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2007.08.20
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カテゴリ: 映画



主人公が命の期限を知り、自らの死と向き合う。テーマはありがちだけれど、こういう形で死を扱うフランス映画は珍しいような、そんな印象を受けました。『まぼろし』から、死をめぐる三部作として撮られた2番目の作品。 これからあと一作、死をテーマにした作品が生まれるということでしょうか。

主人公ロマンはゲイ。彼の家族はむかしから不仲で、愛情足りなく育ちました。ゲイであることを隠さないながらも、どこかで負い目を感じ続けてきたロマンは孤独で、余命わずかと知っても家族に一切を知らせません。
唯一心を開けるのは遠方に住む祖母(ジャンヌ・モロー)だけ。彼女には真実を話し、別れの挨拶と「愛してる」を遺すのですが・・・

自分が死ぬとき、ロマンのようにはひとりでいられない。恋人の青年にさえ真実を告げず別れて、自分を孤独へと追いやっていく痛々しい死に様です。
少年の頃から男の子が好きだった・・・そんな負い目や懐かしい記憶と共に、彼が見たくてやりたくて求めてるものは、自らの孤独を埋める過去を遡る行為のようでした。過去を埋め、傷を癒して、ほんとに求めてる場所へ行くのが、一番楽かのように。

死に様がキレイすぎるとか、ガンに対するリアリティがないとか、当然のように感じますが、このいいとこどりな上手さがフランソワ・オゾンという人の味なのかなと思います。精度が高く、うつくしく、上手い。だけれど、これまで観たどの作品も、心かき乱されたり鷲掴みにされたりすることがありません。本作では、直接死を扱っているけれど、それでも淡々とした感情が湧くに留まりました。

演じたメルヴィル・プポーは素敵です。そつなく上手い。だんだん痩せて、最期には頬もこけ、髪を刈って丸坊主にしたロマンが、いかに死を見つめたか、プポーの演技でしんみり感じとることができました。
一番の見所といっても過言ではない祖母とのシーンでは、大女優ジャンヌ・モローが情感たっぷりに演じています。 たったひとりでも、理解者がいたら寂しくない。ロマンは孤独だったけど、祖母の愛に満ちていたことが、ひとりで死ぬ勇気にもなっていたのかもしれません。



カメラマンでありながら、家族を一切撮らなかったロマンが、家族にファインダーを向け始める。この変化は、弱いけれど心に残ります。 写真はいつか、なにも知らされなかった家族の目に入るのでしょう。けれど、一切を見せずに物語は終っていく―。
ちなみにこの作品も、また、海が行き着くところ。


 監督・脚本   フランソワ・オゾン
 製作  オリヴィエ・デルボスク 、マルク・ミソニエ
 出演  メルヴィル・プポー 、ジャンヌ・モロー
      ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ 、クリスチャン・センゲワルト
      ルイーズ=アン・ヒッポー

  (カラー/81分)








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Last updated  2013.12.30 00:03:04
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