成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2015.08.03
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カテゴリ: 高速路線バス
監修を担当しているバス乗務員求人サイト『バスドライバーnavi(どらなび)』による第二回「バス営業所見学ツアー」(7月11日開催)の様子は、先月末発売の 『バスマガジンvol.72』 当日のレポート がアップされているのでご確認いただきたい。私が「クライマックス」としたシーン(「ORION BUS」の車両がトランセ弦巻営業所に入線する瞬間)の写真もばっちり掲載。なお本当に偶然なのだが、当日使われたO.T.Bの車両2台のうち1台の車番がなんと「109」であった。弦巻.jpg

さて、最近多くの方(メディアの記者さんや講演のお客様など主にバス業界以外の方)から意見を求められるのが、訪日外国人(インバウンド)急増がバス業界に与える影響、について。いくつか新聞記事が続いた様に、たしかに車両メーカーでは貸切バスの受注が急増し、今発注しても納車は来年夏、というのは事実の様子。彼らとしても製造ラインを増設は投資額が大きいし、部品メーカーなど広い裾野にも影響する話なので増産は簡単ではなさそう。

この貸切バス受注ラッシュは、たしかにインバウンド急増も一つの要素なのだが、より大きいのは貸切バスの新運賃制度による単価アップの方だ。ほとんどの貸切バス事業者が、車両稼働率は横ばいまたは低下ながら日車単価上昇により大幅増益、というところだろう。インバウンド分野の事業者に限っては稼働率も上昇しており、これまで車両購入といえば中古バスだった彼らが、キャッシュを積んで新車を発注していくとのこと。契約先が日本の旅行業法に縛られない分、貸切バス新運賃制度の蟻の一穴になると危惧されたインバウンド分野が、需要急増により意外にも新制度による単価アップを享受しているという奇跡。

ただ、それでも、いわゆる(典型的な)インバウンド団体の仕事を受けられる貸切バス事業者は限られていて、ランドオペレーター(旅行会社に代わり現地で宿泊や運輸の手配を行なう会社)が困っている様子は伝わってくる。旅行ビジネスの文化の違いというか商習慣の違いというか、台湾や中国からのインバウンドツアーは、参加者人数やツアー行程など細かい部分が直前まで伝わってこないことが多い。貸切バスの場合、運賃計算はもちろん、乗務員の運転時間、拘束時間の上限が法令で極めて厳格に決められているので、行程を事前にもらえないことには、売上見込みが立たないばかりか受注可否さえ判断できない。その結果、コンプライアンス意識の高い事業者(おおむね規模の大きい事業者)はその種の引き合いは断るので、単価が上がってもなおインバウンド用のバスが足りない状態は続く。

ランドオペレーターや発地の旅行会社の側も商売だから、この状況が続けば彼らも日本の業界の事情に配慮を進めてくれるだろう。ツアーの組み方が既に変わってきたという話もある。発注側受注側双方の工夫と努力で、インバウンド用の貸切バス不足という状況を乗り越えて行っていただきたい。また、新車を買うこと自体は、安全性も顧客満足も上昇し故障減少や燃費改善によるコスト減も含め歓迎すべきことだが、いま投資すべきはハード面だけなのかという点は、中小規模の貸切バス事業者の経営者こそよく考えてもらいたい。企業としての組織のあり方の強化、あるいは乗務員のスキルや従業員満足度の向上など取り組むべき課題は幅広い。バランスよく学びながら階段を一つずつ登っていくことを期待している(蛇足ながら、バスに限らず、視野を広げて何がポイントかを見つけ出しバランスを取りながらリソースを投下していく、ということが苦手な中小企業のオーナー経営者が多い気がする。というかそれって意外と努力して学べるものでもないのかな。)

一方、日本人の海外旅行が、「ノーキョー・ツアー」による総花的な「ロンドン、パリ、ローマ8日間の旅」から、1974年の『地球の歩き方』創刊以降、個人旅行へと一気に姿を変えたように、アジアからの訪日観光客も、団体がゼロになるとは言わないが、個人旅行(FIT)へとバラケていくことは間違いないと考えている。初めての訪日に際しては、KIX~京都~富士山~秋葉原~成田と「ゴールデンルート」を貸切バスを使ったツアーで駆け抜けた人たちも、二度目三度目の日本では、自分なりの「もう一歩深い日本」を探すことになる。

欧米豪などからの観光客は元々ほとんどがFITだし、最近個人観光客のビザ(査証)が免除されたタイやマレーシアからのFITは急増している。ボリュームが大きい中国本土については、個人観光ビザの発給条件緩和の進捗(政治的な関係とリンクするだろう)にもよるが、長い目で見ればFIT化が進むことになるだろう。その際、彼らが選ぶデスティネーションが、より「深い」日本であればあるほど、鉄道ではなく高速バスの出番となる。



あるいは、これまで日本では存在感が小さかった、FIT向けのエクスカーション商品も成長するかも知れない(もっとも、それらを主催するのが旅行会社であれば、儲かるのはたぶん貸切バス事業者となって今と変わらないし、高速バスを含む乗合事業者が自ら乗合形式で運行しようとすれば、都心や空港での「停留所の権利のキャップ」という別の問題と直面する)。いずれにしても、インバウンドの増加やそのFIT化という流れ自体は高速バス業界にとって僥倖ではあるが、待っていてつかめるほど甘くもない。

個人旅行化が進展するのは何もインバウンドだけではない。邦人客についても旅行形態の「分化」と「深化」が進む。それらを高速バス業界がうまく取り込むことができるのか、それとも鉄道など他の輸送モードに(あるいは他国に、または旅行以外の他の余暇に)吸い上げられ我々の前には何も残らないのか。いつも言う通り、「移動に特化しすぎた高速バス」と、「効率を追求するあまりお仕着せが強すぎるバスツアー」との間に大きな市場が眠っている。そしてその鉱脈を掘り当てるには、認知→予約の導線から商品自体のあり方まで、真摯に、市場の声なき声に耳を澄ませる、それ以外の早道はなさそうだ。





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Last updated  2015.08.03 13:55:39 コメント(1) | コメントを書く


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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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