~近代文芸社、 2006 年~
著者の森先生は、本書刊行当時は大妻女子大学教授。ウィキペディアによると現在は退職されて名誉教授になられているようですね。
本ブログでは、 森義信『メルヘンの深層―歴史が解く童話の謎―』(講談社現代新書、 1995 年) を紹介したことがあります。
『メルヘンの深層』同様、本書も、先生の研究テーマの1つであるメルヘンについての考察で、平易な文体で書かれた分かりやすい1冊となっています。
本書の構成は次のとおりです。
―――
はじめに―難しい時代だからこそメルヘンを―
第一部 冒険と友情に彩られた男たちの人生
第一話 忠信ヨハネス―シャネラーな姫を攫う冒険の旅―
第二話 熊の皮を着た男―悪魔との賭けに勝って結婚までできた男―
第三話 六人の家来―かぐや姫をゲットした男と家来たちの友情―
第二部 一途な愛を実らせた女たち
第四話 眠れる森の美女―良心が反対する男性との愛をつらぬく―
第五話 ラプンツェル―母親を裏切った娘の生き方―
第六話 恋人ローラント―母を殺して男と逃げた魔性の女―
第三部 難しい家庭を逃れ出た主人公たち
第七話 七羽のからす―女児の誕生を期に家を出された兄弟たち―
第八話 ねずの木―家族による虐待か、修行のための旅立ちか―
第九話 手なし娘―広い世間に救いを求めた女の旅―
おわりに―歴史的文脈の中でメルヘンを読む―
ブックガイド
―――
いずれの章(話)も、メルヘンの概要紹介、その歴史的背景、現実的な解釈の試み、といった構成をとっています。
たとえば、金持ちに唆された父親に、手を切られた娘が、家を去り、人々の助けを得ながら王子と結婚し、最終的に手も回復するという「手なし娘」では、歴史的背景として手を切断された殉教者たちや法的象徴としての手がない状態などを紹介し、現実的な解釈の試みとしては、最終的に手が回復する以上、手は切られていたわけではなく、なんらかの事情で一時的に萎えていただけという仮説を提示します。このように、いずれも興味深いエピソードの紹介や解釈の試みを紹介してくれていて、とても面白い一冊です。
「ですます体」ということもあり、読みやすさも抜群です。
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