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2003年09月13日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
一人になって30年、無為に生きてきた。集落にあるバッラクの六畳間で。

その戦争で右手首を吹き飛ばされた。
同じ立場の朝鮮人が補償を求めた裁判の話を聞いたソバンは、自分の身を顧みる。

                       『陰の棲みか』他2作収録


民家が立てこむ大阪市東部の下町。
血管のようにはりめぐらされた路地、角材に板を打ちつけた二百ものバラック。
ソバンに失望し、集落を飛び出した息子はもうこの世にいない。


毎週月曜日に、小さなボランティア組織から派遣されてくる佐伯さん。
かつて集落の金を持ち逃げしようとして、リンチにあったスッチャ。
工場経営をはじめ集落の支配者である永山、息子の同級生で医者の高本。

75になるソバンは仲間と冗談を言い合い、陽気でさえある。
しかし、胸のうちには孤独がある。・・・「《時間》とはすぐに仲良くなれる」
何十年間もかけて修得した時間の過ごし方は、気分一つで使えなくなることもあるが。

決して楽な暮らしではない。抑圧もされている。
だが、そこにあるのは絶望ではなく、悲壮感ともまた違っているように感じる。

古い日常を掘り起こす。振り返るわが身。
自分の身を受け入れている部分。コミュニティーの仲間意識。
在日朝鮮人であること、集落の歴史を思う。

その根元にあるのは一人の人間としての誇りではないだろうか。

生きている。
それはあるいは【陰】の棲みかであるかのもしれない。
最後のとびだしに、陽の光をみた気がする。

『おっぱい』

 同級生は、そのことを知らせる葉書を【疫病神の回覧版】と呼んだ。
 美花は4歳の時に失明していた。
 2年後、再び康親子が訪ねてきた時、美花は“母”となっていた。

『舞台役者の孤独』
 死は常に身近にあった。しかし弟の死はそれまでのものとは違っていた。
 韓国協会の十字架を眺め、弟のイメージが残る滑り台で跪いた。
 芝草望は「更正した」元不良少年だった。
 彼は身近な出来事を空想の中で膨らまし物語をつくるという楽しみを見つけた。


三作いずれも、在日朝鮮人などを扱ったものである。
少々乱暴な言い方をすれば、それはあくまで手段の一つだと思う。
背景を充分に理解しながら読んだ、と胸をはって言う事はできないが、もっと奥底にあるもの(人種を超えたもの)を重視しているのではないだろうか。

『おっぱい』は第121回芥川賞候補作(99年)
『陰の棲みか』で第122回芥川賞受賞(2000年)

読後感も悪くないし、思ったよりも興味深く楽しく読めた。
(手放しで明るい話題、というわけでは決してないのだが)
文庫表紙のシーレの絵が、望のイメージとなんとなく重なり雰囲気にあっていると思う。





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最終更新日  2003年10月07日 09時27分24秒
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