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2008.10.27
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筒井康隆『アルファルファ作戦』


 表題作含めて9編の短編が収録されています。
 まずは、それぞれの簡単な内容紹介とコメントを。

ーーー
「アルファルファ作戦」 若者たちが去った後も地球に残っている老人たち。おれは養老院担当の職員として地球にやってきていた。任期切れが迫っている頃、町で火の手が上がり、巨大化したハチに乗ったクモ型人間が迫ってきた。老人たちは知恵をしぼり、ハチの習性を利用するためにアルファルファを巨大化させたり、勇気をもってクモ型人間に立ち向かう。
 この物語の中の一つの山は、「おれ」と老人ヘンリー・ブラウンが議論するところにあります。筒井さんの作品では、メッセージ性を感じる場合もどぎつい風刺や皮肉の中に感じられる場合が多いですが、本作ではソフトに、ストレートに考えさせられるように思います。
 ドタバタな描写もありますが、読後感も良く、良い物語でした。

「近所迷惑」 とつぜん時空間に歪みが生じた。友人の家は崖の上に立っていて、帰宅したら家の二階がなくなっていた。おれはタンスの中から砂漠に落ち、さらに外国を訪れたり、時間の歪みを感じることになる。


「慶安大変記」 高校生のおれの家の隣に、予備校「慶安予備校」ができた。おれは、姉の由井雪子、丸橋忠夫(二人は予備校生)、松平伊豆夫(徳川大学学生)の三角関係を利用して、自分の合格率を高める意味もあり、予備校生と大学生の争いを生じさせる。ところが、騒動の規模はますます大きくなっていく。
 江戸時代の「慶安の変」(1651年、由井正雪が中心に浪人たちを集め、幕府を倒そうとした事件)をネタにしています。筒井さんのこういう話も大好きになってきました。

「人口九千九百億」 地球の人口が9千9百億にふくれあがり、人々は薄っぺらくなったりと体も変形し、地表・海上がすべて何十階もある建物で覆われている…という設定の話。そこに、火星から人間がやってくるのですが…。

「公共伏魔殿」 公共放送に金など払うかと言っていたおれは、仕事の都合で放送局を訪れる。ところが、そこには秘密の地下室があり、そこでおれは恐ろしい情景を目の当たりにする…。
 個人的には、某公共放送が好きではないので(それでいて、時に横溝さん特集をしたり、昔は所ジョージさんの声の『アルフ』をやってたりするのがニクイです)、わくわくしながら読みました。なお、公共放送への私情を書き出すといろいろあれなので自粛します。

「旅」 刑罰に処された4人。一つの舞台の中に彼らの意識が織り込まれ、桃太郎の舞台で旅をする。旅に出る前の出来事の回想、メンバーへの怒り、憎しみ、恐れなど、彼らの意識が複雑に絡み合う。
 簡単に内容紹介をしようとするのが無茶でしたが、この作品も好きです。

「一万二千粒の錠剤」 老衰を防ぐ薬が、選ばれた120人に100粒ずつ渡された。120人の名前は公表されるが、しかし彼らは決して薬を他の人に渡してはならない。おれもその中の一人に選ばれてしまい、外で出会う人たちはもちろん、家族までもがその薬を狙い、おれを攻撃する。

「懲戒の部屋」 電車の中で、おれは痴漢の濡れ衣を着せられた。「ウーマン・リブ」、女性優位論者たちの勢力が強まっている時代、乗客の女たちはもちろん、男たちの中にもおれを非難する者が出てきた。おれは無理矢理次の駅でおろされ、保安官に引き渡されるが、保安官も女で…。
 痴漢をする人間もゴミだと思いますが、本作のように―そして、現実にも起こっていますが―冤罪を引き起こす人間もゴミだと思います(どうでもいいことですが、元法務相の残念な人間は「冤罪という言葉は使わない」などと訳の分からないことを言っていましたが、あの人間はこの手の事件をどう表現するのでしょう??)。と、現実の問題を考えさせられるのはもちろん、筒井さんが他の作品でも書いておられるこの手の女性運動家への痛烈な非難とも読めます。嫌な内容の話ですが、物語としてはとても面白いです。

「色眼鏡の狂詩曲」 アメリカの少年から、SF作家の筒井康隆に小説の原稿が届く。世界各国語に通暁しているものの、英語は苦手な筒井は、友人で翻訳家の江藤に翻訳を依頼する。少年の作品は、架空の第二次日中戦争を描いたSF作品だが、両国へのイメージが露骨に反映されていて、奇妙な世界が展開していた。

ーーー

 どの短編も楽しめました。というかもう、筒井さんの作品は基本的になんでも面白いというくらいにはまってきています。2,3年前くらいから読み始めていますが、筒井さんの作品に出会えて良かったと思います。
(2008/10/20読了)





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Last updated  2008.10.27 07:20:07
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のぽねこ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) スパイシーチューリップさんへ コメント…
スパイシーチューリップ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) 流行りましたね!キラキラ系、あまり知ら…
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