人間仁科のブログ・八重山見聞録外伝

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 一切の光を放たない聖者の目をした乞食たちにインドで出遭って
からパキスタンを経由してイランに入国し、乞食の雰囲気が一変し
ていることに俺はすぐに気がついた。イスラム圏の乞食は明らかに
ヒンドゥー圏の乞食とは違うのである。パキスタンもイスラム圏では
あるが、1947年に独立するまではヒンドゥー・ムスリム入り混じって
いたし、インドとパキスタン両国は民族的には同族みたいなものであ
るからパキスタンの乞食物乞いは純粋なイスラム圏のそれとは少し
趣を異にしているのだ。それゆえかパキスタンでは特に差異に気付
かなかったのであるが、イランの乞食はその差異が際立っていたの

 で、どう違うか。一口に言えば、のである。
 明るい乞食というのは言葉足らずも甚だしいかも知れないが、俺の
第一印象は『なんか、此処の乞食さんたち随分と明るいな』だったの
である。要するに表情があるわけで、他の地域ではほぼ例外なく無
表情な乞食が多数派であり、あとは哀れっぽい感じでくる人が少しと、
レアケースだが怒りっぽいノリでくる人がいるくらいなのだが、イラン
は違うのである。
 眼と眼が合うと微笑みかけられ、その笑う顔がとてもいいので、つい
施しをあげると『旦那ぁ、好い方だ。うん。良い方だよ。旦那にはきっと
いいことあるぜ』みたいな感じで頷いてみせたりするからこっちも何か

『いやあ、なんか今日は朝から善い行いしっちゃた気がするなあ』みた
いな。
 で、日本へ戻ってから色々と調べてみてわかったのだが、イスラム
世界では【喜捨】という価値観および習俗が成立しており、富める者は
貧しき者たちへ喜捨を行わねばならず、イスラム原理主義の国イラン

島国の乞食みたいに殴る蹴るの暴行を受けて死ぬ目に遭う心配や
ファーストフード店のゴミ箱を漁ったりしないでいいのだ。なれば人とし
ての尊厳を保ったままイランの乞食は乞食でいられるわけで、極東の
島国からやってきた旅行者に快い笑みを向けられるのであろう。
 イランとかイスラムって日本じゃ随分と評判悪いみたいだけど、乞食
がいい顔しているってすごく重要なことだと思うのは俺だけだろうか。
(つづく)


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Last updated  2006.01.04 20:59:55
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