竹内海南江『冬虫夏草』
~幻冬舎文庫、 1997
年~
「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとしておなじみの竹内海南江さんによる小説(2作目)です。
『ムーン』
がだいぶ優しいタッチだったのに対して、こちらはなかなか苦しい描写も多いです(ただ、文体は優しいです)。
物語は、僕―幸一郎さんの一人称で進みます。
都会に出てきて9度目の春。ある日、鏡に紫色の瞳を持つ女性―沙羅が現れ、彼は鏡の中に連れていかれます。そこは、僕の心の中の世界。素直に生きていない僕に、沙羅はいらいらしています。
沙羅のことが忘れられなくなった僕ですが、沙羅はなかなか姿を現しません。そこで、沙羅がよこしてくれたのが、昔は神様だったというパンという名の老人でした。またある日、登校拒否の女子高生も交えて話をすることになり、僕はチェルノブイリの問題など、普段意識していない問題に目を向け始めます。
一方、パンが病気になるのをはじめ、沙羅そっくりの悪女が現れて、僕の生活は変わっていきます。
「個性、個性」と言いながら、「マニュアルどおりの光合成をさせられる」ような学校に苦しさを感じている少女、伊織さんの悲痛な叫びに、事なかれ主義で生きてきた僕が動揺するシーンや、僕の心が腐敗してしまうのを必死で食い止めようとするパンの姿など、印象的なシーンがいくつもありました。
2004
年頃に本作の感想を記事にしていましたが、あまりにひどいので削除しました(開設からしばらくはひどい記事が多いですが…)。今回久々に再読し、あらためて記事にする次第です。
(2021.12.27 読了 )
・た行の作家一覧へ 知念実希人『祈りのカルテ』 2026.06.14
高田崇史『QED 天河伝説、桜舞い』 2026.02.14
俵万智『生きる言葉』 2025.12.29
Keyword Search
Comments