フェルナン・ニール(渡邊昌美訳)『異端カタリ派』
~白水社文庫クセジュ、 1979
年~
Fernand Niel, Albigeois et Cathares
, Press Universitaires de France, 1955
著者のニールは、訳者あとがきによれば、モンセギュール遺構の研究で著名な研究者のようです。(フランス語版ウィキペディアの情報によれば、生没年は 1903-1985
訳者の渡邊昌美先生は、カタリ派研究の大家で、私は未見ですが『異端カタリ派の研究』岩波書店、 1989
年があります。このブログでは以下の著作を紹介したことがあります。
・ 渡邊昌美『中世の奇蹟と幻想』岩波新書、 1989
年
さて、本書の原題は『アルビジョア派とカタリ派』ですが、善悪二元論のカタリ派(南仏でアルビジョア派と呼ばれました)について、ゾロアスター教から 1244
年のモンセギュール陥落(とその後の諸事件)までを通史的にたどる1冊です。
本書の構成は次のとおりです。
―――
序
第1章 起源
第2章 マニ教
第3章 マニ教からカタリ派へ
第4章 カタリ派
第5章 アルビジョア派
第6章 アルビジョア十字軍
第7章 モーの協約と異端審問
第8章 モンセギュールと最後の抵抗
訳注
訳者あとがき
ラングドック地方の地図
―――
第1章は古代イランのゾロアスター教を扱います。善のアフラ・マヅダと悪のアーリマンの二神教と思われがちですが、著者による「究極の到達点がアーリマンの滅亡による一神教を志向しているから」「それは完全に暫定的な形での二神教にすぎない」 (14
頁 )
との指摘を興味深く読みました。
第2章は、グノーシス派の中にしばしば数えられる、バビロニア北部生まれのマニの教義を概観します。
第3章は、マニ教からカタリ派への系譜として、小パオロ派とボゴミリ派について概観。
第4章は、まず冒頭で、カタリ派はヨーロッパ、特にフランスに残存していたマニ教とボゴミリ派の伝道の思想の融合の中から生まれたとします( 48
頁)。そして、ヨーロッパにおけるカタリ派の拡大とその教義についてみていきます。
第5章は南仏、ラングドック地方のカタリ派であるアルビジョア派について、当地での展開の理由や政治的・社会的背景、そして教皇たちによる対応を概観します。
第6章以降は、カタリ派に対する教皇たちの対応をさらに詳細に、通史的に見ていきます。
簡単なメモになっていましたが、カタリ派に関する概観が得られる好著と思います。
一方、訳者あとがきは、ニールによるマニ教とカタリ派の連続性を強調する立場や、本書の議論の一部に疑問も呈しており、慎重な読みも求められます。
(2025.01.17 読了 )
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