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畑正憲氏と言えば、世間一般では動物と触れ合う時の笑顔がトレードマークと思うが、我々?には何といってもトップ雀士でもあり碁打ちでもある勝負師畑正憲になる。 いつでも動物と触れ合っている氏が、都会で勝負に明け暮れるイメージはあまりにかけ離れていて、実際どういう生活をしているのか不思議だった。そこの所は調べてもよく分からない。畑氏の麻雀の技術書は、単なる技術指南でなく読み物として圧倒的に面白かった。対戦相手を観察する様子が生き生きと描かれて、エッセーのようだった。確率的研究が進んでいる中で、「畑正憲の精密麻雀」を超える名著はもう出ないかも知れない。当時、日本棋院の雑誌棋道に掲載されていたエッセーは今でも強烈な印象が残っている。毎回、畑氏が出会った個性的な碁打ちが登場する。その多くは、頻繁に付き合った人ではないはずなのに、まるで親友かと思うほど、深く観察し考察している。特に思い出に残っているのは、碁会所では圧倒的に強いのに大会に出ると全く勝てなくなる碁打ちの話。普段4子置かせている相手に大会では必ず負けてしまう。そんな、碁打ちの悲哀を飲み屋で聞くのだが、その場に同席しているように迫ってきた。この登場人物と似たような人にはその後出会った。過去何度か登場したK先生だ。それほど悔しそうにしている様子には見えなかったが、年も離れている事もあり本心に触れることはなかった。振り返ると、動物の気持ちが分かると言う畑氏にとって、人間の心を読むことも朝飯前のはずで、実は動物と勝負事は通じるものがあったのかも知れない。青春時代の憧れの畑先生のご冥福をお祈りします。
Apr 8, 2023
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2010年の新聞棋戦県大会の一局から。白は私、黒は強豪Kさん。囲碁歴を通して、間違いなく公式戦で一番数多く負けている相手。大局観が優れている上に読み合いにも強い恐ろしい相手だが、無理するタイプでないので乱戦になる事が少ない。この碁は珍しく激戦になった。実戦図1 上辺の競り合いから乱戦に突入した。 実戦図2 白1から右上を取って良しと思ったが、黒4が凄い頑張りでびっくりしたと思う。さらに16も凄い。お互いの気合がぶつかり、一歩も譲れない競り合いになった。黒20はシボリを見た手筋、白21を打たないと、シチョウで取られてしまう。 実戦図3 上辺黒を取って、中央も威張って白かなり優勢と思っていたが、今検討するとあまり差がないようだ。右上は元々白の勢力圏なのと、上辺~左上の黒地が増えている。 実戦図4 黒はさらに、中央の石も逃げ出して頑張り右辺の石が薄くなった。黒1に白2は、1の2路下の味を気にしたのと、これで十分と見た手だが甘かった。当然、白3と攻めを継続すべきだった。下辺割り込んで、シチョウが良いので下辺を荒らして逃げ切りと思った瞬間、黒の切り返しが来た。 実戦図5 以下黒7までが黒の注文で、一気に難しい碁になった。白6が悪手で、ここで7の所に打つのが柔軟な手だった。最後は左下の戦いで、時間がない中お互いにミスが出たが、白が幸運の勝利を得た。 それにしても、昔の碁を検討すると反省する事が多い。何でこんな手打ったんだろうと今から見ると不思議に思うことが多いが、それが実力なのだろう。ところでKさんの名言中の名言がある。Kさんのある対局後の検討でのこと、負けた某若手選手が「ここはこう打ては良かった。」と悔やんだのに対しKさん「それならなんでそこに打たなかったの?」。若手への厳しい言葉だが、深い言葉が心に響いた。後からなら分かるもの。 この名言、最近のコロナ評論を見て思い出した。
May 5, 2020
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スーパーの鮮魚店での話。カワハギをおろしてもらった。奥で調理して、身の柵はパットにアラは袋に入れて、店員さんが渡してくれる。肝はアラの袋の中?、と聞くと、そうだと言う。 晩に刺身で肝を巻いて食べるのを楽しみにしていた。妻が切ってくれたのだが、肝がないと言う。アラの中にもない。思いのほか小さい場合もあるが、これは完全にない。職人さんが忘れたのか、それとも持って行ったのだろうか?店は閉まっている時間で確認しようがない。 肝がないなんて!!とにかく頭に来て、明日行って返金してもらうか、同じもので返してもらうか、なければ丸のシマアジでも要求するか、上層部に言うかと考えているうちに、さらに気持ちが高まってしまった。 食べると身だけでも十分美味しい。ただ、アクセントに巻いて食べようと細ネギを切るよう妻に頼んであったが、ふと気づくと見当たらない。妻にネギは?と聞くとすでに飲んでいた事もあり「自分でやって」という。普段なら、大人しくそうするのだが、言い返して口げんかになってしまった。何て日だ!! その後、どう抗議するか妻に相談したらやめておけばと言う。これは意外だった。普段は、妻の方が圧倒的にずうずうしく返品や交換など言い出すことが多く、私がいつも止めている。飲食店で皿を投げようとした妻を必死に止めたこともある。私自身は飲食店や小売店で不愉快な事があっても、抗議した事は記憶にない。相手にも何か事情があるし、怒っても仕方ないと思うからだ。 妻の答えで少し冷静になり、考えると、なんで今回はこんなに頭に来たのか自分でも不思議だった。おそらくそれは、肝を非常に楽しみにしていた事と、「かわはぎは肝が命」が常識と思っていたためだろう。しかし、「あんこうは肝」ほど世間の常識でないかも知れない。また、単純に最後に入れ忘れたのかも知れない、さばくのはサービスでやってくれるのだから多少の役得も仕方ないかも知れない、次からは肝も入れてと言ってしっかり確認すればいいだけの話、従来はそのように考えるのが常だった。これは、老化現象か、あるいはコロナストレスのためだろうか。
Apr 26, 2020
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百田尚樹著の「幻庵」は2016年に出版された小説だが、途中で目が悪くなってしまい、少しずつ読み進めて最近読み終わった。 第11代井上因碩(幻庵因碩)の一生を描いた物語で、この間に本因坊家の棋士では元丈・丈和・丈策・秀和・秀策・秀甫らと関わっている。有名なライバル丈和との争いを中心に、当時の碁界の様子が生き生きと描かれる。 文学的な見識に乏しいので書評などはできないが、読みやすく面白い。いかにも格式高く難解な表現も多い川端康成の「小説名人」に比べると、碁の内容に踏み込んだ部分が多く、「碁の話」感が強い。アマゾンの書評など見ると、碁を知っている人から評価が高いが、碁を知らない人からは、碁の内容の部分が分からず残念、という感想が多い。碁も知らない人にも興味を持ってもらいたいという思いに溢れた作品なのだが、成功したとは言い難いようだ。ただ、碁の内容の部分も「因碩は大きく構えた。そして左下で白石をぐいぐい下辺に押し付けて厚みを取ると、次に右辺の白の肩をついた。~~」と言葉で説明されるので、碁打ちでも、よほどの古碁マニアでなければ良く分からないのだ。 文学的な評価は分からないが、小説名人の焦点が人物なのに対し、この本は「碁」こそがテーマだと思う。とにかく著者の碁への深い愛を感じて、それだけで心地良くなれる、まさに碁打ちのための本だと思う。 幻庵始め、登場する人物も碁を愛する人ばかりである。ただ、当時の様々な制約などあり、苦悩もある。特に大きな存在が不治の病だった肺結核である。物語の核になるような登場人物、桜井知達、奥貫智策、赤星因徹といった期待される天才棋士が、若くして命を落としてしまう。最後まで石を握り続ける彼らの姿が印象的だ。エピローグにある、昭和の時代に爆風で対局場の窓ガラスも碁石も吹き飛んだのに、同日に対局を続けた橋本・岩本の本因坊戦にもつながって行く。 若いころに読んだ橋本宇太郎著の日本囲碁大系「幻庵因碩」の中で、特に強烈な印象が残っているのは、最初に載っている秀和との争碁の一局だ(天保13年 先相先 秀和の先番6目勝ち)。この碁はこの小説のハイライトにもなっていて、幻庵生涯最高の一局と言われている。
Apr 18, 2020
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子供のころに夢を与えてもらった劇団たんぽぽが、公演がすべてキャンセルになり危機的状況になっているそうです。HPで寄附を受け付けています。 劇団たんぽぽHP
Apr 11, 2020
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数年前のMさんとの出会いは不思議だった。 妻の店の常連客だった若いMさんは、担任ではないが子供の学校の先生だった。その縁で時々言葉を交わす事はあったが、お互いそれ以上の事は知らなかった。妻から、忙しい時に注文を忘れていて2時間近く?も待たされたのにMさんは何も言わずに待っていたと聞いた事があったが、本当に紳士で穏やかな人だ。 そんなある日、突然の事件が起きた。Mさんが店に置いてあった週刊碁を読んでいるのを発見した。その様子を見ていて、ただものではない気配を感じた。よく見ると、眺めているような読み方ではなく、棋譜を目で追いながら思考している姿だ。 気配と言えば、以前新宿の駅前で大道詰将棋をやっていたのを見かけた時のこと。自分が解けるレベルではないとは分かったが、他のお客がポンポンと手を出す中でじっと盤面を眺めていたら、テキ屋のおじさんから「兄さんあっち言って!」と追い払わた事がある。競技違いだが、何か気配を感じたのだろう。 Mさんに声をかけた。「M先生、碁をされるのですか?」 Mさん「え、いえ少しだけですよ。」 私「どのくらい、お打ちですか?」 Mさん「弱いですよ。学生時代に少し。nippartさんも打たれるのですか?段ですか?」 私「いえいえ私も弱いですよ。今度、打ちましょうか?」 と言うようなお互いの手の内を読み合うような、不思議なやり取りが続いて対局の約束をした。 この時は、Mさん3~4段は打つのかな?と思っていたが、碁会所で改めて話をして驚いた。何んと、全国大学選手権の常連校の主将だったとのこと。このクラスは普通はアマ棋戦の予選などで会うはずなのだが、仕事が忙しくて大会には参加していないとのことだった。これがきっかけとなり、その後からMさんが転勤した今に至るまで時々打つようになった。週刊碁を置いてなかったら起こらなかった奇跡的な体験だった。
Mar 9, 2020
