思想悩労。

Dec 15, 2004
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カテゴリ: 真面目思想。





「私には、幸せになる資格は無いの。」

そう言った彼女の言葉を

オレが忘れる事は無いだろう。















彼女は、正直言ってメチャクチャ美人て言うわけでもない。

ただ、穏やかに笑う笑顔は沢山の人を惹き付けたし

何より、彼女の当たり前の様に滲み出る優しさは

誰の心にも温かく流れ込んでくるようだった。





そんな彼女だったから、惚れて仕舞う男が多かったのも

容易に頷ける事だったと思う。





彼女は、でも、戸惑った。

元々、積極的な女性では無かったし、

自分の容姿や性格には余り自身が無かったらしい。

「何で私に・・・?」と、よく漏らしていた。

それがまた、彼女らしいと言えば彼女らしかったけれど。

そんな彼女の想いとは裏腹に、彼女に惹かれる男性は

後を絶たなかった。





その数とは反比例して、彼女は男性を避けているように見えた。

が、人は不思議なもので、離れていけばいく程近づきたくなるものである。

より一層、多くの男性が彼女に言い寄ってきた。

彼女は、やがて疲れてしまっていた。





そんな折、彼女は一人の男性と出会う。

その男もまた、優しい男だった。

人に気を遣うのが癖の様になっていて

疲れてしまった彼女を当たり前の様に労わった。

彼女からすれば、それは、

他の男性には無かったことである。

食事の誘いも受けた。

高価なプレゼントも貰った。

けれども

とてつもなく高い料理をご馳走になったり、

自分では如何しても買うことの出来ないバッグやアクセサリーを貰ったり、

そんな事よりも

彼女はその男と一緒に居るだけ、話すだけの時間を

何より、大切に思った。





二人がお互いを想う迄に、時間は大してかからなかった。





傍から見れば

とても、幸せな二人に見えるだろう。

実際、二人は幸せだった。















不幸だった事をあげるとすれば

その男に家庭があった事と、

二人が余りにお互いを強く愛してしまったこと、である。















その男は、正直、家庭よりも

彼女に安らぎを感じてしまった。

元々は優しく、人を気遣う、真面目な男である。

その苦悩は、他人には計り知れない物だったと思う。

しかし、そんな男が彼女と一緒に居る事を選んでしまうほど

その男は彼女を愛してしまった。

しかし、彼女はその男の苦悩を知らない。

男は、相手を気遣う余り、事実を伝えられなかった。

今更、言ってしまえば、彼女を傷つけてしまう。

男にはそれが耐え切れなかった。











そして、男は、決断をする。

家庭を、捨てる決断を。

離婚という道を選んだ。

彼女と居るために。





しかし。





彼女はその事実を知ってしまう。

何故なら、離婚が決まったその夜

男の妻は、男を刺し、自らもその命を絶とうとしたからだ。

妻もまた、男を愛し過ぎたが故なのか

それとも真実を知った妻の報復なのか

それは分からない。

幸いにも、二人とも一命を取り留めたが、

全てを知った彼女は二度と男の前に姿を現すことは無かった。





それから、彼女は

以前より、男性を避けた。

元々、明るい性格では無かったが

更に輪をかけて伏せた目をして生きるようになる。

それでも、悲しみを浮かべた彼女の笑顔には

沢山の男性が惹きつけられ、

その度彼女は同じ台詞を口にするようになる。










「私には、幸せになる資格は無いの。」と。










オレには「幸せになる資格」と言うものが

あるのか分からない。

大体、「幸せ」って何なんだ?

金持ちになることか?

成功することか?

いや、きっと違う。

今の自分の状況を「幸せ」と思えることが「幸せ」なんだ。

それは他人が決めることじゃねぇ。

例え、世界中の全ての人がそいつを指差して

『お前は不幸だ』と言ったって、

自分が「幸せ」と思えるヤツが「幸せ」なんだろう。






だとしたら。






「幸せになる資格」がたとえあるとしたら、

その資格は「幸せになりたい」と思うヤツにしか無いんだろう。

そういった意味では彼女に「幸せになる資格」は無い。

何故なら、彼女は自分で幸せになる事を拒んでいる。

誰にも、幸せになる事を止められた訳でもないのに。





きっと彼女は今も

「幸せ」を拒んでいる。

何かを償うために。

償う?

何を?

彼女は何も罪を犯してはいない。

彼女が罪を犯したと言うのなら、人を愛することが罪になる。

だから、彼女は人を愛することは出来ないし、

愛される事を拒み続ける。





誰かを愛し、愛されることだけが幸せではない。

けれども、

それが恐らく一番の幸せだと、オレは思うんだよ。






オレは「幸せ」と言う言葉を聞く度に

彼女の言葉を思い出してしまうんだ。

悲しそうな目と一緒に。

そして願うんだ。

彼女が「幸せになりたい」と思う日が来る事を。

気付いて欲しいんだ。

「幸せになる資格」は誰でも手に入れられる。

その人が「幸せになりたい」と思ったその時に。















「私には、幸せになる資格は無いの。」

そう言った彼女の言葉を

オレが忘れる事は無いだろう。


















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Last updated  Dec 16, 2004 11:14:17 PM
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