい。反面、観光客が立ち寄りそうなスポットに焦点を当てたループバスは、運行頻度こそ約30分間隔と不便なようだが、遠来の観光客も安心して利用できるのだろう。

同社の観光客向け施策といえばこの「めいぷるーぷ」とオープントップバス「めいぷるスカイ」が目立つが、忘れてならないのは 手荷物託送サービス 。高速バスや新幹線で到着した観光客が手荷物を広島駅内の同社窓口に預けておけば、観光を楽しんでいる間にホテルまで運んでおいてくれる、というもの。テーマパーク周辺などでは定着済みのサービスだが、都市単位で、またバス事業者が運営するというのは珍しい。公共交通を使った旅行の弱点の一つが手荷物の件なので正に理にかなっている。

このサービスの課題は、ずばり認知だ。そういうサービスがあること自体、普通は思いつかない。ちなみに託送サービスの普及には国土交通省(物流)と観光庁が熱心で、「手ぶら観光」の全国共通ロゴマークと検索サイトを構築するそう。もちろん多言語で。ただ検索サイトというのは典型的な「プル型」施策である。旅行を計画する段階で、「託送サービスがあるだろう」と思いつく人には有効だが、「こんなサービスもありますよ。だから【この街(例えば広島)に】【(パッケージツアーじゃなくて)個人旅行で】【(クルマじゃなくて)公共交通で】旅行に来てくださいね」と呼びかける「プッシュ型」の施策とはなり得ない。

同様の課題は、最近充実してきた「着地型コンテンツ」普及の前にも立ちはだかる。例えば一般社団法人ジャパン・オンパクが各地で推進する「温泉泊覧会オンパク」。 城崎温泉のオンパク を例に取れば、「温泉寺副住職に学ぶ古式入湯作法」「僕の畑で『獲る』『作る』『食べる』の3時間」「心と体をセルフケア 温泉ピラティス」など、名湯城崎や自然あふれる但馬地方でないと体験できない魅力的な企画が並ぶ。ただ、テーマ性が大きくターゲットが絞られる分、これらの企画は催行日限定だ。毎日安定しての集客は困難だし、案内・講師役も普段は「副住職」「農家(この講師の方の場合、自称「サイバイマン」らしいけど)」だからだ。そのためこういった着地型コンテンツは、従来の旅行会社のオペレーションや発地型のフルパッケージでは商品にはなかなかなりづらかった。



それでも、高速バスと、託送サービス、「めいぷるーぷ」のような二次交通、さらに着地型コンテンツ、個性化が進むお宿……こういう各要素を(目を皿のようにして探せばさえ)ウェブ上で組み上げていくことができるようになりつつあるのは一つの進歩。ここが踏ん張りどころだ。それを「当たり前のこと」にまで昇華させたい。なんとか、いつかは飽きられてしまいかねないお仕着せのフルパッケージから、個人の興味関心を満たす個人旅行へ、それをクルマ(レンタカーを含む)以外の手段でも実現できる環境を作り上げることができれば、我が国の観光産業の未来も見えるし、高速バス業界の次の成長も見えてくる。

そのためには、バス事業者も、旅行会社も、お宿など地元の観光産業も、皆が少しずつ変わらないといけない。まずは、リスクを背負って観光ループバスや託送サービスに参入した中国JRバスには脱帽。翌朝、東に向けて帰る高速バスの車窓には、さんさんと輝く陽を受けて光がこぼれんばかりに輝く瀬戸内の海が、ずいぶんと遠くに、けれどきらりと輝いた。





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Last updated  2015.05.13 19:10:40
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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