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今年の春でこの地に移住して20年を迎えるのだが、何とかつてサッカー王国と言われた静岡県勢の高校選手権での優勝に遭遇したのは初めてになった。テレビ放送は、中継の後も夜のキー局の番組が始まるまで、特別編成でハイライトやゴールシーンを何度も繰り返し放送していた。新聞は、スポーツ蘭は左右ぶち抜きの見出し、さらにトップ記事・時の人・社会面はもちろん、社説までサッカー一色となる扱いで、高校野球で常葉菊川が全国優勝した時の数倍の盛り上がりを感じた。 ブラジルスタイルという静学は、その通りの魅力的なサッカーで、松村選手・加納選手は、かつてのロナウド・ロマーリオのようだった。 何を見ても碁と結びつけて見てしまうのはもう病気なので仕方ない。静学はドリブルを中心とした戦術で、日本代表のパス主体のサッカーを見慣れていると新鮮だ。ただ、ドリブルと言うのは非常に効率的な戦術だと感じた。パスの場合は相手の背後に回るのに二人必要だがドリブルは一人で済む。つまり、2手かかる所を1手で済ますことができるのだ。さらに、バスで前線の選手に送っても結局そこでボールを守りつつ、味方の上がりを待つ事が多いが、ドリブルで上がった場合は他の選手も同時に上がってくる上に、ドリブルした選手の周りに相手が集まる、つまり凝り型を誘発することになる。 さらに驚いたのは、サイドにフリーに近い選手がいるのにわざわざ相手の密集している所をドリブル突破しようとするシーンが多々見られたこと。厚みに近寄る悪手にも見えるが、まさに壁攻めであったり、近寄った石を囮にさらに相手を凝り型に導く手にもなる。そこを突破した場合の効果は絶大だ。 どの戦術も利点欠点があって、いろいろな考え方があると思うし、それぞれにスタイルが違うことが面白いと思う。 ところで記事によると、サッカーにも戦術解析ソフトみたいなAIが利用されているようで、これも興味深い。青森山田も静学もまだ導入していないそうだが、今後どうするか。たぶん、静学は意地でも導入しないのではないかと思う。
Jan 16, 2020
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リクエストもあったので、AIの話。 AIがプロを凌駕して生じた変化の中で一番良かったと思う事は、碁は従来思われていた以上に手の評価は単純でなく、序盤~中盤では幅広い選択枝があることが分かったこと。気になることは、権威が単にプロからAIに移動してすべての評価の基準がAIになりそうな事。 竜生戦では最近、AIの評価を常に見せながらの解説になっているが、時には解説の大半が対局者がAIの推奨通りに打てているかどうかという視点になる事もある。権威を奪われながらも、「AIなんて碁じゃない!」とぶち上げる事なく強い者に敬意を払うプロの潔さにも感心する。 プロ棋士と話すことがあるたびに、AIについてどう思うか、AI時代のプロ棋士の存在価値はどこにあるかを聞いている。プロ棋士も相当に迷いがあったり、人によって姿勢に相当な違いがあることも分かった。 人の対局ならではのドラマを見せることに価値を置く人も多い。自分の打つ手に一貫性を持たせる物語りとしての碁が人間らしい碁と思うが、これは打たれる手だけでなく対局姿勢にも現れる。武宮先生や依田先生は、流れが良い時や会心の手を打つ時の、迫力あるしなるような手つきも魅力だ。一方いつでも置くように打つ芝野名人はまさにAI時代の申し子のように見える。 あるトップクラスの女性棋士の答えにはギクッとした。曰く「プロの価値は勝つこと。」。まさにストレート、一点の曇りなしの応答に圧倒され、「でもAIに勝てないでしょ。」との言葉は飲み込んでしまった。勝つことで収入を得る棋士にとって評価値が低い手をわざわざ打つのはナンセンスかも知れない。 ところで個人的には、AI以前から宮沢先生や西村修さんのような物語重視の打ち手に憧れている。ただ、自分自身は物語が目茶苦茶になることが多く、依田先生にも「その手には物語がない。」と指導された事もある。実は、私自身は「碁は何でもあり。」を示したくれたAIには大いに救われている。
Dec 20, 2019
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ネット上で企画したリーグ戦でのルーラさんとの一局。気になっていた事があったので、改めて検討した。 参考図1 この局面で白1を決めて下辺に割り打てば白がやや良かったよう。実戦ではすぐに割り打って黒1の曲がりを許したので、やや黒良しになったようだ。 実戦図1 下辺黒の割り込みが工夫の手。素直に受けるのも面白くないので、白1から策動して振り替わりになった。この時は、割り込んだ黒1子をポン抜けて我ながら妙手かと思ったのだが、今見ると右下の損が大きくてイマイチの感じだ。AIでも検討してみたが、白に好転しておらず、黒の有利がはっきりしたようだ。ただ、気持ちの入った手だったと思う。 参考図2 以下白1から3が面白かったと思う。シチョウが悪いので部分的に黒4ですぐには手にならないが、白5から下辺に振り替わりを求める。一旦下辺を治まった後にさらに右下方面に利きがあるので黒も味よくまとまらず難しい戦いが続きそうだ。 参考図3 黒4と反発しても、白5と切って右下のハネツギが利くので黒は逃げられない上に隅に味が残る。白5ですぐにハネツギを決めてもでも実戦よりもかなり利かした形になる。ホントに碁って不思議だ。
Oct 20, 2019
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AIが碁界を席巻し始めたころに武宮先生がNHK杯の解説をした時のこと。まだ序盤戦の時にAIの流れからの話で「碁はどの手を選択しても1局。好きな所に打てば良い。」と言っていたのだが、そのすぐ後に対局者が打った予想外の手を見て「えっ、ここはこちらへ打つ一手」と叫んだ。たいへんな矛盾だが、武宮先生や宮沢先生の解説が面白いのはそこにある。 最近ラグビー関連の番組を見ていて興味深い言葉を知った。今の日本代表の大躍進は、外国出身の選手や指導者の影響が強いと思っていたのだが、実は50年前に大西鐵之祐監督の元に23歳以下のニュージーランド代表に勝ったり、イングランド代表と互角の勝負をした時期があったと言う。その時と戦術や強化の仕方が今の日本代表に非常に近いらしい。その後、世界に勝つために大型化を重視したが成果が出ず、規律と技術とスピードなど日本人の特性を生かして再び復活する流れになったのは男子バレーボールチームにも共通しそうだ。 その大西監督の名言を知った。「戦法に絶対はない。だが絶対を信じないチームは敗北する。」というもの。かつての藤沢名誉棋聖の名言「錯覚している奴が一番強い。」にも通じる言葉だ。 碁の場合、そのメンタリティーは解説でも隠せない。特にアマの場合は感想戦にも出てくる。そこはノーサイドの精神が望ましいとは思うが、感想戦が強い人は本番も強い、という現象も理屈に合っているようだ。
Oct 17, 2019
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テレビでアンケートによる高校野球の最強チームという企画を見て思ったこと。こういうのは、感受性豊かな時代に受けたインパクトが一番影響するのでしょうね。 私にとって最強の高校野球のチームは、KKのPLや松坂の横浜でもなく、ダントツで春夏連覇したころの簑島高校。プッシュバントが全部ヒットになってしまうのに恐怖を覚えた。まさかのベスト20漏れにはびっくり。 ついでに最強のプロ野球チームは、上田監督で福本・長池・山田などが主力だった阪急ブレーブス。日本シリーズで、抑えの山口もほとんど出る幕もなく、森本・大橋など脇役に打たれまくって長嶋巨人がコテンパンにやられたのに、心から恐怖を感じた。ついでに相撲は強すぎて死ぬほど憎らしかった北の湖。アイドルは永遠に太田裕美(松田聖子やAKB48に癒されますかね~、←挑発)。ゴルフはスマイル・シンデレラ (←おやじ殺しに、殺されました。)
Aug 11, 2019
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2007年関西の強豪Iさんとの一戦で私の白番。 右下の形は最近あまり見なくなったが、以下の白1は工夫の手。この手を誰が打ち始めたか分からないが、それ以前に西村修さんが打っているのを見た事があり、いつか打とうと思っていた。 実戦図1 以下の黒1は序盤に劫なしで打たれたと思うが、手拍子だった。白1と劫を臨んで劫材が豊富な白が一気に優勢になった。 実戦図2 白は左下・右下の劫材を使って、どんどん劫を大きくして、以下の図になり勝勢となった。 実戦図3 この後緩んだりミスが出たりで、難しい碁になったが以下の図になり決め手のある局面となった。黒6に続いて白A(あるいはその上)と打てば中央がセキになる味もあり、黒はどうしようもなかった。実際に出切る前には、そのつもりで読み切っていたはずだった。ところが、黒6になった局面で当初の読みが飛んでしまい、何度読み直しても白がどうやってもダメと思ってしまい最悪の手を打って痛恨の負けとなった。左側の黒のダメを錯覚してしまった気がするが、何度確認しても気づかなかったのは不思議だ。 実戦図4 碁にポカは付き物で、トッププロの命がけの戦いでも出てくる。アマの場合、気が緩んでの不注意という事もあるが、どんなに気を張ってミスに気をつけている場合でも出てしまうミスもある。これはおそらく錯覚によるもので、むしろリラックスしている時の方が出にくい。
May 18, 2019
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2010年の対局から。黒が私、白は当時学生タイトル者で招待されていたYさん。 当時、黒番でこのような形の布石をよく打っていたが、今では白から右辺の割打ちがほとんど打たれなくなってしまった。実戦図のようになると打ちやすいと感じていたが、AIで検討しても、この形になると黒が良いようだ。 実戦図1 白が一番評価が高くなる図は、例によって以下の図。まだ,簡単には信じられない。 参考図1 実戦は、以下の図になり黒1とポンヌキ。この手しか考えなかったが、甘かった。実戦は下辺に割打たれて振出しに戻ったようだ。ただ、この後頑張って、若者相手にヨセ勝負を逃げ切って嬉しい勝利となった。 実戦図2 黒1では、左上や下辺の大場に先行すれば、はっきりリードしていた。 以下は一例で、このようになれば黒勝勢となる。ここでも、利かした石を捨てるべき場面だった。 参考図2
May 10, 2019
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5月の連休を中心に駿河城などで今川義元生誕500年を記念した企画が催されるそうです。 https://imagawa500.jp/reinstate/ 静岡県に移住してひどく不思議だった事があります。それは、名将今川義元の人気がなくて専ら徳川家康が持てはやされていた事です。県外にいる時は、義元こそが地元の英雄で、家康は侵略者で悪者だと思われていると予想していたので、大いに意外でした。静岡の人が大らかとか、義元時代の締め付けの記憶と言うよりは、おそらく後の支配者に都合の良い認識になっているのだと推測します。 信州では真田昌幸・幸村という名将がいますが、私の父や祖父もそうでしたが従来は東部以外の地方では嫌いな人が多く、なぜかと言うと侵略者武田信玄の手先だったからです。 県歌信濃の国に出て来る武将は二人だけで、木曽義仲と仁科五郎信盛です。信盛は武田信玄の子ですが、地元の領主の家を継承し織田軍と真っ向勝負で玉砕した所が、風見鶏的に戦国時代を生きた昌幸より人気なのだと思います。 さて今川義元は町人の自治を認めたり検地を行うなど優れた功績を残していますが、もう一つ特筆すべきは芸能など文化を大切にした事です。これは、今川家で過ごした家康にも大きな影響を与えたはずで、実は囲碁文化の保護・発展には義元も間接的に功績があるのです。義元の復権は大いに喜ばしいことです。
