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2006.11.05
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東京公園

~新潮社、2006年~

 カメラマンを目指している大学三年生の僕―志田圭司は、広い意味でのアーティストを目指すヒロと同居している。
 僕は、東京の公園をいろいろと回って写真を撮っていた。小学二年生の頃に亡くなった母の形見のカメラで。母が撮っていたように―そして自分がはじめて自分の意志で撮った家族写真の影響もあり、家族の写真を撮りに。
 もちろん、写真を撮られるのに抵抗をもつ人々もいる。僕は、きちんと身分を証明し、自分が今までに撮ってきた写真を見せながら、誠実にお願いをするのだった。
 ある日、若い母親と二歳くらいの女の子を見つけた。素敵な二人だ、と思って遠目に何枚か写真を撮り、あらためて声をかけて写真を撮りたいと思ったとき、男に声をかけられた。それが、女性の夫の初島さんだった。
 その日は、まだ写真を撮らないでほしいと言う初島さんに、後日お願いを受ける。二人を尾行して、写真を撮ってほしいというのだった。
 それから、僕は女性と娘、百合香さんとかりんちゃんの写真を撮るようになった。しかし、百合香さんは、どうも僕に気付いているようだった。その推測が確信に変わってからも、僕は初島さんにお願いされて、二人の写真を撮る。撮影者と被写体の間の、独特の空気を感じながら。

 …と、本書の中の大きな筋を中心に紹介を書きましたが、いろいろと足りないので感想も交えながら続けましょう。

 本書の中の中心的な人物は、僕、ヒロさん、そして僕の幼なじみの富永さんの三人です。そして、僕より一足先に北海道から東京にきていた、血のつながらないお姉さん。北海道に残る、お父さんと新しいお母さん。お姉さんに紹介されたバイト先のマスター。初島さんのご家族。
 物語の最初の方で紹介される、ヒロさんにまつわるエピソードが素敵でした。中学生の頃、自分の勝手で、人に怪我をさせてしまったヒロさん。怪我をされた方のご家族は、ヒロさんに一つのことを課します。ヒロさんは、目盛りがマイナス100まである罪を犯した。その目盛りは、ヒロさんが社会復帰して、毎年年賀状と暑中見舞いを送れば減っていく、というのです。ヒロさんはその二つはもちろん、手紙も送りました。そして目盛りがゼロになったときに、ご家族は温かく迎えてくれたのです。
 そんなヒロさんが言う言葉も、印象的でした。昔はワルかったということを売り物にするような奴は最低だと。反省して「普通」になったといっても、それはやっと「普通」の人に追いついたにすぎない。自分が迷惑をかけた人々がどういう思いでいるのか考えているのか、そういう人たち全員に許してもらってお前はそこにいるのか、と。すごく印象に残るシーンでした。
 お母さんが入院することになって、お姉さんと北海道の実家に戻るときの話も、素敵でした。そこに描かれているのは、日常の風景です。再婚した理由。はじめて新しい家族に出会ったときの思い出。お酒を飲み、話して、DVDで映画を観る。「自分のために生きる」とか、「他人のために生きる」といったことを考える。何気ない日常ではありますが(僕たちにとっては、お母さんの病気のために、はじめて姉弟二人で飛行機に乗り、東京での生活から一時的に離れて実家に戻るという非日常でもあるわけですが)、このエピソードも、物語の後々まで生きてきます。
 僕は、初島さんの妻に、少しずつ惹かれていきます。それが、被写体としての魅力をもつ百合香さんへの好意なのか、恋のような感情なのか、うまくつかめないままに。富永さんからの「爆弾発言」で、少なからず考えにふける僕。初島さん一家のために僕がすることは、とても素敵でした。そこをフォローするヒロさんと富永さんもかっこよかったです。その後の、初島さん一家へのつきあい方についても、富永さんがとった行動、彼女が言う言葉がとても良かったです。富永さんの判断が、とても素敵なラストの1ページにつながっていくのでした。
 良い読書体験でした。





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Last updated  2006.11.05 10:39:40
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のぽねこ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) スパイシーチューリップさんへ コメント…
スパイシーチューリップ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) 流行りましたね!キラキラ系、あまり知ら…
のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 なにぶん…

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