小野賢一編『国境を超える歴史学』
~愛知大学人文社会学研究所、 2018 年 ~
本書は、 2016 年 11 月 26 日に愛知大学人文社会学研究所の小野賢一先生をファシリテーターとして開催された同題のワークショップでの基調報告を収録した論文集です。
本書の構成は次のとおりです。(論文連番は便宜的に付しました。)
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序(伊藤利勝)
趣旨説明:国境を超える歴史学(小野賢一)
[1] 紀元千年前後のカタルーニャ―バルセローナ略奪からコルドバ遠征、そしてその後―(村上司樹)
[2] 12 世紀ドイツの移動国王宮廷と政治的コミュニケーション―西部境界地域を中心に―(服部良久)
コメントに代えて―リエージュと国境―(多田哲)
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ワークショップの問題意識などを紹介する「序」、そして「趣旨説明」は1ページずつで、大きく2つの論文とコメントがメインという構成で、全体は 50
ページ弱の冊子です。
第一論文は、バルセローナ略奪 (985 年 ) からコルドバ遠征 (1010 年 ) という、近代以降に「国家」や「国民」の形成史上画期とされた事件の位置づけを再検討する試みです。イスラーム勢力による第一の事件は、「国内向け」の政策でありイスラーム側によるカスティーリャ側の支援もあったこと、カスティーリャ側による第二の事件は大きな犠牲もあり、同時代に即して見れば国民等の形成上画期とはいえないような状況を指摘した上で、長期的に「国家」意識の形成に寄与していった状況が示されます。
コメントは、リエージュの通史的概観により、同地域が何度も国境変更を経験している(帰属している国が変更している)ことを示した上で、特に著者の専門である中世の激変期には、司教領としては文化的統一を保持していた一方で、司教が集会に参加する際には赴く国が帰属変更の都度変更されたという点が指摘され、国境変更の影響の度合いを多面的に示しています。
以上、理解不足の点も多々ありますが、いずれも興味深く読みました。
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