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2020年02月05日
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カテゴリ: 恥産致笑文学

2001年に書いた はぢ拾遺物語 回顧編
寒い時期なので、お風呂のネタをどうぞ

 謎の迷湯

 肌寒くなってくると、お風呂に入浴剤を入れて、温泉気分というのが、我が家での定番の手軽な幸せである。居ながらにして自宅で楽しむ、全国の名湯巡りというわけ。
 入浴剤は、ちょっとした景品や粗品として頂くことも多く、気がつくと何種類もの温泉の素がたまっている。しかし、メーカーによっては、作為的な匂いのすごさに閉口させられたりして、結局、ご愛用の湯は某メーカーの「登別の湯」とか「別府の湯」とかの数種類に絞られ、それらが代わる代わる登場し、それ以外は使われることなく永久在庫、もしくは、チャリティーバザーの供出品となるのが常である。

 そんなある日の事であった。いつものように浴槽に湯をはり、まず、一番風呂を父に勧めた。そしてコレまたいつものように、父はホンの2.3分、烏の行水で、上がってきた。ここまではいつもと別段変わりは無かった。
 ・・・しかし、ソノ後の行動がいつもと違った。いつもならお風呂あがり寝室に直行する父が、こちらにやってきた。

 お風呂から上がった肌のほわほわした湯気もそのままに、父はにやにやと笑いながら私に尋ねた。
「今日は何の湯だったでしょうか?」
「ええっ、今日は何も入れてないよぉ。パパがいれたの?」
父は明らかに嬉しそうである。しかし、私は温泉の元を入れた記憶はない。また、もし父が入れて入ったとしたら、湯上がりなのだから、その温泉の匂いが立ち上っているはずであった。・・・しかし、なんの匂いもしていないのである。
「入ってました」父は、笑いながら言い張る。
 んんん? 
 私は匂いには鈍感な方では無い。絶対、どの温泉の素も入ってなかったと断言できる。だから自信をもって言った。
「入れてないってば!」
 父は、さっきより一層嬉しそうな顔になっている。んんん? 

「入ってました!」
「入ってないって!!」
「入ってました!」
「嘘! 入ってない!」
「入ってました! 何が入ってたでしょうか?」
「もう、いったい何がはいってたのよ?」
「雑巾」
「※♯▼□ァ£◎!? ええぇぇぇぇ?!」

  私は、お風呂場に急行した。そこで見たのは、ふたを開けたままの浴槽と、そのヘリにぺしょっとかけてある、びしょびしょの雑巾! まさか湯船にコレが???
 振り返ると、父が立っていた。
「雑巾風呂でした」なぜか満足げににっこりとほほえみながら・・・。
 なんで? なんでや?
 私は雑巾を湯船に入れた覚えは無かった。・・・なぜ?
 そういえば、今朝、雑巾を洗った時に、確かに一枚足りなかった。しかし、なぜ???・・・と、つらつら考えていくうちに 思い当たった。私は、物干し竿をふいた雑巾を、たしか、お風呂のふたの近くに置いたような・・・。
 そう、お湯を入れたときにはなにも入っていなかったものの、どうも、あの雑巾が、ふたの間にはさまるかどうかして、ふたをしたときにでも浴槽の湯の中に入ってしまったらしい。

 がああん。私は、父を雑巾の入った風呂に入れてしまった。
「パパ、ごめんね」「ふふふ、オマエらも入れよぉ」
 父は上機嫌で勝ち誇ったように言った。

  かくして、父を雑巾風呂に入れてしまった私と、その他2名の我が家の女性陣は、その夜、仕方なく、(まさか、家長を雑巾風呂に入れておいて、自分らだけ新しいきれいなお湯に替えてて、という訳にもいかず・・・)雑巾風呂に入ったのであった。

 それにしても、雑巾風呂に入れられながら、あの父の反応。理解に苦しむ。・・・普通怒らないか? それを怒るどころか、嬉しそうに・・・。なぜ? 
 自分が、雑巾風呂に入れられたことより、私たちを雑巾風呂に入れたことが、そんなに嬉しかったのだろうか・・・。我が親ながら、父はよくわからない。


***2020年の私より
 定年退職してすぐに 亡くなってしまった父。これからは母と夫婦で毎年2回旅行に行くのだと楽しみにしていたのに・・・2回しか行けなかった。今は、天国で母と楽しく過ごしていることだろう。
 お坊ちゃん育ちでありながら、壮絶な苦労もしていた父。一人っ子で子供との接し方が分からなかったといっていた父。絶対に他人に媚びを売ったりへつらったりしなかった父。曲がったことやずるが嫌いだった父。厳格で社会人になっても私に門限を設けていた父。そのくせ私がお酒をいくら飲んでも怒らなかった・・・というか笑って一緒に飲んでいた父。私の手料理に「また作ってね」ととあるCМのようにかわいく口調で次をねだった父。(父の方がCМより先)。思い出すとネタの宝庫だ。また書こう。 




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最終更新日  2020年02月05日 00時00分10秒
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