ヘルベルト・グルントマン (
今野國雄訳 )
『中世異端史』
~創文社、 1974
年~
(
Herbert Grundmann, Ketzergeschichte des Mittelalters; Die kirche in ihrer Geschichte, Ein Handbuch
, Band 2, Lieferung, G (1. Teil), Göttingen, 1963
著者のヘルベルト・グルントマン (1902-1970)
は、中世における宗教運動に関する研究の「定礎」とも評される『中世における宗教運動』 (
原著 1935
年、増補改訂版 1967
年、英訳版は 1995
年 )
で有名な歴史家です。
本書は、グルントマンによる著作の、唯一の邦語訳です。(グルントマンの経歴の詳細は、本書 163-173
頁の訳者あとがきを参照。上述の『中世における宗教運動』に関する評価や情報は、小澤実「西洋中世の民衆宗教運動―グルントマン以降―」 小澤実編『物語るロマネスク霊性―池上俊一著『ヨーロッパ中世の宗教運動』(名古屋大学出版会 2007
年)書評集―(クリオ 22
号別冊)』クリオの会、 2008
年
、 9-17
頁、特に 10-11
頁を参照。)
本書の構成は次のとおりです。
―――
凡例
1 序文
2 フランク王国の異端
3 西欧における最初の異端者集団
4 教会改革および叙任権闘争の時代における異端
5 12
世紀前半期の異端的な巡歴説教師と諸分派
6 12
世紀における神学者に対する異端者裁判
7 カタリ派
8 ヴァルドー派とフミリアティ
9 教会の異端対策―異端審問の成立―
10
13
世紀における聖霊派異端と哲学的異端
11
14
世紀における異端的なベギニ派とベガルディ派
a ラテン民族のベギニ派、聖霊派、フラティケリ、使徒兄弟団
b ドイツにおける異端的なベギニ派とベガルディ派、「霊的自由」の異端
12
フス戦争にいたるまでの政治と異端
原注(略記法一覧)
訳者あとがき
索引
―――
本論と原注あわせて 160
頁ほどのコンパクトな分量でありながら、構成からうかがえるように、通史的に、主要な異端(的)運動が概観できる好著です。
概説的な性格のため、章ごとの紹介は省略しますが、興味深かった点のみメモ。
まず第3章では、 11
世紀前半に様々な場所で異端が現れますが、異端とされた人々の中に王妃の聴罪司祭だった人物や貴族サークルがいたことや、当時の「異端者の教義」から、「この時代の異端を全体として社会的あるいは反聖職者的動機から出た平信徒及び民衆の運動と説明することは不可能である」 (17
頁 )
と指摘されます。
第8章では、自身の家にとどまりながら敬虔な生活を送ったフミリアティ(彼らを扱った英語の単著として、 Frances Andrews, The Early Humiliati
, Cambridge University Press, 1999
があります)に関する議論の中で、一度は異端と宣告されながらも、後にその宗教的努力が認められ、「教会の味方に連れ戻された」ことについて、「これは宗教運動および異端に対する教皇長の態度における一つの転換点である」と評価しています。
その他、各章では、取り上げる主要な人物に傍点が付されていているため、構成が大変分かりやすく、読みやすいです。
久々の再読でしたが、あらためて適宜参照する必要性を感じる1冊です。
(2026.06.06 再読 )
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