ナがために鐘はなる・なんの役にもたたないけれど

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2019年06月25日
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長らく読みさしだった本も


『暗幕のゲルニカ』原田マハ


【中古】単行本(小説・エッセイ) ≪日本文学≫ 暗幕のゲルニカ / 原田マハ【中古】afb

人気の作家さんのようなので、
ちょっと読んでみた。

ピカソがゲルニカを描いたパリのシーンは
とっても印象深く、また恋人のドラの心情は、なるほどなーと思った。
白い鳩の絵の写真のところも、それ自身はおもしろいアイデアかなと思った。

でも、日本人キュレーターのヨーコの話のところは、
正直、ちょっととってつけた感というか、

セリフもあまり好みじゃない。
行動や気持ち、状況をぱっと説明してるだけなので、深みはない気がするし、
別に手に汗握るってこともないので微妙。

「ゲルニカ」を移動させるのは色々難しい事情があるんだ、
バスクの運動の動きもあるんだ、
ニューヨークの美術館界隈は色んな人が絡んでるんだ、
ということはわかった。
それと、ピカソの話だけの方が良かったんじゃないのかなー、
妙にドラマティックな話題を盛り込んだ小説風なことしなくても。
なんて😉

この作家の本の紹介文が、「感動のなんとかー」が多いのも、

そんなに感動したいんだ、したいと思われてるんだーー。



『サラバ』上・中・下 西加奈子


【中古】 サラバ!(下) /西加奈子(著者) 【中古】afb

こちらは堪能した。
ま、相性というか、好みなんでしょう😉

この長い物語は、単に筋を追うというだけでなく、

それぞれの家族の問題や事情、体験、社会の出来事、

変わってしまったとか、たとえ違和感があっても、
誰にも忘れ去られてしまったとしても、なくなってしまったわけではなく、
とはいえ、囚われて動けなくなってしまうものでもなく、

「大きな、常にある白い化け物」とともに、
この先も生きていけるんだなという感慨をもたらしてくれたと思う。


そうは言っても、なかなか厳しい、つらい体験というのもあるし、
そういう場合どうなるのかは、私はなんとも言えないんだけど、
こうやって長い話を読んでいるうちに、何かパワーのようなものを
得られる気がする。

上巻では、母親の性格が子どもを振り回していて、
母親はそんなつもりはないと思っているけど、
結局母親自身を守ることしか考えていないと
子どもが思ってしまうことは、
やはり子どもにとって辛いことで、
かつ、実はよくあることなのかなと思った。


「僕」、弟は、
問題の多い家庭の中で、自分だけがマトモで、世間の人にも受け入れられやすく
うまくやっていけると思っていた。
強烈なお姉さんとお母さんのいる家庭で、様子を見ながら振る舞っていたから、
自分が本当はどうしたいとか、どう思っているとかを外にも出さないし、
自分自身にもはっきりさせてこなかった。

その場をうまくかわして、しのいでいったつもりだけど、
その、しのいでる自分に対する恥みたいなものを
実はずーっと感じてたんだなと思えるエピソードの連続。
ほんと、よく細かく捉えてるなと思う。
太宰治の小説みたいなことを言っているなと思っていたら、
太宰の話も、高校時代の親友とのエピソードの中で出てくる。

だけど、そんな「僕」・歩が、伸び伸び屈託なく過ごすことができたのが
父親の駐在先のエジプトで生活していたころ。
そこで友人となったヤコブと、
「サラバ」という言葉ひとつで深く分かりあえた、
共有しえたと思った瞬間の空気感、その喜びは、
とても共感できる、わかる!と思った。


中巻では、
お母さんの妹、夏枝おばさんのことについて、
「おばさんは、誰かに知らしめるためにそれらを吸収していたわけではなかった。
つまり自分のアイデンティを形成するために芸術を利用することは、決してしなかった。」

「サトラコヲモンサマと「彼ら」共通点がひとつだけあるとすれば
「何かを信じる」ことだった。」

「元々サトラコヲモンサマは、ご神体がなかった。中略。
それすらもはばかられる人は、心の中で祈った。」

下巻
矢田のおばちゃんの、「すくいぬし」の辞書のページの話は
突拍子もないエピソードのようにも思えるが、
私は好きだった。終戦直後の少女だったおばちゃんと、
刺青の知らない兄さんとの間の一瞬のやりとり、
そこに恋があったというところ、それを信じるというところ
私はわかるなと思う。
それが力になり得るということ、お母さんにも引き継がれるというのも
わかる。

そして、最後、
ミラン・クンデラの『笑いと忘却の書』を読んで、僕が線を引いたという箇所、

「そう、そうなんだ! やっとわたしにはわかった!
思い出したいと望む者は同じところにとどまって、思い出がひとりでに自分の
ところまでやってくるのを待っていてはならないんだ!
思い出は広大な世界のなかに散らばっているので、それをみつけ、
隠れ家の外に出してやるために、旅をしなければならないんだ!」

という箇所もいいなと思った。
この本は全然知らないんだけれども。


そして、そういうこととは別に、
「はげる」ということに僕がものすごく苦しんでところが、
なかなか新鮮だった。





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Last updated  2019年06月25日 07時31分25秒
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