成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2015.09.27
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カテゴリ: 高速路線バス
珍しく三部作の「その3」( 「その1」 、 「その2」 の続きです)。

前回書いたように、全国の高速バスを一元的に検索、予約できるサイトは「バス屋の夢」だ。だが私は、考えた末、それ「だけ」では我が国の高速バス市場を拡大させることは無理、という結論に達した。一愛好家としてバスを横目に見ながらホテル業で働いていた頃のことだ。

一つには、高速バス事業者どうしの競争が新しいサービスを生み出すように、「販路」についても複数の主体が競争し続けることの意義に気付いたからだ。楽天などの予約サイトは、繁忙日などの人気の高い便について少しでも多く事業者から在庫を提供してもらえるよう営業を重ね、合わせて集客のための施策(ウェブ上の広告など)と、それにより集まった利用者を満足させる努力(UI改善など)を突き詰め続ける必要がある。「自動販売機」になってしまってはだめで、日々、考え抜かねばならない。その一番の原動力は競争(必ずしも経済的な損得だけでなく、ライバルよりも先に行きたいという心理的な要素も大きい)だ。

もう一つの理由は、適正な在庫配分(幅運賃導入後は適正な運賃設定も)を、事業者側で主体的に行なうことが重要だと考えたからである。「需要が見込める区間を運行していればさえ、乗客は向こうから来てくれる」という意識を改め、「その需要は潜在的な需要に過ぎず、それを顕在化させるのは自分たち」と自ら理解してもらうことが第一歩だと考えたのだ。さらに付け加えれば、どうしてもパワーを持ち過ぎるきらいのある販売側に対し事業者が対等な関係であるためには、在庫と運賃を手放してはいけないのだ。

最近、FIT(訪日「個人」旅行者)対策でこの点が再び重要な論点になりつつある。我が国の高速バスの多言語ウェブ予約は、自社サイトでは京王の 「Highway-Buses.jp」 が、また総合予約サイトでは WILLERの多言語サイト (同社のサイトは、日本語外国語ともに、自社路線に加え多くの「既存組」各社の高速バスを取扱う。その意味で、同社の自社サイトであるとともに、楽天などと肩を並べる総合予約サイトでもある。なお外国語版はヘッダの京王や小田急、名鉄の車両画像が美しい)が、それぞれ先行した。それを、工房による 「Japan Bus Online」 「Japan Bus Lines」 が追うが、両者とも、自社サイトなのか総合予約サイトなのか立ち位置が判然としない。

私は、常々書いているように、FITは次の大きな市場だと考えているから、「既存組」各社にはこれらのサイトの活用を勧めている。ただし、私がお勧めしているのは、あくまでも「活用」。こちらが主体的に活用するのである、これらのサイトで取扱いを始めたから、即ち、「インバウンドに積極的」とか「FITの集客はお任せできる」ということでは決してない。

考えてみてほしい。確かに、日本全国の高速バスを検索できるサイトは、外国人旅行者にとっては必要だろう。英語や母国語の検索エンジン(googleの各国語版)で、例えば「日本 高速バス」(←もちろん英語または母国語で)と検索した際に上位表示されるサイトを訪れると、発着地を指定するだけで希望の高速バスが表示されるというのは便利だろう。

しかし、私たちが海外旅行に行って高速バスを使おうと考えた際、そんな検索をするだろうか? もちろん、高速バスの愛好家が台湾や韓国の高速バス事情を見に行きたい、とか、バックパックを背負いバスを乗り継いで北米の田舎町を旅行したいんだとか、特定の旅行者はそのような検索をするだろう。だが、多くの旅行者が現地で高速バスを使うのは、鉄道よりバスの方が便利なデスティネーションを訪問する際が中心だろう。ナイアガラの滝やモン・サンミシェルへの足としてバスのルートや時刻を知りたい人が「USA バス」とか「フランス 高速バス」などと検索するだろうか。当然「ナイアガラ バス」と検索するはずだ。

日本に当てはめれば「高山 バス」「高千穂 アクセス」(←くどいけど英語または母国語)。そのような際、検索結果に上位表示されるのは、濃飛バスや宮崎交通の公式サイトのはずだ。ただし、各社の公式サイト(ホームページ)が多言語対応できていれば、という前提付きだが。そして、それさえ見てもらえれば、そのまま「Highway-busses.jp」など自社サイトの多言語ページに誘導すれば余計な送客手数料は不要になる(にもかかわらず、「Japan Bus Online」がそのような動線を準備していないのは残念だが)。さらに、公式サイトを見てもらえれば、予約制の高速バスのみならず、非予約制の空港連絡バスや路線バスなどの情報提供することができるのだ。

繰り返すが、私は決して、全国の高速バスを一元的に予約できるサイトが不要だと言っているのではない。日本をテーマにした外国語ガイドブックの後ろの方の「日本国内での移動」解説ページで「このサイトを見れば高速バスが一目瞭然」と紹介されることは重要だ。さすがに日本全国を扱うガイドブックで、個別の事業者のサイトを片っ端から表記するわけにいかないからだ。ウェブ上で広告を積極的に展開しやすいのも、この種の予約サイトだ。

つまり、利用客の行動に合わせ、「定置網を仕掛けて待つ」(自社サイト)と、「積極的に投網を打つ」(総合予約サイト)の両方の動線を用意する必要があるのだ。もちろん、定置網の位置や仕掛けは、他でもない事業者自身が試行錯誤し最適解を見つけ出す必要があるし、投網に不当なコストをかけすぎることのないよう、在庫と運賃で彼らのパワーを制御する必要がある。「インバウンド」「FIT」といったキーワードで思考を停止してはならない。

特別なことを書いているつもりはない。外国人客にも日本人客にも、その心理や行動と真摯に向かい合い、その希望に添う答えを出し続けなければ、私たちの前に広がる大きなチャンスを現実のものとして手に入れることができないのだという、ただそれだけの話である。





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Last updated  2015.09.27 18:23:08コメント(0) | コメントを書く


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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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