月臣邸

2005.10.13
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「黄泉さー、この頃めっちゃ痩せたよね」

きゅっ、と。
俺の腹を指で摘む新弥。

「うん、もしかして俺より細くなったんじゃない?」


むに、と無い肉を指で摘み、両手で俺の腹を掴むのは咲人。


「頬も痩せこけて来ちゃってるし、髪にもツヤ無くなっちゃってるし」


言って柩は、俺の頬と髪を優しく擦った。




なんでだろ

イライラする











マックでフライドポテトを食べながら、柩が聞いてきた?

「ふぇ? んー…そうかなあ」
「そーっしょ。だって、…ホラ」


油のついていない手を俺の目元まで持っていき、擦った。


「…すっげー隈。」












「ぁー…ホントだ。」

マックのトイレに駆け込み顔を確認してみると、ホントひっどい隈。
なんかもう顔にこびり付いてるのかってぐらい真っ黒くて。

なんでだろう。

イライラする。


イライラして止まらない




















「よっしゃー、今日も元気に練習するぞー」

スタジオの中、朝一で入りをした俺は元気にその場を仕切る。


イライラする。


「…黄泉…また痩せてる…」

心配そうな声をして、咲人が俺の体を抱きしめた。



「もしかして、吐いたの?」


「……うん」


心配は出来るだけさせたくないけど
バカ正直な俺の口は、イエスを答えてしまった。


「バッ…………はぁ」

何かを叫ぼうとした咲人は、やめて溜息を零す。
俺の頭にポンと手を乗せ、ジッと俺を見つめた。


「…黄泉、寝てないでしょ」
「ぇ」
「昨日も一昨日も…1ヶ月くらい、あんまり寝てないんじゃない?」




そんなことないよ?

そりゃ、最近具合悪くてぶっ倒れたりするけどさ

なんで皆、そんなに俺に気を遣ってるみたいなの?



大丈夫だよ

イライラする

イライラ、する。






「…墓参り行こう」

新弥が、ポソリと呟いた。




誰のお墓?

















「あー、そっか。全部瑠樺さんの所為だったんだね。」

ポツリと呟き、俺は悔しそうに顔を歪めた。

「酷いよお、瑠樺さんの所為で俺の顔に隈が出来ちゃったじゃん。しかもこんなに痩せちゃって。俺、咲人より痩せたかもよ?」

ザッ、ザッと土を掘った。


墓前で

俺は君を探してる


「あーあー、眠れないしご飯吐いちゃうし。どーしてくれんの、瑠樺さん」



見つけた

君の、骨。





「…一ヶ月前だ」

丁度一ヶ月前から


瑠樺さんが死んで

俺はイライラして

具合悪くなって

眠れなくなって

ご飯あんまり食べれなくなって

こんなにも痩せて

こんなにも弱くなった



「…瑠樺さぁん」


弱弱しくて細い骨。
こんな骨であの大きな瑠樺さんが出来ていたんだ、って想うと少し笑える。


「帰ってきてよぉ」


ペタン、と地べたに座り込んだ。


「帰ってきてくれないと、俺他の人といっぱいエッチしちゃうよ。俺モテるから。セックス狂になって、瑠樺さんのことなんかすぐ忘れちゃうから」


そんなの

俺が辛いだけなのに







「帰ってきて…………」
















墓前には

何者かに荒らされたかのように、

狩野の遺骨が掘り出されていた。



横には儚い少年のような体の、青年が倒れていた



狩野の遺骨を抱きしめるように

安らかに眠っていた。










Fin

誰も望んでないよね、こんなの。






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Last updated  2005.10.13 20:52:57
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