Apr 28, 2019
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2009年の団体戦の対局。白は私、黒は学生時代から活躍した東京のTさん。 白1は様子を見た手で、黒が下がりなら左側からハネツグ予定。ちょっと小賢しいかと思っていたが、結果的に後に役立って来た。 実戦図1 以下黒1から3が厳しい手。白は下にツゲば穏やかだったが、勢いで上を取った。 実戦図2 以下11までとなって白優勢となった。ただ、黒10が悪く、この手で■に打てば黒がやれたようだ。 実戦図3 上図白10では単に白1が良かった。以下の黒2や3の点にツケコシで切られるのを心配したのだが、左辺の白はすでに利かしている意味があるので、捨てて打てば悪くなかった。取られてはいけないとの思いこみがあった。 参考図1 以下白1が会心の手で、最初のツケが働いて一気にサバキ形となった。 実戦図4 続いて以下のようになり、延々と戦いが続いた。上辺白は取られないので白悪くないが、白4ではもっとはっきりした手があった。 実戦図5 ここでも白1から左辺の石を捨ててしまうのも良かった。黒2対して単に白5でも悪くないが、白3がさらに働いた手でビタッと締め付けが利く。現実は、石に情が入ってなかなか冷酷になれない。 参考図2
Apr 7, 2019
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N先生の碁は常に手厚く筋が良く大局観にも優れていた。堂々とじっくり構えて、機会をとらえて一気に力を爆発させる。薄い戦い方はしないので、一旦力を出されると相手は後退するばかりでどうしようもないという流れになった。私の場合、余計なところで地に目が行ったり欲張りすぎたりでバランスを崩すことが多いので、常にリズムが崩れず王道を進むような先生の碁にはあこがれていた。 この碁は先生が亡くなる前年の対局。私の白番の碁。 以下黒1に対して白6に受けていても悪くはなかったようだが、気合で2と反発した。それまで、白番では先生の剛腕をかわして逃げきりを目指す碁が多かったと思うが、この時は真っ向から戦ってみようと思った。 実戦図1 以下の図になり白1に切って決戦となった。黒2は力強い手。白7は勢いで打ったが悪手で、白Aに打っていて上辺の白は生きがあり白優勢だった。 実戦図2 黒2で横に伸びると、以下参考図のようになって黒がまずい。 参考図 実戦は黒2から4が強烈。さらに5が手拍子で黒6でしびれてしまった。白5では4の右側に受けている相場だった。実戦は、右側黒石を取り中央白2子を取られる展開となり難しい碁となった。 実戦図3
Mar 24, 2019
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若いころ公式戦でも変則布石を頻繁に使用していた時期があったが、成績には結びつかなかった。役満のようにハマった時の快感が忘れられず打つのだが、ほとんどの場合こちらがあまされる。 AIが頭角を現した時に、夢のある極端な中央志向や変則布石が出て来るのを期待したが、残念ながらそうならなかった。やはり確率的には劣るのだろう。 2000年の沖縄のIさんとの対局。私の黒番で蟹の目布石を試みたが、右辺で3手も手抜きされて困ってしまった。 実戦図1 ただその後白にも疑問手が出て、かなり寄り付き以下の局面では逆転したようだ。実戦は、黒4から下辺になだれ込んで生きたのだが、この後白から寄り付かれてしまった。 実戦図2 以下1から大きく捨石にして先手を取って上辺に回れば、下辺全部白地になっても黒に残っていた。これは思いもよらず、攻め合い負けの時点で読みを打ち切ったと思う。 実戦図3 以下の局面となり、白1が強烈。 実戦図4 それでも何とかしのいで以下の局面になったが、時間に追われて下辺に手入れしたのが敗着となった。 実戦図5 参考図のように、上辺黒1に回り、下辺は死なず黒勝ちだった(黒7は一例)。目を取る前に白7の所を決めても、その下方の穴があって黒を取れない。今振り返ると難しい手ではないが、頭が飽和状態だったかも知れない。変則布石から珍しく勝ちが見えていたので残念譜だ。 参考図6
Mar 17, 2019
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以前の研究会での対局から。向2子の対局で黒は現在トップクラスの棋士になったM少年。可愛い少年だったが、超早打ち早見えの天才だった。 以下の実戦図では、白は上辺一団を取られたが、下辺で頑張り、上辺の諸々の味を見てかなり勝負になりつつある場面。黒1は鋭い先制攻撃だった。 実戦図1 白1は上辺の石を引っ張り出す手を狙ったが、黒4まで左方が切断された。 実戦図2 以下白1では白3に打つのが相場だったが、誘った手。ここでサッと手が止まって黒2は何とも冷静な手。白1の下を切って白4となると、左右の黒の取りが見合いになる。白は上辺の石を繋がっても左辺取られると勝てないので、結局白3と打つことになった。 実戦図3 中央絞って以下の図となったところで、黒1は大きい手だが敗着になった。おそらく形勢判断のミスで、計算せずに黒2を利かしてからゴリゴリ出て行くのが良かったようだ。頭脳明晰ゆえのミス だったと思う。 実戦図4 棋院HPプロフィールで確認すると、この時M少年は10歳4か月。小学生でアマ高段のレベルになる子は時々いるが、自分の事を思い出すと信じられない能力だ。父親などが打つのを見ていて楽しそうでたまらないので、何度もせがんで教えてもらったが、高学年になってもどうしても要領を掴めなかった。父親と星目風鈴で打っても盤上の石が全部死んでしまい、それも理解できずに打ち続けていたのでさぞ面倒だったと思う。 さらに近い手合いで打つためには、大人的なずるさや分析力が必要な気がするが、 これも碁の不思議だ。 過去に私が打った少年で、一番早熟だったのはおそらく以下の記事に出て来る小学3年の子だ。ただ、この当時、このレベルの低学年の子が浙江省だけで「山のようにいる」との話だったので愕然とした。 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/200710290000/ ところで今9歳で棋士になることが決まった仲邑さん、日本ではこれほどの早熟は記録的だ。ただ世界には、ほとんど変わらないような早熟天才がたくさんいる。某先生に聞いたところ、女流タイトルは時間の問題だが、日本の男性トップに並ぶことは難関だろうとの意見であった。ただ、子供の可能性は恐ろしい。碁も攻撃的で面白い。将来は世界での活躍に大いに期待したい。
Mar 10, 2019
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週刊碁で西村修さんが亡くなられたのを知った。一度だけの対戦は2002年のアマ十傑戦での8強を賭けた3回戦だった。 西村さんは、華麗な棋風で、毎局のように大胆な布石作戦や鋭い手筋での寄り付きで観戦者を魅了していた。アマトップクラスでは一番憧れていて、実は隠れファンだった。雲の上の存在で、恐れ多くて話しかけることなどできなかったが、全国大会に行った時は西村さんが負けるまでほとんどの碁を観戦していた。この前年は西村さんが決勝まで進出したので、最後まで観戦していた。決勝も見事な打ち回しで勝勢だったのだが、観客を楽しませようとしたのか、さらに頑張って大逆転負けしてしまった。芸術肌で勝負に執着しないためか準優勝が極端に多いのだが、そういう所も魅力的だった。 私の黒番。黒1に対する白2は全く予想もしていなかった格好良い手で、相手の手に見とれてしまった。ほって置くと寄り付かれるし、どう打って良いか分からなくなった。相手に手を渡す玄妙な手だ。 実戦図1 以下白4から14までも何とも軽妙な打ち方で、白の手がしなって来た。そう言えば、アマ強豪の中で、着手する姿の美しさという点でも西村さんは特別だったと思う。特に、流れが良い時のしなるように打ち下ろす手つきには惚れ惚れした。(余談:西村さんの指導も受けていたという結城先生のあの手つきはナゾだ。) 実戦図2 ただ、今検討すると意外に形勢はそれほど離れてはなく、やや白良しのようだ。黒は上辺ハネ上げて右上両ガカリから以下の図になった所で、白が1と打って来た。この手はまさに手がしなったカッコ良い手だったのだが、勇み足だったようだ。右辺白8くらいなら上辺、右辺の黒が薄く白がリードしていた。実戦は黒が先手で封鎖して、一気に、黒が良くなってしまった。 実戦図3 私もかなり高揚していたと思う。上辺黒2に打てば白がしびれる場面だが、おそらく私もいい所を見せようなどと色気が出たと思う。黒1に白2と打たれ大持ち込みになってしまった。ただ黒3から黒9となり、優勢を維持し逃げ切れた。憧れの人を相手に、下手なりに無心で精いっぱい打てた会心の碁だった。西村さんにすれば、手ごたえの無さに思わず勇み足が出てしまったと思う。 実戦図4 余談 昨年、久々に全国大会を見たのだが、西村さんのように打ち下ろす姿に色気まであって魅せる人は見当たらなかった。ただ、以前から注目している選手がいた。それはかつて学生碁界で活躍した糸山さん。不本意な手でも、いつでも一手一手を力を込めてしっかり打ち下ろしている。この姿勢は立派で、なかなかできる事ではない。ぜひ、関西のY9段にも見習ってほしい。
Feb 24, 2019
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以前中部総本部で行われていた1996年の東西対抗戦での1局から。 おそらく菊池先生や西村修さんが中心となって企画された棋戦で、すべての対局の打ち碁集が出されたり、これを題材にして石田章プロと高木祥一プロ著の棋書(天下六段・囲碁戦略)が出版されるなど憧れの大会だった。東西それぞれ100人近いチーム戦で、午前と午後に一局ずつ、相手を替えて2局打った。このころ愛知県に住んでいたので何度か誘われて参加したが、当時は愛知県(西)と静岡県(東)の選手が相当数を占めていたと思う。 白は山梨の強豪Tさんで、黒が私。右上で白が技を飛ばし面白い変化ができた。ここまで形勢は互角。以下実戦図で、左辺白3は9が良く、黒4では9、黒10では11のハサミツケが良かった。黒10の罪が重く、黒が一気に苦しくなった。 実戦図1 その前の黒2では、下図のように下側を軽く見る打ち方が良かったようだ。 参考図 その後、左辺で劫争いになったが、黒が苦しかった。黒2に対し白は4に受けて下辺を劫材にすれば白が優勢だったが、白3と劫を解消して黒4と整形できて黒が優勢となり、その後もヨセで頑張り押し切った。 実戦図2 Tさんは、大柄で迫力ある外見ながら優しい方で、後に山梨で対局がある度に名物のほうとうを参加者に振る舞ってくれて御馳走になった。その美味しさに病みつきになり、冬には頻繁にほうとうを食べるようになった。
Feb 17, 2019
