◆長屋村       あらっ!ご近所さん♪

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September 21, 2010
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カテゴリ: ◆NovelでTea☆Time
指切り



代わって看護師が二人に声を掛けた。
「それではこちらへ」
看護師に促されて、救急診察室の外へ出た。
「大村さんは、六〇八号室になります。六階の病棟になりますので、そちらでお待ち下さい」
「分かりました」
「あなた・・・・・」
「卒業式に。こんな事になるなんて」
「亜紀が心臓病だなんて・・・・」

「大丈夫だ。きっと、大丈夫だ」 
浩二は芳子を元気づけて、六階の亜紀が入る病室へ向かった。

六つあるベットのうちの、入り口側の一つが空いていた。
「ここね」
「そうだな」
ベットを確認した二人は、テレビのある談話室へ移った。
「あなた・・・。心配だわね。亜紀、大丈夫かしら」
「何しろ心臓だからな。肥大の大きさによるだろう」

間もなく亜紀は、点滴をされながらベットで運ばれて来た。
「亜紀」
「亜紀」

「心配させてごめんね」
「そんな事より大丈夫なのか?」
「ええ、落ち着いてるわ。折角の卒業式だっていうのに」
「・・・・・」
「所でお父さん、先生から説明を聞いてくれたの?」

「私の病気は何?」
遅かれ早かれ、話さなければならない。
覚悟して話す浩二だった。

「心臓肥大らしい」
「心臓肥大?」
「負担のかかるような事が無ければ大丈夫だって」
「私、心臓の手術するの?」
「いや、まだ。これからの検査結果次第とは言っていたけど」
「恐いわ」
「亜紀、まだ決まった訳じゃないわ。検査の結果が良ければ大丈夫よ」
「お父さん、お母さん、就職はどうなる訳?会社へは行けるの?」
二人は返事に窮した。

そこへ看護師が、亜紀の着ていった袴羽織を持って来た。
「どちらへ置きますか?」
「私へ下さい」
「それと入院のための必要書類です。お読みになって下さい。承諾書はあとで詰め所へ届けて下されば結構ですので」
「分かりました。宜しくお願いします」
羽織袴と書類を母の芳子が受け取った。
亜紀は、じっとその羽織を恨めしそうに見続けていた。

「亜紀、詳しい検査をして頂いて、治そう」
「分かったわ」
「私、亜紀の着替えを取りに家まで行って来ます」
「そうしてくれ」
「あと、お願いしますね」
「分かった」

大村家は、この病院から車で十五分の距離にあった。
「病気一つせずに育って来たのに」
「私もここに来て、病気するとは思わなかったわ」
浩二の口が重くなった。
亜紀も天井を見つめるばかりだった。

二人の間の静けさを、戻ってきた芳子が破った。
「お待たせ」
「ご苦労だったね」
「亜紀、着替えはベットの下の衣装ケースに入れておくからね。毎日取り替えなさい。私が取りに来て洗濯してくるから」
「分かったわ」
「亜紀、ゆっくり治しましょう。身体が一番大事よ」
「そうだ、亜紀。しっかり治してから、仕事も頑張ればいいじゃないか」
「・・・・・・・」
亜紀は天井を見つめたまま、一筋の涙を流すのだった。






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Last updated  September 21, 2010 04:06:47 PM
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