島田荘司『三浦和義事件』
~角川文庫、 2002
年~
1981
11
月に起こった、いわゆる「ロス疑惑」をめぐるノンフィクションです。
島田荘司さんのノンフィクション作品としては、本ブログでは以前 『秋好英明事件』
を紹介したことがあります。
事件の概要は次のとおりです。
1981
年 11
月 18
日。
三浦和義氏とその妻は、ロスアンジェルスで何者かに銃撃され、妻は頭部に、自身は脚に銃弾を受けます。
現地病院で治療を受け、回復の見込みがないとされた妻も日本の病院に移送しますが、後日亡くなります。
この事件はマスコミに大きく取り上げられ、移送のときは取材陣が殺到しますが、やがて、この事件は三浦氏による保険金目的の殺人事件なのでは、と目されることになります。
事件の4カ月前に、同じくロスアンジェルスで起こっていた、妻の負傷事件の「加害者」を名乗る女性が名乗り出たこともあり、三浦氏の印象はますます悪くなっていきます。
そして、三浦氏のプライバシーを無視するかのような、マスコミ報道の過熱が進み、ついに三浦氏は逮捕、起訴され、裁判での審理にかけられることになります。
920
頁を超える大著である本書は、大きく3部構成です。
第1部でマスコミサイドからこの事件を描き、いかに三浦氏が悪人とみなされ、マスコミが「正義」であったかが示されます。
第2部は、三浦氏の視点で一連の事件をとらえなおします。その中で、マスコミ報道の矛盾点が指摘されます。
第3部は裁判記録の抜粋もしながら、裁判の過程を描きます(平成6年 (1994
年 )
まで)。
末尾では、「後記、幻想のロス疑惑」と題して、島田氏による事件の解釈が提示されます。
また、文庫版あとがきとして「「三浦和義事件」の今」と題する文章が掲載され、その後の経過が紹介されます。(銃撃事件は平成6年判決では有罪とされますが、控訴審で無罪判決となります)。
本作は、三浦和義事件を通じた日本人論です。マスコミの横暴、警察による乱暴な取り調べはもちろんですが、情勢に流される日本人のあり方が問われます。
有名な事件でありながら私はよく知りませんでしたので、関係者たちの著作を参考文献として事件を再構成・解釈する本書で、事件の概要も理解でき、また、あらためて自分自身も含めて「日本人」のあり方を考えさせられました。
(2025.11.24 読了 )
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