北山猛邦『オルゴーリェンヌ』
~創元推理文庫、 2022
年~
『少年検閲官』
舞台は、海面上昇で終わりを迎えつつある世界。そこでは、書物、そして歌詞ありの音楽も、検閲され、焼き尽くされていきます。
形見のガジェット(宝石の形をした『ミステリ』の結晶。もちろんこれも禁止されています)を持つ主人公のクリスは、そんな世界でミステリ作家になることを夢見ています。
本作は、海面上昇で島となり、終わりをまつだけの「海墟」と呼ばれるある島で、オルゴールの作成で名声のあるカリヨン邸にまつわるエピソードから始まります。スラム出身の「私」が、すぐれた技術であるオルゴールを修復するのですが、それを認められてカリヨン邸に住み込みで働くようになります。主人の盲目の娘に心引かれつつ、彼女には婚約者がいるからと思いを断ち切ろうとしますが、やがて事件が起こり…。
*
一方舞台はかわり、クリスはある町で、お世話になったキリイ先生が自分を探していることを知り、彼を訪ねて旅を続けます。そんな中、検閲官に追われる少女―ユユに出会います。彼女を救おうと逃げる中、絶体絶命の中で、少年検閲官エノと再会を果たしますが…。
*
ユユの秘密を探るべき訪れる島では、オルゴール職人たちが不可能状況での死を遂げていきます。島にいるもう一人の少年検閲官よりも先に、エノたちはガジェットと、連続殺人の真相に辿り着けるのか…。
という物語です。
幻想的な序奏、緊迫した少女との逃走劇、エノとの再会と揺れるエノの思い、そして不可能状況での連続殺人事件と、好みの物語でした。
文庫本で約 570
頁と、北山さんの作品の中では最長の物語ですが、読みやすく、展開も手に汗握り、長さを感じさせません。
これは面白かったです。
(2026.04.26 読了 )
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