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2006年03月03日
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カテゴリ: Boys Loveもん
挿し絵に惹かれて買ってみました。山本タカト師(“氏”ではなく、あえて“師”で)が挿し絵を当てている所で、本の内容の傾向は、おして知るべし、ですが。

親の借金のカタに、暴力団の組長に養子として引き取られた初乃。表向きは組の跡取り候補だが、実際は養父滝川の愛人として引き取られたというのが真実だった。
愛欲にまみれる日々に、何の希望も見出せずにただ死んだように生きる毎日。
初乃はそんなある日、屋敷に出入りしている植木職人の将大と出会う。初めて交す、ごく普通の会話。やがて初乃は将大が来るのを心待ちにするようになり、一方の将大も、そんな初乃の事を可愛いと思いはじめる。それが、2人の淡い恋の始まりだった。

…といった所が冒頭のおおまかな粗筋。ここだけでもう不幸フラグ立ちまくりです。
種別としてはこの話、BLよりJUNE。描かれている「好き」だの「愛」だのは、決して「ラブ」だったり「ロマンス」じゃなく、「情念」。
爽やかな風のような恋愛は無く、そこにあるのは、暗い水底に沈む泥のような愛欲。
その部分で、ライトな恋愛ものを好む方には向かない話かもしれません。往年のJUNEの読者さんなら、むしろ懐かしい手合いの話ですが。
話の内容は、言ってしまえばありがちな話。現代を舞台にしているものの、借金のカタだの籠の鳥だのという話も、およそ今の時代では現実感が薄いです。昭和の話と言われても違和感無いです。

でも、ありきたりの話ながら、最後まで一気に読ませてしまう筆力と、必要以上に感情移入し過ぎないしっかりとした視点、難しい言葉を使わずも、丹念に編み込まれた文章は、安定していて読み心地よいです。
淡々としながらも、個々の感情が細やかに伝わって来るので、物語りにも厚みがあります。
それだけに、何処か一つでいいから、サプライズもしくはタガの外れた部分(という表現が適当かどうかは分りませんが)を加えて欲しかった気も。
このテの話には、意外な展開を望むのではなく、懐古的な雰囲気を楽しむのが正解なのかもしれませんが、個人的には、良く出来た「BLの古典」を読んだ感が抜けないのは惜しいと思いました。

タイトルの唐梅は、蝋梅(ロウバイ)と呼ばれる早咲の黄色い梅の花。とてもいい香りのする花です。
この話の背景には、常にこの花が見えかくれしています。時折、ふっと行間から梅の香り立ち上って来るような描写は上手いなぁ、と思います。
話のラストも、この梅の香りに包まれるような美しい場面なのですが、あれがハッピーエンドなのか、そうでないのかは、読む人次第…といった所でしょうか。

山本タカト師の挿し絵は、相変わらず妖艶で素晴らしいです。
この話、舞台は現代ですが、もっとそれが全面に押し出されていた話なら、この方の絵では違和感があったのかもしれませんね。
絵については語りたい事が沢山あるのですが、それはまた別の機会にでも。

お気に入り指数は★★★☆☆

唐梅のつばら





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最終更新日  2006年03月03日 08時04分52秒
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