M 先生のこと
M先生はたいへん大人しい碁、良く言うとケレン味のない碁だった。かつて記事にした K先生 2
そのM先生、K先生と連日打っていたのだが、この時は棋風と反対にひどく熱くなって怒っていることが多かった。K先生が帰っても、「K先生はめちゃくちゃ打ってくる」と怒っていた。ひたすら頭を下げてくるM先生に対しては、ジワジワ攻めていけば判定勝ちできるのだが、何しろK先生、それができない性分である。狭いガードを無理やりこじ開けてアッパーカットをぶち込まないと気が済まないのだ。無理な打ちこみや強引な戦いを仕掛けるのだが、結局戦い慣れていないM先生が潰されてしまう。M先生にすれば、予定の青写真 が崩されることが我慢できなかったに違いない。
さらにM先生が熱くなるのは、K先生が逆ヨセを好んで打ったこと。これも予定が崩れるのが我慢ならなかったのか、逆ヨセを打たれると「私の権利の所をなんで打つのかね」と延々とぼやいていた。それを知っているので、私がM先生と打つ時は逆ヨセを打たないようにしていた。
一般に苦しい碁を何んとかするには逆ヨセは有効な手段の一つだけれど、この様子を見ていてそれは心理的な攻めにもなるからだと実感した。
当時、M先生とK先生は相性が悪いのによく打つなと思っていたのだが、今思うとそれは見当違いだったと思う。実は、二人は最高に相性が良かったのだ。自分の青写真を壊されるM先生、ガードを固める相手をこじ開けるK先生、それが実は面白かったから連日打っていたに違いない。碁打ちの相性は男女の仲と同じように、単純ではないのだ。
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