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2010.10.24
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~慶應義塾大学出版会、2000年~

 英国学士院と日本学士院との会員交流協定により、1996年3月18日から4月8日までラスカムが来日した際、日本各地の大学で発表された講演やセミナーの原稿を翻訳・編集した一冊です。また、講演などの翻訳とは別に、本書のために特別に書き下ろされた論考も収録されています。
 著者のデイヴィッド・ラスカム(David Edward Luscombe, 1938-)は、12世紀思想史、特にアベラールの研究で有名な学者です。本書刊行当時、シェフィールド大学の中世史学研究専門教授にして、英国学士院会員でいらっしゃいます。
 本書の構成は次のとおりです。

ーーー
原著者まえがき

第1章 十二世紀ルネサンス
第2章 学校と学者たち

第4章 アンセルムとアベラール
第5章 アベラールの著作における言語に関する学芸と聖書
第6章 中世の結婚―変化と連続―
結論

編者あとがき
訳注
索引ーーー

 先日記事を書きました C・H・ハスキンズ『十二世紀ルネサンス』 が、十二世紀ルネサンスという歴史的事象に関する概論だとすれば、本書はその中の特定のテーマについて論じた各論といえるでしょう。ただし、第1章として十二世紀ルネサンスに関する簡明な説明が置かれています。また、第6章は狭い意味での十二世紀ルネサンスの時代を超えた時代枠の中で、結婚制度の性格と意義を論じる稿となっています。

 自分の関心に照らして、特に興味深く読んだのが第2章です。大学の成立期にあたる12世紀、学校でどのような教育が行われていたのか、また注解などのために作られた「詞華集」(古典作品などからとられた引用文の集成)や「大全」などのジャンルの紹介など、勉強になります。また、具体的な道徳の問題に関心を寄せたペトルス・カントルのサークルも言及されていて、参考になります。

 第4章は、12世紀を代表する知識人であるアベラールとアンセルムの影響関係を論じます。とりわけ、三位一体を説明するためのナイル河の喩え(泉、河、湖はそれぞれ違うものだが一つの水に違いない)をめぐる議論が興味深かったです。


 第6章は、前述のとおり、比較的長い時間枠の中で、中世の結婚のあり方を論じています。禁婚血族の範囲についても分かりやすく紹介されていて、勉強になりました。また、中世の結婚について有名な研究を発表しているジョルジュ・デュビーについて、その説と、後の研究者たちによるデュビー説批判が紹介されているのも興味深いです。
 また、アベラールと恋に落ち、結婚したエロイーズの結婚観の紹介も興味深かったです。

 なお、本書の最大の魅力は、訳注がとても充実していることです。 訳注をじっくり読むだけでも、12世紀の主要な人物や事件についての概観はつかめるようにつくられています。 また、横書き、原注は脚注の形で置かれていることも魅力です。
 本書と同じく慶應義塾大学出版会から鶴島先生たちの邦訳により刊行されているオスカー・ハレツキ『ヨーロッパ史の時間と空間』(2002年) にもこれらの長所がありますが、実に丁寧な仕事です。

 数年ぶりに通読しましたが、あらためて勉強になりました。

(2010/10/08読了)





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Last updated  2010.10.24 08:05:54
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のぽねこ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) スパイシーチューリップさんへ コメント…
スパイシーチューリップ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) 流行りましたね!キラキラ系、あまり知ら…
のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 なにぶん…

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