乾くるみ『ジグソーパズル 48
』
~双葉文庫、 2021
年~
私立曙女子高等学院の生徒たちが様々な謎や事件に挑む作品集。それぞれ独立して読める7編の短編が収録されています。
「ラッキーセブン」
生徒会室に集まったメンバーで、トランプのゲームで遊ぶことになった。ところが、真のデスゲームになってしまい…。メンバーの持ち札を読み、危機を脱出できるのか。
「 GIVE ME FIVE
」
カラオケ店の2つの部屋に分かれていた生徒たちが知り合いだったため片方の部屋に集まって盛り上がっていた。ところが、空いたかっこうになった部屋で、置いていた高級いちごが食べられていたことが発覚する。探偵役をつとめることになるバイト店員がたどりつく真相は。
「三つの涙」
アパートで起こった殺人事件。同じアパートの別室に住んでいるため事情聴取を受けた住人、事件の担当となった刑事、被害者となじみのあったスーパーの店員という、事件に関係する3人のそれぞれの娘が学院の生徒だった。被害者が買い物の際に持ち帰ったはずのアイスだけが現場からなくなっていたという謎。彼女たちは事件の真相解明を目指すが…。
「女の子の第六感」
サッカーの試合で、同級生から頼まれていた限定グッズが当たるかもしれない福引に挑戦した生徒が、翌日から様子がおかしくなってしまった。依頼していた生徒の様子もどこかおかしく…。
「マルキュー」
経済上の事情でバイトを始めたところを見つかってしまったため、特別進路指導クラスの9組、通称マルキューに新たに異動してきた生徒をなんとかするため、彼女に特待生をとらせて学費を免除させようと結束したメンバーたち。スポーツ大会にも試験勉強にも全力を尽くすなか、スポーツ大会ではアクシデントに見舞われ…。
「偶然の十字路」
卒業式の後、防音棟に訪れた生徒たちのなかで、一つの事件が起こる。不祥事を起こして留年確定となった生徒が復帰したその日、その生徒が何者かに殴られ倒れているのが発見された。防音棟にいたメンバーに犯人がいるはずだが、方法にもアリバイにも謎が残り…。
「ハチの巣ダンス」
飲み屋にスマホを忘れ、取得した犯人から金銭を要求された同級生を救うため、犯人のもとに侵入したマルハチのメンバーたち。しかし、スマホは、開けるのが困難な、奇妙なかたちの引き出しにしまわれていて…。
―――
それぞれの短編集の登場人物は基本重複していないので(たまに言及されることはありますが)、冒頭にも書きましたが、それぞれ独立した短編となっています。殺人事件を扱うものもありますが、基本は日常の謎や困難な状況をなんとか乗り越えようとするタイプの物語です。
「ラッキーセブン」は 『セブン』
にも収録されています。これのみ独特な世界観です。
「 GIVE ME FIVE
」「女の子の第六感」は日常の謎ものとして、好みの作品でした。
唯一の殺人事件を扱う「三つの涙」はどちらかといえばホラーテイストの作品。
全てにはふれられませんが、全体を通じて「マルキュー」が一番好みの作品でした。
各短編タイトルの数字を合計すると 48
になるなど、凝った作品集です。
全体を通じて楽しく読みました。
(2023.01.13 読了 )
・あ行の作家一覧へ青崎有吾『ノッキンオン・ロックドドア2』 2024.06.30
青崎有吾『早朝始発の殺風景』 2024.05.04
乾くるみ『ハートフル・ラブ』 2023.12.30
Keyword Search
Comments