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先日のEテレ「人間とは何だ」は、「カイジ」などの作者福本伸行氏をゲストに迎え、AIの勝負事への参加についてアレコレ考える内容だった。野球ファンなら良く知っていることだが、従来のセオリーが統計的には間違っていることが分かって、大きく戦術が変化しつつある。AIの進出で勝負の中の「物語」が失われて行くとか、人間が勝負を好むのは「感情が動くから」など、共感する内容が多く興味深かった。 参考記事 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201304210000/ 過去、序盤からコテンパンに打ちのめされた思いが強く残っている碁がいくつもある。そのような碁では、序盤から相手の描く物語の通りに進行し、こちらが物語を描けていないのをお互いに感じていた。そのことが、一方的にやられた感に結びついていると思う。ところが、今AIで検討すると、そのような碁の中に意外なほど中盤までは形勢は拮抗しているという碁もある。逆に自分が打ちまわして快勝したはずなのに、中盤まではそうでもないケースもある。これは碁の不思議だ。 決定的に勝負が動くのは、物語が描けない時に嫌気が差したりすっかり萎縮してしまうことが要因になっている。いまさらながら、勝負事には気持ちの持ちようが大きいと思う。 この碁は、私の白番で黒は高い芸を誇るHさん。序盤ひどく打ちまわされたと思ったが検討すると意外とそうでもなく、悲観した中盤に一気に後退してダメにしてしまった。 その後、左辺黒3と劫の受け番で劫材(しかも無劫)を打つという黒の信じられないポカが出て、上辺黒石をただで取ってしまった。この後、右上のように打てば逆転しそうな状況だったが、気持ちが前向きにならず、あっさり死んでしまった。最初から最後まで、物語でも気持ちでも負け続けた人生最悪の碁となった。図
Feb 17, 2019
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最近、「いきなりステーキ」というファミレス的なステーキ屋があちこちにでき、私も遅い昼食などで重宝している。まあまあお値打ちなのだが問題がある。ステーキの焼き具合はレアが好きで、店でもレアを勧められて注文するのだが、実際に出て来るのはミディアム~ウエルダンになってしまう。「本当のレアで」とお願いすると「ベリーレアですね」と言われるので頼むと、表面だけ火が通り中は完全な生で出て来る。これでも私はOKではあるのだが、高級店で出されるような、かの美味しんぼにもある「火が通ったレア」を食べたくても出てこない。ただ、店の性格上、他の作業もしながら何枚もの肉を同時に焼くので、これ以上贅沢は言えないと思っている。 さて先日、NHKでサピエンス全史というベストセラーを書いたユヴァル・ノア・ハラリという学者が登場する番組を見た。彼の考える、これまでの文明の発達や、これからの予測が紹介されていた。 以前に紹介した「人間とは何だ」の特別番組では、参考 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201801010000/ 「人とAIは融合し不老不死となりさらに宇宙をも支配する」との予想があったが、ハラリ氏の予想は楽観的なものではない。AIとも融合し不老不死になるが、それはごく一部の支配層であり、それ以外の人間は疎外される。また、AIやバイオテクノロジーを中心とした技術は、最初は人間の幸福のために利用されるが、いずれ人間がアルゴリズムに支配され人間自体の価値が乏しくなっていく。その先は?・・・という警鐘を鳴らしている。 人類は進歩による幸福を求め続けるだけでなく、現状に満足する事も大事だと述べている。かつて当ブログの記事の中で私が直感的に述べてきた事に近い内容も多く共感した。 現実にスポーツの審判を始めとして、人間が排除される事を皆が求め、それが目前に迫っている分野は多い。もし人間がAIと融合したら、碁の対局の意味はどうなるのだろう。 そんな番組を見た少しあとに、週刊碁を見て愕然とした。なんと、何かの世界戦の予選にトップ選手を含む20人の日本選手が参加して、0勝20敗で全滅だったとのこと。でもあの番組を見ておいて良かった。現状に満足しなければならない。中韓の棋士が高級ステーキとすれば、日本の棋士はいきなりステーキのように、身近で人間的魅力があるのだ・・・・
Feb 6, 2019
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2007年の県大会の碁から、黒は名門大学囲碁部で活躍したMさん。白が私。理論派で碁に明るいMさんとの碁は、序盤私が悪くして中盤以降逆転勝ちする碁が多い印象が強い。AIで検討した序盤評価では、他の人との対局で私が悪いと思っていた碁でもそうでもないケースが多かったが、彼との碁はほとんど私が悪くなっている。本来は彼が県内では勝ちまくっても不思議ないはずなのだが、そうならないのは紳士的で優しい性格のためかと思う。この碁も結局そうなった。 以下の局面までは互角の形勢だったが、黒12までとなり一気に黒が優勢となったようだ。 実戦図1 上図白11は上辺の白も弱いので相場かと思ったが、甘かった。以下1と打てばまだ互角の形勢だったようだ。 参考図1 AIで検討すると、以下のような打ち方もあったようだ。黒の注文だけれど、白は上辺を割っているのと白1が働く意味があるのに言い分がありそう。 参考図2 以下黒1から3となると黒が良い。白は別の手が推奨され、そのため黒1では左辺切りから打つ手が推奨されている。 参考図3 なんと以下の白2と受けて両当たりを打たせる手が推奨されている。天頂・Lizzie ともこの辺りの変化の中では、白6までの形が一番白の評価が高い(それでも形勢は白少し良し程度)。7以下は一例。 左辺のこんなポンヌキを許すなんて見たことがない。そんなバカな!と思ったが、よく考えてみると、左上黒が薄くなる、左辺白石がサバキの味付けになる、中央白の剣先が出て下辺の黒がまとまりにくい、など白にも言い分がある。条件次第ではこの変化打ってみたいと思うが、周囲の人達にはついに狂ったかと思われそうで楽しみだ。参考図4
Feb 3, 2019
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2007年の対局。出張で東京に行った時にフラッと某碁会所を訪問したところ、対局相手として見知らぬ年配の方を紹介された。片懸賞でとの事で、最初何で?と意味が分からなかった。私がキョトンとしているのを見て、他のお客がこの方が九段のK先生だと教えてくれた。日本のほとんどの棋士が住んでいる東京はやはり凄いところだ。私の定先コミもらいの対局。 実戦図1 序盤白に打ち回されたが、地で頑張って開き直り中央黒の凌ぎ勝負になった。無傷で生きれば黒勝ちの局面。白1が勝負手だが、黒2に石を持ってきたのが狙いを残した手。 実戦図2 白は1から利かして白9まで本気の取りかけに来た。恐ろしい。ここで黒10・12が勝着になった。少しアルコールも入っていたと思うのだが、なぜこの手に気づいたのか不思議だ。 実戦図3 白1から最後の決戦となったが、黒14まで白大石を取って決着がついた。全体的には白の芸を見せつけられた碁だったが、突然のバカ力に驚かれた思い出の一局だ。
Feb 1, 2019
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2008年の団体戦の対局。黒はアマトップ選手Nさん、白が私。以前の対戦で地を稼がれて負けた事があり、興味もあって逆に序盤から思いっきり稼いでみた。地に辛いNさんが中央に模様を作る非常に珍しい碁形になった。 ここまで拮抗した形勢が続いていたが、意を決して白2からさらに4と思い切って勝負手を打った。黒5は形勢に自信ありと言う手だが、さすがに白が利かしたようだ。AIで検討すると、白6の手で7の点に打てば、黒が受ければ実戦より押し込めるし、黒が反撃すれば白から右辺へいろいろ手がついて白が面白かったようだ。 実戦図1 黒がハザマにくれば以下参考図のような感じで勝負するつもりだったが、これはいい勝負のようだ。 参考図1 進行して黒1が策のある手。素直につぐと中央が止まる上に左下の切り取りも半先手の意味があってややつらい(それでも実戦よりは良かった)。いろいろ考えた末、白2・4を決めてから、左下切り取り先手を拒否して6と受けたのだが、ここで一気に非勢となった。この時は、これでやれると思っていたのだが完全に判断間違い。恐ろしい計算と判断能力を見せつけられて、ガッチリ4.5目負けとなった。 実戦図2 黒1に対して白2と反発するのが良かった。下辺に黒が出れば白3とタケフにして白優勢となる。黒3に対しては白2の下にツギでも実戦より良いが、Lizzieの推奨は白4。黒の打ち方によって、下辺ツギが先手になったり、左辺への侵入・上方の黒の薄みなど見て、何とも玄妙な手だ。 参考図2
Jan 14, 2019
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2014~2018年囲碁エッセー ある老人との対局 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201501310000/ M先生のこと https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201501210000/ 郵便窓口で一局 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201504170000/ アルファ碁雑感 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201603230000/ Oさんとの最初で最後の碁 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201605250000/ 楽しいふれあい囲碁のはずが https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201606040000/ 名人の指導を受けて来ました https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201609040000/ 師匠乗り換えました https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201704160000/ 大河ドラマに名対局シーン https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201707010000/ 人間はAIと融合し宇宙を支配するのか? https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201801010000/ 憧れの碁 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201807150000/ 免状発行の件 