有栖川有栖『まほろ市の殺人 冬 蜃気楼に手を振る』
~祥伝社文庫、 2002
年~
有栖川有栖さんによるノンシリーズの中編作品。
本書の舞台は、蜃気楼がよく出現するまほろ市。幼い頃、兄弟で母親と蜃気楼をみた主人公の山岡満彦さんは、母が、蜃気楼に手を振ってはいけないと言ったのに、兄弟の一人が手を振るのを目にします。その後、その兄弟は幼くして事故死してしまいます。
そういった記憶のある満彦さんが、兄弟の史彰さんの馴染みの店で過ごした帰り道、事故にあったオートバイの男を目撃します。男のそばには大金の詰まった鞄がありました。
記憶力もあいまいになってきて、施設では虐待を受けているおそれのある母親を救うため…とそのお金を手にした満彦さんですが、酔いつぶれたいたはずの史彰さんはそれを見ていました。そして…。
と、物語は倒叙形式で進んでいきます。
なんの証拠も残していないと考えていた満彦さんですが、思わぬ形でお金の隠し場所が特定されたり、そして死んだはずの兄弟たちも目にするようになったりと、彼の立場からすればいかに窮地を逃れるか、警察の立場からすればどのように彼の犯行を暴くのか、というスリルあふれる展開です。
一方、ホラーのような要素や、幻想的な味わいもある物語です。
(2025.10.06 読了 )
・あ行の作家一覧へ 井上真偽『引きこもり姉ちゃんのアルゴリ… 2026.06.06
歌野晶午『首切り島の一夜』 2026.05.31
大下宇陀児『烙印』 2026.05.06
Keyword Search
Comments