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訪中視察団の一員である入江は、【玉陵】へ磨崖仏を見に行く事を望んだ。
これといった名所があるわけではなく、磨崖仏は三流か四流のものでほとんど知られていないほど。しかし入江は、かつて戦時中に【玉陵】を訪れていた。25年前の【玉陵】が脳裏によみがえる・・・

第23回日本推理作家協会賞受賞作。
こう聞いて意外に思った。どうしても歴史小説のイメージがあったので。でも歴史ミステリーなんてものもあるし、以前に読んだ『琉球の風』もとても軽快で読みやすく面白かったので、期待をもって本書を手にとった。

入江は、戦時中、中国美術史研究のため北京に滞在していた。
ある時、玉陵の磨崖仏の存在を知る。それは日本の埴輪に似ていた。出来としては拙劣で、明らかに専門の石工の手によるものではなかった。しかしそのことこそが、もともと“野の仏”に関心があった入江の心を捉え、玉陵へとその足を向かわせたのである。

玉陵近辺では、ゲリラの活動が目立ち、日本軍守備隊が近くに少数駐屯し緊迫した状態であった。そんな中で入江は、守備隊の少尉に嫌悪感を覚え、元村長の李東功の世話になる。そこには美貌の姪・映翔が居た。

玉陵第三峰の絶壁。上下段に別れ、高さ10メートルほどの巨大な座像が二体彫られていた。この二つの像には“競作による婿選び”という伝説があり、それにのっとった【点朱】という行事も行われていた。

この“石能と包選(二像の作者)の伝説”では一つの殺人事件が起こっていた。


李東功の隣家に住む、狗と呼ばれる謝世育。
ゲリラの頭、スリーピング・ドラゴン(=臥竜)。
輸送隊の襲撃。火事。奇襲。情報。スパイ。
映翔への愛。迫られた選択。そして選んだ道・・・

再びやってきた玉陵。明かされた真相とは?

ミステリーとしては少々あっさりしている気もしますが、流石にグイと話に引き込んでいきます。緊張感のなかにも爽快感があるし、分量的にも丁度良く、期待通りで満足でした。

↑でも少し触れていますが、陳さんはミステリーにもかなり造詣が深い様子。少年時代は江戸川乱歩を愛読していたとか。処女長編『枯草の根』で第7回江戸川乱歩賞も受賞している。へぇ~知りませんでした。応募作は、全員一致で絶賛され、誤字脱字が一字もなかったとのこと。そしてその後も、直木賞など各賞総ナメ。(以上山村正夫氏の解説より)うーん、凄い人ですねぇ。他の作品も読んでみたい!





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最終更新日  2003年11月24日 09時52分06秒
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