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201808180000/ シチョウで取ってしまって困った話 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201808220000/ 小桂馬にカタツキの価値を何十年も前に知っていたK先生 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201808270000/ Iさんの事 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201809240000/ 碁を覚えてから一番の衝撃 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201810120000/ 名人戦観戦記に意見https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201810300000/ 碁の思い AI後 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201811110001/ 無人の地を行けばなりhttps://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201811230000/ 2014年~2018年盤上のドラマ 今日の感動89、90 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201407040001/ 今日の感動91.92 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201505060000/ 面白い局面1.2 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201702090000/今日の感動93.94 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201809290000/ 決め手発見 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201810060000/ 苦手Oさん https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201810080001/ 2000年Uさんの旅 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201810110000/ 秒読み地獄 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201810140000/ 出入り200目の大逆転負け https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201810200000/ 天才柯君、胡君 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201810210000/ 凌ぎの急所 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201810260000/ サバキのはずが全部取られ https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201810270000/ 気持ちの手 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201811030000/ 秒読みの中の衝撃ドラマ https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201811040000/ 雪辱戦 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201811090000/ Tさんと再会 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201811110000/ 人生最高の愚直手 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201811110001/ 正論とは声が大きい人が言ったこと? https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201811170000/ 憧れのTさんとの対局 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201811180000/ https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201811200000/ 快進撃 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201811230001/ 悔いの残る碁 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201811230002/ 綺麗に筋に入った https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201811250000/ 突入したが https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201812030000/ アコムで豪快に破産した話 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201812110000/ 衝撃の発想 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201812160000/ 天才少年と熱戦 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201812230000/ 碁は変化するもの https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201812290000/
Dec 30, 2018
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2008年の団体戦での一局。黒は私、白は若手強豪で後にプロ棋士になった千葉のOさん。 実戦図の場面まで、右下で少し白が遅れて黒が走っていた。ただ、黒5までとなった所でリードは飛んだようだ。黒3では、この下がりか一路下の渡りしか頭になかった。今はほとんど見なくなった形だが、以前のプロの碁でも黒3の下がりが多かったと思う。ここで天頂の推奨も下がりだが、Lizzieの推奨は全く違う手だった。 実戦図1 Lizzieの推奨は以下のAかB。柔軟な手だが、形としてはある手なので、全く考えなかったのは左辺を黒の構えにしなければと言う思いに囚われていたためだろう。 かつて酒井猛プロが、アマとプロの一番の差は柔軟性にあるというような事を書いていた。よく見かける形に囚われるだけでなく、「この石は攻めなければ」とか、「ここを地模様にしなければ」などの思いが生じた時に、局面が変化してもすぐ切り替えができない事が多い。AIには、さらにプロ以上の切り替えの早さを感じる。 低段者でスソアキを全部受けてしまう人に「碁は変化するもの。変化を楽しもう。」と言うのだが、実は自分自身に言い聞かせている言葉だ。 参考図1 以下の図になれば下辺の味も悪く黒が良いようだ。 参考図2 以下、黒1の切りからの変化の一例だが、この場面でLizzieの第一推奨手には驚いた。 参考図3 何んと、第一推奨手は黒B。黒Aが第二推奨手で、この手は分かり易い。この辺りの白が固いので凝らせて左上で主導権を取ろうとする手だ。 黒Bも狙いは同じなのだが、さらに欲張った手だ。この手に対し、上ハネなら黒A切り、下ハネでも黒Aとなる。 参考図4 仮に以下のような図になれば黒の注文通りで、左辺の黒を捨てて左上・上辺で黒が主導権を握れる。 参考図5 実戦は中盤まで黒がリードしていたが、上辺で失敗して微細な展開となった。以下黒3に白4が打ち過ぎでここが手になって黒勝ちとなった。白4で7なら、黒4先手から黒5と切り、白左側から当て黒6となり、微細な形勢が続いていた。 実戦図2
Dec 29, 2018
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2008年のアマ選手権県大会から。私が白。黒は当時高校生日本一にもなり、勢い緒に乗っていたY君。 左下での面白い戦いが一段落し、黒1と広げた場面。白2が工夫の手で、善悪は分からないが、なかなか面白い手だったと思う。 実戦図1 以下白5までとなっては、白が綺麗にさばけて一本取った形となった。黒は、ここでさらに左辺守りが必要。 実戦図2 その後、一進一退の難しい局面が続いたが、白1が嫌味な所で少し白がリードしたようだ。黒4は頑張った手だが敗着となった。白7となっては黒の凌ぎは無さそう。 強敵のY君相手にかなり良い碁が打てたと思う。 実戦図3
Dec 23, 2018
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2006年のSさんとの県大会の一戦から。Sさんとは学生時代に県対抗団体戦で対戦して完敗したことがあり、強い人がいるものだと驚いたことがある。本格派の棋風で悪手が少ないので、こちらが緩手を打つと苦しくなる。 以下私の黒番の碁。ここまで白が下辺に低く偏在してやや黒が優勢の場面。白1から3が白の勝負手。白11まで、白に楽しみが出てきた。黒4では、8に外す方が良かったと思う。ただ、AIで検討するとさらに有力な手があった。実戦図1 黒1から8までがそれ。黒7では8につぐ手もあるが、凌ぎ具合が勝負で主導権は完全に白に渡る。図のようになれば優勢も維持しつつ、黒が主導権を握り続けられる。何とも柔軟な発想に驚く。 参考図1 その後再び黒が攻勢になり以下の局面。黒1と打てば優勢だった。 参考図2 左辺に白から手をつけられ劫になった。結局ここの劫は黒が勝ったが、白の大石は逃げて右下方面の黒が取られる分かれとなり、白がリードした。Sさんは絶好調で、この時に初優勝した。 実戦図2
Dec 16, 2018
