☆暴走
前回の局面で、黒の選択は挟むか受けるか。左上のカケが一本利けば良いが、白は右上に両がかりして来て局面が広くなる。
ここで勝つ確率が高いのは、右上桂馬受けて、白の上辺構えに対して下辺か左辺に先行する作戦。それは分っていたが、なぜかこの時右上桂馬受けの選択は一瞬で捨てた。自分でも不思議だけれど、「ここで上辺に挟まないようなら碁を打たない方が良い」という気持ちになっていた。危険は承知で気持ちに素直に従った。
ここから思いもしないたいへんな事態になってしまう。後から思うと相当な興奮状態になっていたと思う。
この後、上辺で競り合いが起きる。途中左右の白を断固遮るか中央を厚く打つかの選択があったが、遮りは危険と判断し一旦妥協した。その結果上辺を渡られてやや甘い変化になった。ただ、そこで淡々と打てば大したことではなかったのだが、当初の積極気分が尾を引いていて、無理気味に中央に切り結んだ白を攻めてしまった。
完全に暴走。無理手が数手連続した。特に内側から駄目を詰めた手は、検討で改めて見て自分でも信じられない暴走だった。劫の味を消したのだが、白から解消するには2手かかる。身駄目を詰めて自らダンゴ石となってひどいことになった。
仕方なく補強の手を打ったのだが、これもミス。白からコスミつけて切るという単純な手をうっかりした。すぐにやってこられて目の前が真っ暗になった。大石が取られたわけでもないのに、40手ほどでほとんど碁にされてしまった。置碁でここまでひどいのは少年時代以来かも知れない。なんでこうなったんだろう。
このまま生殺しにされるより一気に攻め合いに出て玉砕しようかとも思ったが公開対局なので洒落にならない。とにかく一旦辛抱してチャンスを待つことにした。
☆打開
中央に浮いた弱石をただ逃げてはジリ貧なので、思い切って捨て石にして外勢を張る作戦に出た。名人は終始一手一手に時間を使って慎重に着手を選択していたが、さすがにこの辺りではわずかに楽観的な気分があったかも知れない。浮石を包囲した白の地に切りが入り味が悪くなった。ここではなぜか手が良く見えて、結局最高の形で締め付けが利いた。
仕切直しで白は模様の中に飛びこんで来る。もう黒も一歩も緩められない。白の弱い石を攻めて大激戦となった。秒読みに中で、上下の白石に絡んだ以下の局面がハイライトシーン。白から1の切りがシノギの絶妙手。名人の魔術が飛び出した。
ハイライト

白1の切りに対して黒から単カカエ・上の割りツギ・上の単ツギの3通りが考えられるが、読みきれず最善手を選べなかった。実戦は割りツイだが単カカエがベストだったようだ。
結局上の白を凌がれて、左下黒を蹂躙される展開となり攻めが不発に終わった。戦い終わってあまり打つところもなく、さらさらと寄せて5目負け。攻めが不発の大損で5目負けというのは、山城先生もびっくりしていたが、いかに3子の効力が大きいか実感した。
会場に戻り大盤で検討。序盤のあまりの暴走ぶりを指摘されて恥ずかしくなった。ただ中盤からの攻防は解説室でも大いに盛り上がったようで、辛うじて見せ場は作れたようだ。
☆再チャレンジ
引き続いて行われた懇親会では、名人は写真攻めサイン攻めにすべて応えていた。すごいのは、色紙のサイン。丸をたくさん書き出したので何なのか?と思ったら、それをつなぐように線が書かれてあっという間に詰碁の完成。しかも一人一人違う詰碁の色紙が渡される。神業を見せる名人に圧倒され、その魅力的な人柄にすっかりファンになってしまった。
序盤暴走してしまったのは大反省で、負けてしまったのは強烈に痛いけれど、これはこれで良かったかも知れない。名人の強さを十分に体感でき妙手も見られた。そして中盤以降あっさり土俵を割らずに十分に戦えたのは自信になった。
でも負けたままでは終われない。今年も権利を得て、何としてももう一度チャレンジしたい。
シチョウで取ってしまい困った話 Aug 22, 2018
知って損はない!プロ常用?ハメ手の話。 Jan 13, 2018 コメント(2)
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