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2006年02月06日
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カテゴリ: 書評
松の四景という作品が気になったものの、何やら発売が延びているようなので、同じ作者さんのデビュー作を。
第10回ホワイトハート大賞優秀賞受賞作品だそうです。

妖(あやかし)退治を請け負う、呪言者の兄、刀使いの弟のお話。全部で7つの短編から成っています。
春の話から始まり、夏、秋、冬、そして最後はまた巡り、春に。
それぞれの季節は、良く選ばれた言葉と誠実に練られた文章によって、鮮やかというよりは優しい印象の話になっています。
妖退治と言っても、主人公達を通して、人間とは違う異界の者たちを、護るような、慈しむような視点で描かれているので、あまり血なまぐさい話はありません。(別の意味では血なまぐさい?部分もありますが)
そんな感触は、それほど飄々とはしていないけれど、今市子さんの百鬼夜行抄に通ずる部分があります。近い世界なので、お好きな方は読んでみても宜しいかと。
個人的には、嫌いなテーマではなかったし(むしろ好き)、文章も読み易く好みだったので、久し振りに面白く読めたお話だったのですが、気になった点も少し。

文章は、綺麗な言葉でリズムも良く、情景描写も情緒的で美しいのですが、全体に淡々としていて、緊迫した場面でも、それほどの緊張感が伝わって来ないです。

多少、綻びやはっちゃけた部分があった方が、打ち解けられそうなのになあ、と優等生遠巻きにして眺める歯がゆさ。そんなのに似た感じがします。
淡々とした作風、それがこの方のイイ味になるのか、それとも、また違う面を見せて貰えるのかは、今後のお楽しみといった所なのでしょうか。
あともう一つ、どうでもいいような所ですが、私は食い意地張っているので、作中に度々出て来る和菓子や和食の料理、これがもっと「旨そう…!」と思える描写だったら嬉しかったかな、と思いました。

キャラに関しては、兄、比佐と、弟、圭一のお互いを思い遣る気持ちが優しくて、読んでいるこちらも優しい気持ちになれます。
周りに配された登場人物たちも、それぞれハッキリした輪郭を持っていて、1人1人のエピソードでも、充分一話作れそう。
この本に収まり切らなかった話があるのなら、読んでみたいと思いました。

個人的に気に入ったのは、第参話の「夜涼」。掛け軸から消えてしまった烏(からす)の話。可愛い話でした。

ところでこの方、挿し絵も自分で描かれてるんですね。
挿し絵も、挿し絵だけで見ても充分以上の描写。
才多き方ですね。羨ましい。

お気に入り指数は ★★★★☆


春陽





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最終更新日  2006年02月06日 05時43分33秒
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