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2006年プロアマオープン戦のアコム杯、若手棋士Y6段と対戦した。中部総本部2階のフロアで、ゆったりと配置されたテーブルにポットが置かれており、プロ棋戦の雰囲気を体験することができた。 私の黒番。右下の打ち方は今はすっかり打たれなくなったが、黒が単調で打ちにくいようだ。ただ、そんな事より乱戦に持ち込むことだけ考えていた。 実戦図1 以下のように進行し、白石を持て余し気味の展開となった。白1はプロらしい鋭い筋だが、得にならなかったらしい。 実戦図2 以下の図になり、白1に対し黒2から一気に勝負に出たが、読み違いがあったと思う。 実戦図3 右上はどう打っても劫になるが、黒の劫材が続かないので仕方なく左上につけて劫材作りに行った。しかし相手をしてくれず、白1からさらに戦線拡大。白は上辺5子当たりの確実な劫材があるので、どうしても黒が勝てず、他の対局がまだ序盤の昼食前に木端微塵となった。でも良い思い出になった。 実戦図4 局後に検討していただき、以下の局面で黒2から4と打てば、白全体の目がなく黒がやれたようだ。AIで検討しても、この瞬間は黒が面白くなっているようだ。黒6は一例だが、Lizzieの推奨は何と左上の星へつける手。びっくりだが、確かに緩まない方が押し込める感じがする。 参考図
Dec 11, 2018
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2011年九州の元院生Mさんとの対局。各所で地を稼いで黒が走った局面。左辺白模様をうまく制限できれば有望そうな場面。黒3から5で左辺に手をつけて行った。 外から寄せ合いでも勝負できる所なので、相当に気合が入っていたと思う。今研究するとどうなっても得にならない選択だったようだが、今見てもこう打ちたくなる。 実戦図1 以下の場面になり、黒1から黒5となれば上半分は生きるが下の3子取られると得にならないようだ。実戦は下3子も引っ張り出して、上辺切りから中央で戦いを臨んだが黒が苦しい戦いで玉砕した。 参考図1 天頂とlizzieで研究すると以下黒1が相場だったようだ。 参考図2
Dec 3, 2018
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2003年の県対抗戦・関東甲信越大会での一局。私の黒番で白は栃木のKさん。学生の大会の時に、二人で新宿をよく飲み歩いた。二人とも団体戦では成績が良かったが 、個人戦ではなかなか結果が出ず悔しい思いをしていたが、彼はついに準優勝した。読みが深く、競り合いで鋭い手筋を繰り出す恐ろしい打ち手だ。 公式戦は学生時代以来だった。序盤は阿吽の呼吸で普通の碁にならないのが定石だ。 実戦図1 序盤で、右辺の白へのイジメが利いて黒がリードした局面。白1から様子を聞きながら手をつけて来たのがKさんらしい技。黒2では上からかかえて、仮に隅の1子取られても十分だった。 実戦図2 白1は勝負手だったが、黒2が敗着になった。白3から7まで見事に筋に入って絞られた上、上辺の大石をいじめられてしまった。 実戦図3 以下の黒1を決めてから3と3子を取って以下の変化なら黒勝勢だった。中央種石の3子はこのままで取れている。 参考図
Nov 25, 2018
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2006年アマ選手権から。 黒が私、白は招待のMさん。右下白小桂馬かかりにいきなりカタツキして(osama流)、模様作戦で臨んだ。その後白にあまされて苦戦となったが、中盤から左辺の白石を追いかけて大激戦となった。白は途中でかわす道もあったと思うが、真向勝負で大石同士の攻め合いの形になった。ただ、黒はここはセキになっても右上の封鎖に回れば勝ちになる。 実戦は白3が悪手で黒10まで白のダメが一気に詰まって黒勝ちになった。今AIを利用して研究しても難解すぎて結論が出せないが、白1ぶつかりでは白に良い図ができず、2線に下がる方が粘りがあったようだ。 実戦図1 3回戦の相手は元院生でトップ選手になったTさん。彼にすれば落とせない対戦で固くなったのかも知れない。私の白番で中盤までかなり打ちやすい碁形になった。上辺黒の2から8までは、右も左も地にしようするかなり頑張った手。白の確定地が多く、黒は上辺と左辺が兄弟喧嘩になる意味があって大きくはまとまりにくいので、優勢を意識した。紛れずに逃げ切るにはどうしたらいいか考えた末、今から見ると信じられない手を選択した。 実戦図2 白1とはよほど震えたと思う。少なくとも大桂馬には打つべきだった。ただこれでも黒はまとめにくいと思っていた。ここで、予想を超えた手を打たれた。 実戦図3 黒1から3がTさんらしい力強い手で、全く想定外だった。 実戦図4 白1には以下の狙いだと思うが、これでも白は十分戦えた。 参考図1 参考図2 実戦は白1と受け、黒10まで黒は目一杯の形。まだ少し白が良いようだが完全に流れを失った。さらに損を重ねて6.5目負け。悔いの残る一局となった。実戦図5
Nov 23, 2018
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今回は2005年アマ選手権から。 以下は私の白番で黒は東京の強豪Aさん。この時はそう思わなかったが、振り返ると布石がこれほど上手く打てた碁は珍しい。白1から3はオリジナルでなく、プロの碁から学んだ手だが、以前からこの局面が出たら打ちたいと思っていた手。この辺りから白がリードしたようだ。白3に黒がその上にオサエなら、右側からコスミツケの予定。白5では上のオサエが本手だが、上辺を利かして援軍ができたので強く打った。 実戦図1 以下のカタツキの時点で、AIの検討ではすでに勝勢。ヨセも頑張り逃げ切った。 実戦図2 次の碁は私の白番で、黒は招待のIさん。左下で黒に誤算があったようで黒が苦しくなった。白1で4にかけてシボリでもやれそうだが、白1から勢いで一気に勝機を掴んだ。Iさんには学生時代に知り合いのつてで押しかけて教えてもらったこともあり、ずいぶんお世話になった恩人の一人だ。かつては3子で教わったが、公式戦初対戦で大金星となった。 実戦図3 次も。私の白番。黒はかつての学生王者Kさん。黒1・3がKさんらしいカライ手だが、さすがに遅れたと思う。白4から6と中を厚く打ち、白10とのぞんだ。 実戦図4 左下で競り合いになり、黒1から劫になった。実戦図5 振りかかわりになったが、白がリードを維持していた。ところが、ここからどんどん甘くなってしまった。 実戦図6 ここでは逆転され黒が勝勢となっていたが、白1から3が勝負手。黒4が悪手で1子逃げて右側で単独で生きれば黒勝ちだった。白13まで黒に活路がなく、一気に逆転となった。 実戦図7 アマ主要棋戦で2度目のベスト8となったが、4回戦では定石にシチョウ条件があるのを忘れて大損し敗戦。かなり舞い上がっていたと思う。
Nov 23, 2018
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ネットニュースを見ていて、孫子の兵法「千里を行きて労せざる者は、無人の地を行けばなり」という言葉を知った。ほとんどのラーメン屋が美味しさを追求する中で、唯一と言っていい美味しさを売りにしない「二郎」というラーメン屋が一人勝ちしているという記事の中で出て来た名言だ。なるほど、なるほど。「まずい!」というCMで大ヒットした青汁みたな物だろうか?要するに敵の薄い場所を進むことこそが将軍の能力であるという意味の言葉らしい。 先日、週刊碁を見ていてグッと来た記事がある。それは、広瀬プロが新人王タイトルを獲得した記事の中で、多くのプロがAIを利用をして勉強している中で中部の大竹プロだけが一切AIに見向きもせず、囲碁はAIではなく「囲碁は愛だ」と言っているという記事だ。実は、彼は私の以前の記事にも登場している https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/201405060000/comment/write/#comment 素晴らしい!これぞプロ!かつて、プロの価値は勝つことが一番の価値であったが、その中でも、カミソリ坂田・二枚腰林海峰・美学大竹・殺し屋加藤・コンピューター石田・ロマンの武宮・地下鉄光一、ボヤキのチクン、ハレンチ秀行など、無人の地を行く者が碁界を制してきた。ただ、これからは、何が棋士の価値になるかも不透明な混沌とした時代である。かつて私のよく知っているインストラクターT氏は、某国大使館夫人から寵愛され、高級外車をポンとプレゼントされたと聞いた。まさに、実力でトップにならなくてもインストラクターのトップになったのである。 愛の大竹が碁界を制する日が必ず来ると期待する。 蛇足 無人の地を行くと言えば今年は、二刀流大谷選手。何度も聞いたのがこ実況。「イッツ ゴーン! ビッグフライ オオタニサ~ン!」 ゴーンと言えばオオタニサンでしたが、ここに来て本家日産のゴーンさんが来ました。ゴーンさんも塀の向うへゴーン!
Nov 23, 2018
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実は、検討の過程で前回の碁の左上でお互い読み違えがあったのを22年ぶりに発見した。 実戦では、以下白1に黒2と受けたのが大悪手で2線に普通につげば黒がはっきり良かった。以下の白3からさらにもう一つタケフも利くが黒地が大きい。白3で良い手があった。実戦図1 以下の白3とこすむ手が成立した。黒4には白5で一手寄せ劫になる。 参考図1 以下のコースだと上方がセキになって、下方が崩れで白勝ちになる。実戦でも1の手は考えた覚えがあるが、白7をうっかりしたと思う。参考図2
Nov 20, 2018
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1996年のアマ十傑戦全国大会から。この一局は、3回戦敗退者8人で行われる9・10位を決める順位戦の1試合目。相手のTさんは、同じ県の出身で一つ年上。すでに中学のころに県大会で入賞するなど、憧れの存在だった。 私が彼に初めて会ったのは、中学2年の時だった。少年少女囲碁大会が始まる前年のことで、初めて県大会が開かれた。会場にいるほとんどが学校の先生で、参加者は小学生が多分2人、中学生が3~4人だったと思う。有名人の彼に対して、私は碁を覚えてまだ1年くらいだった。精一杯戦ったが当然全く勝負にならず、同じ年ごろでとんでもなく強い人がいることに驚いた。誰かが彼に聞いた。「手ごたえはどうだった?」。たぶん、大会前に結構強いのがいるよと吹き込まれていたのだろう。彼は、「もっと強いと思ったのに」と残念そうに答えていた。私は、自分が不甲斐なく彼に申し訳ない気持ちとともに、いつかは追いつきたいと決意した。 「ひかるの碁」で、ひかるが初めて自分の力で塔矢と対戦して打ちのめされ、塔矢はひかるのふがいなさに怒り、ひかるはいつか塔矢に追いつくことを誓うという名場面があるが、それを見てあの時の記憶が蘇った。ところで、彼はプロ試験を受けていたこともあり、おそらくひかるの碁に登場する遠方から電車で試験を受けに来る体格の良い男性のモデルだと思う。 その後も、常に前を行った彼との高校時代以来の久々の対局だった。 私の白番の碁。以下、白1に黒2が好手で左上が黒攻め合い勝ち。読み違いがあり悲観してしまったが、締め付けが利くので、まだまだこれからの碁だったようだ。実戦図1 以下黒1に白2が大悪手で黒3と守られて息が切れてしまった。白2で3の左に切っていれば、黒があちこち薄くまだチャンスがあったようだ。この年、組み合わせに恵まれたが振り返るとどの碁も手が伸びずかなり内容が悪い。迷いが多かった時期だった。せっかくのTさんとの対局で不本意な内容になってしまったのが心残りだが、漫画のようには上手くいかないのが現実だ、 実戦図2参考図
