1
今日は『スプートニクの恋人』(村上春樹/講談社文庫)です。最近、ムラカミハルキばっかり読んでますね。秋はもの悲しい季節なんですよ。ふむふむ。 「スプートニク」というのは、ソ連の人工衛星で、この物語の大切なキーワードになっています。主な登場人物は語り手の僕と、僕が恋する「すみれ」、すみれが激しい恋をする「ミュウ」の3人。でも別に三角関係とかそういう話じゃないんだよねぇ。うーむむ、説明しにくい。と、いうことで著作権を侵害しつつ気に入ったフレーズをいくつか書き出してみたいと思います。あらすじを書き連ねるよりも、その方が物語の本質が伝わるようなそんな気がします。 前半はわりと軽めのノリです。独特のユーモアのセンスと村上節炸裂ってかんじ。すみれは顔をしかめて溜息をついた。「くだらない冗談を燃料にして走る車が発明されたら、あなたはずいぶん遠くまでいけるわよね」/「でもまあ、世の中には知的枯渇というものがあるから」とぼくは謙虚に言った。こんなかんじね。 タイトルにもあるスプートニクについてのミュウのセリフ。「(前略)…ねえ、あなたはスプートニクというのがロシア語で何を意味するか知っている?それは英語でtraveling companionという意味なのよ。『旅の連れ』。…(中略)…どうしてロシア人は、人工衛星にそんな奇妙な名前を付けたのかしら。ひとりぼっちでぐるぐると地球のまわりをまわっている、気の毒な金属のかたまりに過ぎないのにね」このときすみれとミュウは一緒に旅をしている。そして、すみれはミュウのことを「スプートニクの恋人」と秘かに呼んでいる。 すみれの思いに答えるの事のできなかったミュウが僕に言う言葉。私たちは素敵な旅の連れではあったけれど、結局はそれぞれの軌道を描く孤独な金属の塊に過ぎなかったんだって。遠くから見ると、それは流星のように美しく見える。でも実際のわたしたちは、ひとりずつそこに閉じこめられたまま、どこに行くこともできない囚人のようなものに過ぎない。」ミュウはそう感じている。でもすみれは違う。彼女の心は血を流すし、何かにつながれていなければ生きていけない。すれ違う人工衛星ではなくて。心がつながれていなければ、夢の中でしか生きられない。 そして僕も同じように思っている。僕は教え子のにんじんに語りかける。しかし大学生のときに、ぼくはその友だちと出会って、それからは少し違う考え方をするようになった。長いあいだ一人でものを考えていると、結局のところ一人ぶんの考え方しかできなくなるんだということが、ぼくにもわかってきた。ひとりぼっちであるというのは、ときとして、ものすごくさびしいことなんだって思うようになった。 そしてラスト。ぼくらはたしかにひとつの線で現実につながっている。ぼくはそれを静かにたぐり寄せていけばいいのだ。うひー、なんのことかわからないですよねー。これじゃぁ。実は読んでいるワタシも、理解できていないような気が、何回読んでもするんですよね。でも、読むたびに少しずつ、何かがわかってくるような気がするし、読むたびに好きになっていく作品です。
2002年11月01日
閲覧総数 460