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2018.01.20
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守山記生『北フランス・ベルギー中世都市研究』

~近代文藝社、 1995 年~

 著者の守山記生先生 (1940-2006) は、奈良大学名誉教授で、中世都市研究に関する論考を多く発表していらっしゃいます。(参考:「守山記生先生年譜・著作目録」『奈良史学』 24 2006 年、 2-5 頁)

 先生の論文として、私の手元には、

守山記生「 12 世紀初期のフランドルにおける政治的変動」関西中世史研究会編​ 『西洋中世の秩序と多元性』 ​法律文化社、 1994 年、 155-172

 があります。

 まず、本書の構成は次のとおりです。

―――

はしがき

第1部 フランスの中世都市

 第1章 成立期の中世都市コミューン運動―主として北フランスの場合―

 第2章 形成期フランス・コミューン都市の軍事的特質について―フランス封建王政との関係をめぐって―

 補遺 [I]  「神の平和」運動の展開―ランス教会地方・アミアン=コルビー間の動向を主として―

 補遺 [II]  〔史料紹介〕ノジャンのギベールの回想録―中世都市ランのコミューン運動―

第2部 ベルギーの中世都市

 第1章 ベルギーの初期中世都市―フランドル地方を中心にして―

 第2章  12 世紀初期のフランドルにおける政変とエランバルド一族

 第3章  12 世紀初期のフランドルにおける政治的変動

<初出一覧>

参考文献

<図版出典>

あとがき

〔地名索引〕

―――

 本書は、以前紹介した、​ 河原温『中世ヨーロッパの都市世界』 ​の参考文献一覧にも掲載されている一冊です。手元にありながら、なかなか読めていなかったので、このたび読んでみました。

 本書は2部構成となっていますが、その大半は第1部第1章が占めています。ここでは、カンブレー、ラン、アミアンなど、8つの個別都市の成立状況を、主にコミューン運動の関連から詳細に論じており、参考になります。


 第2部では、第1章を興味深く読みました。「考古地理学」の知見を援用しながら、中世初期のベルギー諸都市の状況が描かれます。


 と、興味深い点もありましたが、誤字脱字の多さや独特の言い回しの多さに、読みづらさも感じました。

たとえば、リュシェールという研究者の名前が、ルュシェールとも標記されていて、統一性がありません。その他、「つぎに」とあるべきところが「づぎに」( 24 頁)、「求めねばならない」が「求めねがならない」( 198 頁)、「西ヨーロッパ各地」が「西ヨーロッ各地」( 222 頁)などの誤字が見られました。

 言い回しについては、たとえば、「フェルメースによって、中世都市コミューンの起源と意義に関する次の研究がなされた。 [ 中略 ] フェルメースは、端的にいえば、中世コミューン都市の意義に関する上記の研究で、 10 世紀末南フランスのアキテーヌ地方ではじめて実施され、教会、とりわけ諸司教の音頭とりで行われた「神の平和」運動の系譜を引く都市に限定された一種の誓約による平和運動と考えた」( 11 頁)という部分が気になりました。フェルメースの研究が中世コミューンの起源と意義に関するものだと最初に言っているので、後段でそのことを繰り返しているのでかえって読みにくいですし、フェルメースが何を「一種の誓約による平和運動」と考えたのかという目的語が省略されているのも気になりました(コミューンのことを言っているのは文脈から明らかですが)。

 と、やや読み進めにくい部分もあり、十分に理解できたとは言えませんが、個別都市の状況や、有名なノジャンのギベールの史料紹介も掲載されており、勉強になりました。


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Last updated  2018.01.20 13:26:35コメント(0) | コメントを書く


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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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