Nov 18, 2018
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某県のトップ選手だったIさん。いつも歯が立たず完敗していたが、特に序盤の私の手を強く批判される事が多く、実際負けるのでそう言われて私もいつも序盤で悪くしていると思っていた。特に、この碁はひどく打ちのめされた思いで、強く印象に残っている。 1996年の対局で私の白番の碁。以下の黒1に対し白2とかけたが、出切られて乱戦になり押し切られてしまった。Iさんには、白2が打ち過ぎと指摘され納得した。 実戦図1 第2案として考えていた以下参考図白2を提案したが、そんな大して黒地が望めない所に打ち込む手は意味のない手で上辺桂馬くらいが相場と指摘された。これも納得した。これらの指摘はその後、自分の碁に大きな影響を与えたと思うが、あれ以来久々にこの碁を見ると、これらの手は十分あり得ると思える。天頂で検討してみた。 参考図 黒1の場面で天頂が40万回以上探索して推奨した手は参考図の白2で互角の評価。次に上辺ツケ。実戦のかけは探索数が少なく評価困難。 次に、実戦図黒5まで出切られた場面で50万回以上探索して推奨された白の手は左辺抑えか伸びでいずれもほぼ互角の評価だった。 結局この碁の敗因は、この後のねじり合いでの読み負けだった。 機械のおかげと言うのはシャクだが、長年モヤモヤしていたものが晴れた気がする。それともしかすると、長年教科書的で正しいとされていた打ち方というのは、イコール単に声の大きな人が主張した打ち方という事なのではないかとも思える。
Nov 17, 2018
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中部総本部で行われていた11人編成の職域対抗戦での1998年の主将戦の一局。私の白番、黒は後に全国トップクラスの打ち手になったMさん。 以下の局面で白2がいい手だったよう。黒は4の一路下にかける手もあったかも知れないが難解。白4までとなって白が成功した。 実戦図1 進んで以下の白1から3が勝負手。白7となっては上下の黒が薄くなり一気に白が勝勢となった。白3に対して黒5に受けるしかなかったと思うが、白が上の方を切って非常に難しい戦いになる。当時どこまで読めていたのか覚えがないが、白3の迫力には自分でも驚く。あまりの愚手に黒は気合に押されたようだ。 実戦図2
Nov 14, 2018
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以前は後ろを振り返るなんてしなかったが、昨年来自分の打った碁を振り返る作業を少しずつしている。心境の変化の理由は一つではないが、一番大きな理由は自宅のパソコンで使用できる囲碁AIの登場だ。自分の碁を検討していて、従来気づかなかった事がいろいろと分かって来た。特に、形勢を悪くしたと思っていた場所がそうでもなく、中盤以降の意外な所に勝負が潜んでいて勉強になることが多い。以前記事にした以下の局面の検討をしてみた。 参考 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/200602250000/この局面でプロやアマ強豪何人かの意見では、N8曲がりを確信的に押す人、いろいろあり得ると言う人、以下の黒1と打ち黒が良いとの意見、様々だった。この場面で天頂が30万回探索して推奨した手は以下黒1で評価値はほぼ互角の51。N8の曲がりは500回ほどの探索で評価値47で止まってしまい、十分な評価は困難だった。参考図1 ただ、以下の図になっても黒の評価値は49で、ほぼ互角の判断。やはりどちらが良いか判定するのは難しいようだ。参考図2上記黒1曲りのような手は千両曲がりと言われ教科書的な手である。AIの登場で従来の教科書的な手の多くが絶対的に正しい手ではない事や、プロ棋士の打つ手が常に正解ではない事が分かった。そして、碁は人間が正解に迫るのは途方もないことで、自由に打って良いこと、ある意味芸術に近い存在であることを実感する事ができた ただ、AIの推奨する手がどれほど正しいかもまだ分からない。皮肉にも東洋囲碁などネットの強豪同士の対戦では、序盤は星と三々入りの似た碁形ばかりになって異様な感じがするが、とにかく勝たねばならぬプロならではの現象なのだろう。 すっかり忘れていたが、以前に良い碁を打つより生きた証として魂の入った碁を打ちたいと書いたのを発見した。参考 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/200602110000/そうは書きつつも、どこかで「プロにも評価されるような碁を打ちたい。」とか「アマチュアの打った碁の価値は低い」と言うような思いがあった。素人でも、音楽の好きな人の集まりや教室単位で演奏会を開いたり、絵画の個展を開いたり画集を出すことは不思議でも何でもない。評価のため以上に、表現したい・活動の証としたいのが目的であろうし、また技術は未熟でも作者の思いに価値がある場合もあると思う。私も将来自分の棋譜集みたいな物を形にしたいという気持ちも出てきて、研究もしつつ整理している。
Nov 11, 2018
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大学に入学して初めて参加した団体戦の一局から。白番の碁で黒は当時黄金時代を築いていた東北大のエースTさん。左下で白が定石手順を間違えてしまったのだが、意外にそれほど悪くなっていないようだ。上辺の白5・7・9辺りはすいぶんのんびりした打ち方で、今なら絶対打たないと思うのだが、天頂で検討すると悪い手と言えず、白19の時点では白が少し良いようだ。碁は本当に不思議だ 実戦図1 局面は進んで、以下白1が決め手になるはずの手。 実戦図2 ところが、以下の進行は何とも甘い打ち方をしたものだ。白3では4に引いて黒苦しいし、白5で6に下がって頑張ってしまうのもあった。ただ碁は細かく、この後ヨセで頑張って1.5目勝ちとなった。Tさんはこの時6勝1敗で、全勝賞を妨げる大金星となった。いきなり定石を間違えたり、甘い手が出たりして面食らったと思うが、私も下手なりに必死に打っていたと思う。 実戦図3 Tさんは、すぐに卒業したのでこの後学生時代に打つ機会はなかったが、15年以上経ち、再び対戦するようになった。以下、その内の一局、2003年のアマ十傑戦県大会の対戦。私の黒番の碁。Tさんとの対戦では、他の人以上に気合が入った。 黒1・3が工夫した手順。白4から出切りには上から当てて捨てるくらいの相場だったが、黒7は暴走気味の頑張り。 実戦図4 以下のように進み。 実戦図5 下辺は劫になった。ほぼ黒取られだが、劫仕掛けをにらみ左辺で得し上辺9に回りまだまだいい勝負。難しい戦いが続いた。 2000年から2003年までに3局打ちいつも難しい碁になり2勝1敗の記録が残っているが、残念な事にその後Tさんはぱったり出て来なくなってしまった。実戦図6
Nov 11, 2018
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2002年の十傑戦の対戦から。その後アマ名人戦に移行した十傑戦は10位まで入賞となる人気のある棋戦で、当時は一日2局ずつ3日間のゆったりしたスケジュールで一局に十分時間をかけられた。このころは日本棋院での対局だったが、さらに以前は宿泊するホテルでの対局で、前夜祭があったり、大局間の余裕があり優雅な大会だった。名物観戦記者だった田村竜騎兵さんが司会をしていた。 私の白番。黒は中国からの留学生Sさん。2年前にも対戦し、終盤に乱れて敗れており今回は雪辱戦。中国の留学生では王劭さんが2004年の十傑戦で優勝し衝撃を与えた。 以下白1に対し黒2、AI風の打ち方が出ているのが面白い。 実戦図1 ジリ貧になった前回の反省を生かし、右下黒ノゾキに対し白1と反発した。 実戦図2 以下白1から3が工夫の手。白3で直接急所に行くのはその上に付けられて面白くないと思い、白3から次に切る手と左辺踏込みを見た。 実戦図3 以下黒も2と反発し、気合がぶつかり面白い変化になった。白15と中央を広げやや優勢になったようだ。ヨセも頑張り2.5目勝ちで雪辱を果たした。実戦図4
Nov 9, 2018
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2010年の本因坊戦全国大会の予選から。当時、本因坊戦はシード選手以外は予選があり、一勝すれば勝ち抜いてトーナメントに進み、2連敗で予選落ちというシステムだった。これだと、4人中3人が予選通過となるので、慌ただしくなるばかりで意味が乏しく、さらに予選落ちするとせっかく県代表になりながらトーナメントの記録にも残らないという悲惨な状況になっていた。今は一人3局ずつスイス式リーグ戦形式で打ち3勝者だけがベスト8に上がるシステムになっているようだ。全員が3局打てるよう配慮したシステムだが、負けた後に打つのは辛いのではないだろうか。 黒が私、白は力戦家でこのころ上位進出の常連だったMさん。序盤白が稼ぎ過ぎたようで、以下黒1となって黒リード。 実戦図1 下辺での戦いが一段落した以下の局面。黒はこの後、上から当てて押し切っても良さそうだが、何か一仕事したいと思い次の手をひねり出した。 実戦図2 黒1が工夫の手。上に抑えると切り違えて味がつく。隅に手が残れば、上の方の1子は捨てて押し切る予定。 実戦図3 以下白3まで味をつけてから黒4から動き出した。黒10となっては中央の白一団も弱いので何かにはなりそう。 実戦図4 その後左辺は劫になったが、下図のように左下を蹂躙する分かれとなり黒勝勢となった。左上も劫になったが、この劫は譲っても黒が勝ちの形勢になっている。ところが、白1の劫立てに対し少し請けようとした黒2が大悪手だった。 実戦図5 実は右下が手になっているのだが、お互いに気づかずヨセが続いた。以下白1がみすみすチャンスを逃す手で、中の方に手を入れれば手無しになる所だった。ところが、1目儲けようと黒2と受け白3でついにここが手になってしまった。実は、白1も不要で直接白3に打っていれば手になっている。どうしても、右下1線下がりと下辺1線下がりの両方が利いて、隅の白が生きてしまうのだ。何とも不思議な幕切れとなったが、お互い秒読みの中のドラマであった。 この後、次の碁を勝ち何とか予選を通過し、さらにトーナメントの3回戦で再びMさんと当たるという信じられないめぐり合わせとなったが、ここでは完敗した。実戦図6
Nov 4, 2018
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2000年の団体戦、私の黒番、白は埼玉の強豪Kさん。白から中央を桂馬桂馬であおられて気分が悪い局面。何か打開する手はないかと考えて絞り出した。 実戦図1 以下黒1が工夫の手。 実戦図2 白2なら黒3から切る予定。 参考図3 実戦は白2から以下のようになり主導権を握り、勝機を掴んだ。 黒1が好手かどうか分からないが、気持ちの入った手だったと思う。 実戦図3
