Th.-M. Charland, Artes praedicandi: Contribution à l’histoire de la rhétorique au Moyen Âge
, Paris-Ottawa, 1936
ヨーロッパ中世の「説教術書 artes praedicandi
本書の構成は次のとおりです(のぽねこ拙訳)。
―――
序(M.-D.シュニュ)
第1部 著者と写本
第2部 理論とその発展
第1章 主題
第2章 副主題
第3章 主題の導入
第4章 分割
第5章 表明と部分の確証
第6章 展開1:様式の決定
第7章 展開2:手順
第8章 その他の装飾
第9章 話し方
第3部 ベイスヴォーンのロバートとウェイリーズのトマスによる概論
ベイスヴォーンのロバート『説教形式 Forma praedicandi
』
ウェイリーズのトマス『説教作成の方法について De modo componendi sermones
』
固有名詞索引
書き出し Incipit
索引
写本索引
―――
第1部は、説教術書の著者として名前が伝わっている約 60
名の人物について、概要や著作の写本などの情報を提示するとともに、 80
点を超える逸名の著作の写本情報を提示します。紹介される著者ごとの記述は、最短で3行から、重要性に応じて数ページにわたって詳細に紹介される場合もあります。
第2部は、「説教術書」で示される説教の構成に従って章立てされていて、それぞれの項目について具体的な例を示しながら詳細に論じます。
説教の冒頭に置かれる、聖書から引かれた一節である「主題」。説教を樹木に例えるある史料によれば、主題=根、副主題=幹、分割=太い枝、再分割=細い枝、展開=葉とされていて (p.113)
、まさに説教の根幹です。
副主題は、主題の後、説教の成功を祈ったりする部分です。この「祈り」が副主題の存在理由と著者は言います (p.126)
。
副主題の後、主題として引用する聖書の章・節が提示されます。
そして、主題とされた一節がいくつかの部分(たいていは3つ)に分割され、さらにそれぞれの部分が再分割される場合もあります。
次いで、その分割の正しさを証明するための「部分の確証」。これを扱う第5章では、主題分割にあたり、語句の一致を重視したり、意味的な一致を重視したりというテクニックが論じられますが、この「語的一致」「意味的一致」については、赤江雄一「語的一致と葛藤する説教理論家―中世後期の説教における聖書の引用―」ヒロ・ヒライ/小澤実編『知のミクロコスモス―中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー―』中央公論新社、 2014
年、 14-41
頁が詳細に分析しています。
第6章は、分割した個々の部分を展開するにあたって、 (1)
下位区分もないようなシンプルな形式、 (2)
主題の分割にあたり「語釈」(聖書の語句に秘められた複数の意味を明らかにする手法。字義通りの意味、象徴的な意味など)を行う形式、 (3)
分割された部分を少し展開してから下位区分する形式と、大きく3つの形式があることを前提として示します。
第7章は、展開の具体的方法としてウェイリーズのトマスが挙げる「権威」「理性」「例話」の3つを取り上げます。
第8章でその他もろもろのテクニックを紹介した後、第9章は話す速さ、強調、身振りなどの「話し方」を論じ、本論が結ばれます。
第3部の史料はラテン語であり今回記事を書く際には目を通していませんが、今後必要に応じて参照していきたいと思います。
記事では特殊な用語でのみの紹介としてしまいましたが、邦語では大黒俊二『嘘と貪欲―西欧中世の商業・商人観―』名古屋大学出版会、 2006
年の第5章「托鉢修道会と新説教」( 100-137
頁)が説教史料に関する基本文献であり、具体例をまじえて説教の構造を示します(特に 121
頁の図がわかりやすく有用です)。
(2021.08.19 読了 )
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