人間仁科のブログ・八重山見聞録外伝

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カテゴリ: 旅ネタ
 白煙を噴出し続けた彼らだったが、実は良い人たちである。
飯の調達方法もろくに考えず、乗車二日目からひもじい思い
でいた俺に三度三度の飯を食わせてくれたからだ。
 彼らは列車の中で米を炊く。実際に炊くのは中国人専用車
両専任の中国人車掌であるが、米や漬物なんかを中国人乗
客らが持ち寄り、それを車掌が石炭ストーブに火をおこして
調理してくれるのである。だが中国人専用車両に調理専用の
コンパートメントなどはなくて、この火を使った一連の調理が
どこで行われるのかと言うと当然それは車掌室である。

差し出される。飯の上には見たことのない漬物が一握り分
のっている。それだけである。実に質素な飯であるわけだが、
皆でストーブを囲み、この漬物丼とも言うべきご飯をいただくと
これが滅茶苦茶美味いのである。ちょっと信じられないぐらい
美味い。はっきり言えばただの漬物ご飯であるのだが、シベ
リア鉄道の車掌室で炊いた御飯は只の御飯ではないのだ。
 ここまでなら結構良い話だと思う。車掌室で火をおこすのは
現代日本なら反則だろうが、シベリア鉄道の、それも中国人
専用車両においては如何ほどのことでもないので、やはり
概ね良い話と言えると思う。
 だがしかし、本稿のテーマはハードな旅であり、ここは煙害

展開へと突き進むことになる。
 そう。彼らは飯を食いながらでも喫煙する。一人だけ例外的
に喫煙するとかではない。飯を喰っている最中に皆で煙草を
ふかすのだ。半分ほど漬物丼をかき込んだあたりで箸を置き、
おもむろに煙草に火をつける。一度火を付けたからにはやはり

食う速度にさほど個人差はなく、だいたい揃って吸い始め、談
笑し、だいたい揃って吸い終わり、そしてまた残りの半分の飯
をいただくのである。
 だが俺は極めて良識的で模範的生活規範に則(のっと)って
生きてきた日本人であるから飯を食いながら煙草に火をつけ
たりはしないし、ニコチンタールにまみれた舌で飯を食うのは
どう考えても合理的ではない。それに飯を食うときぐらい白煙
から解放されてもいいだろうに、俺にはそんな些細な願いすら
叶えられないのだ。せっかくの美味い飯なのにやっぱり充満し
た煙草の煙にまみれて喰うより他なかったのである。
(to be continued)


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Last updated  2006.02.06 07:22:24
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