Nov 3, 2018
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観戦記を見ての感想 AIの進化によって盤上の世界は激動しているが、この1年くらい新聞の観戦記のスタイルも以前とずいぶん変化した。「ここでAIの評価は」などというAI絡みの内容が必ずと言っていいほど見られ、解説者のコメントとAIの評価の扱いのバランスに苦労している様子が見える。観戦記者もAI時代の観戦記のスタイルを模索中なのだと思う。 名人戦第4局の観戦記で気になることがあった。以下の局面で黒1に対し井山名人が白2と切った。実戦のような形になった後に白が上辺曲がり・その右黒おさえになった時に1線のアテの利きが命綱になる展開を見ての白2である。この手に関して観戦記では、「名人は38分苦しんで白48(図の白2)を発見。AIは瞬時に白48を探し当てていた~」と書いている。実戦図 まず、こういう手所の読みはむしろAIは苦手なので「瞬時に~」は意外だった。手持ちの天頂で調べると白2は候補には上がって来るが、かなり探索しても上位には来ず、やはり先までは読めていない様子だ。おそらく、性能の良いコンピューターでのみ使えるAIの評価なのだろう。 そしてもう一つ、碁を知らない人が「プロは打った碁を並べ直せて凄い。」と少し碁を覚えればできる事に感心したり、初級者がNHK杯の聞き手が本当に分からない事を聞いていると思っていたりすることがあるが、観戦記者もプロの能力を知らないのか?とひっかかった(知ってて名人を貶めるような事を書いているならもっとけしからんが)。白2のような手はプロは100%一瞬で気づき候補になっている。ただ、黒をはっきり生かしてしまうのと劫材を一個減らすのが辛いのである。38分はこの手の発見に費やしたのではなく、その後の変化の読みと形勢判断に費やしたのである。 残念ながら勝負に関しては人類はAIに抜かれてしまったが、AIなら膨大なシミュレーションが必要な所で直感的に急所を見抜く人間・そしてプロの能力は凄いのだ。観戦記では、それはちゃんと伝えてほしい。
Oct 30, 2018
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2002年の団体戦の対局から。黒が私、白は神奈川の古豪Sさん。 黒が相当に地を稼いでリードしていて、以下黒1から手をつけた場面。白がもし外から抑えて受ければ簡単に生きが残るので、天元付近の黒石を連れ戻すくらいで十分な形勢。白ははね出しから全取りに来た。凄い気合にビックリしたが、相当に味がついたので、上辺から中央である程度サバけそうと思っていた。黒は普通に上辺から2子をアテてカケという筋でも悪くなかったようだが、一工夫した。 実戦図1 以下実戦は黒1。この石自体が急所に来ている上に、白が伸びれば突き出すし、曲がりならハネて絞れるので楽な凌ぎだと思っていた。ところが・・・。 実戦図2 以下実戦図黒5まで突き出した時に白6がSさんらしい強烈な手。 実戦図3 以下黒1から3で楽にサバキと思った瞬間、白4がまさかの強手で難しくなった。慎重に打つなら、上辺の2本利きを残して、黒1で右側ハネまたは単に左辺白の頭にツケるなどの手もあった。そして黒15が調子に乗った大悪手。ここは中央上押しまたはカケツギくらいで、上辺の一団を捨てて打てば十分だった。 実戦図4 上辺の石を引っ張り出した上に結局全部取られてしまい、痛恨の逆転負けとなった。実戦図5次回予告以下の局面で黒番。黒の面白みのない局面だが、打開したい。局面図
Oct 27, 2018
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2008年の団体戦の対局から。白が私、黒は若いころから活躍していたKさん。この2年前の初対戦で完敗し、これは雪辱戦。 以下の局面で、白1の手筋で左辺決めてから白7が勝負手。この手で8の点に打っていてもいい勝負のようだが、早碁の勢いで下辺を稼ぎ凌ぎ勝負に出た。 実戦図1 以下の局面となり、黒1からここの目を取りに来た所でクライマックス。 実戦図2 ここで白1がこの1手で、決め手となった。 実戦図3 黒から取る手がなく、以下のような変化になり白が勝勢となった。相手チーム監督の原田実さんから褒められた思い出の一局。実戦図4 次回予告 黒1に対し、白は2から全取りに来た勝負所。稼ぎまくっている黒は、何か手にすれば勝ちが見えるが。テーマ図
Oct 26, 2018
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当ブログに登場した少年少女が後に有名になった記事を何度か書いているが、実はとびきりの人をまだ紹介していなかった。以下のシリーズ中に登場する柯君である。 浙江省囲碁交流会シリーズ(6回 https://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/200808260000/ 当時11歳の可愛く少し小太りの柯君が、現在世界最強とも言われる中国の柯潔(かけつ)9段である。残念ながらニアミスで対局できなかったが、私が対局相手に渡した名刺を羨ましがって、私の所にもらいに来たのが柯君だった。今も持っているだろうか?(まさかね) その柯君と打ったのがOさん。すでにプロ棋士だった柯君に大善戦し終盤まで優勢だったらしい。夜の懇親会の席で「彼はまだ甘い」などとOさんらしい大胆な発言が飛び出したのだが、引率の陳臨新9段が「柯君は強い。」と即座に否定していた。調子に乗るとおそろしく強くなるOさんに対し、柯君が固くなったのだろう。 私の相手は、胡君。柯君の方が強かったようだが学年が一つの上の胡君が上位で打っていたようだ。とは言ってももちろん彼も天才少年。私の黒番。変則布石の出足。天頂で検討すると、多くの場合驚くほど変則布石の評価が低いのだが、この場合は左下の形との連携が面白く黒悪くないようだ。少年がどう対処してくるか興味があったと思う。 実戦図1 黒がリードした以下の局面。中央一間飛びの所から下に向かってさらに一間飛びすればいい感じだったのだが、黒1から3が悪い癖。寄りが戻って得にならなかった。 実戦図2 それでも黒リードの局面、白1の気合にびっくりした。 実戦図3 さらに以下白1が最後の勝負手。 実戦図4 胡君の連発する勝負手を何んと凌いで勝利が見えた次の瞬間、痛恨の手拍子が出てしまった。以下の黒2で、3に打てば何もなかったのだが黒2が大失着で敗着。白3が見事な手筋で劫になってしまった。 胡君は人懐こくて元気があって、少し大人しい感じの柯君とは対照的だった。彼はプロになっていないと思っていたのだが、最近調べると中国棋院に胡鈺函五段という棋士がいる。函館みたいな名前だなと思った記憶があるので間違いないだろう。データベースで棋譜を拝見すると、この碁のように序盤辛い打ち方で中盤から強烈な殴り込みで乱戦になっている碁が多い。柯君には一歩遅れたが、その個性的な碁で世界のトップに躍り出るのを期待したい。 実戦図5 次回予告 以下の局面。黒1から中央白大石の目を奪い、白の凌ぎが勝負の所。次の白の一手は?
Oct 21, 2018
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はっきりした記録がないが、おそらく大学時代の団体戦。黒が私。白は少し年下のHさん。 序盤ひどく甘くなってしまったが、中盤白のやり過ぎをとがめて右下白を取って逆転した。その後も決め手を逃していたが、いよいよクライマックス。左側の大石同士が攻め合いになっているが、ここはセキになればセキ崩れで黒勝ちになるので、黒に余裕がある局面。局面図 以下黒1が一番確実な手で黒の楽なヨセ劫にしかならない。 参考図 実戦図黒1が大悪手。この後さらに時間に追われてセキ崩れを忘れてしまい、内駄目を詰める世紀の大チョンボで、出入り200目近い損をして人生最大の大逆転負けを喫した。実戦図 Hさんは、極端に地に辛い独特の棋風で、高校時代から華々しい活躍をしていたスター選手の一人だった。その後、名前を見ないがどうしているのだろう。
Oct 20, 2018
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先日竜星戦(おそらく再放送)を見ていた所、秒読みで王メイエン先生が28秒を読まれた時に石を落してしまい、時間内に打てなくなってしまった。そこで秒読みはストップし34秒くらいのところで着手となった。これどうなるの?と思ったが、聞き手の大澤プロが言うには、落とした時は着手点を指で指せばOKなのだと言う。見てる方もこれで終わっては面白くないので、なるほどと思ったが、国際戦では通用しないようだ。 昔公開対局で梶原先生に教えてもらったことがあるのだが、秒読み係が「28秒、お打ちください。」と言ってもなかなか先生打たない。再度「先生お打ちください。」と催促すると「何~。もう時間ないのか?ちゃんと読め~。」などと何故か秒読み係が怒られつつ、常に35秒くらいで打っていたが、これは置き碁だし天下の梶原先生だから、もちろんOKだ。こちらは係とのやりとりが面白くてたまらなかった。 かつてアマの全国大会では負けた選手が自分の腕時計で秒読みするのが慣例で、この時は相当サービスがあった。ただ、今は時計を使うのでトラブルは多い。勝っている碁で時計を押したつもりが反応せず時間切れというケースもあり、可哀そうで見るに堪えない事もある。 秒読み絡みで地獄のような経験をしたのは、今は亡きアマ最強戦。相手は若手売り出し中で、この大会で初優勝したKさん。私の白番の碁。この2年前にも支部対抗戦の決勝戦でKさんと打ったことがあり、完全に舞い上がった私の無残なヘボ碁を週刊碁で晒されてしまい、しばらく落ち込んだことがある。今回は、負けても悔いのない碁を打とうを気合が入っていた。 白1に黒2が強手。この手でその右側に引いて白1子かかえになる形は打たれていたが、2は初めて見た。5の手筋から17までこの時は一本取られたのかかなと思っていたが、今研究すると良い勝負のようだ。 実戦図1 上辺で乱戦となり、以下のような局面。白1から3は劫材作りの手。白7と1子担ぎ出した。先手で黒を目2つにすれば白優勢だが黒8と反発し大きな劫になった。お互い若く、何んともすごい気合だ。実戦図2 以下のような振り替わりになったが、ここでもいい勝負のようだ。ただ、白がかなり厚く、この後多いにチャンスがあったのだが、力の差が出て打ちまわされて結局押し切られた。 負けは力量差で仕方ないのだが、この局面の後地獄を体験することになった。スポーツ新聞主催で紙面や賞金は派手だったが、肝心の運営経費の節減で日本棋院の3階の1/3のスペースで行われていた。そのため、碁盤の隙間に碁笥と対局時計が入るのが一杯のキチキチの環境だった。とどうなるか?秒読みになってとんでもない事態になった。どの音が自分の時計の音なのかさっぱり分からないのだ。常に近所でピーピー鳴っている状態で、そればかり気になって全然集中できず、ほとんど半分くらいの時間で打つことになった。苦い思い出だ。実戦図3
Oct 14, 2018
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