ケンミンショーという番組が我が家でちょっとしたブームだ。先週は北海道出身とバレてしまう特定の言葉に「角食(かくしょく)」と「生寿司(なまずし)」があがっていた。
「角食」は食パンの事。我が家では日常飛び交う言葉。次女がテレビを見て、「えーっつ!角食じゃないのお?普通は食パンって言うのおー??」と驚いていたが、母親の言葉をお腹の中にいるときからずーっと聞いているわけだから、標準語の基準は札幌生まれで札幌育ちの私。びっくりするのも当然だ。
その他にも、バンドエイドは「サビオ」だし、捨てるは「投げる」だし、手袋は「はめる」ではなく「はく」だし・・・・。お赤飯は小豆ではなく甘納豆。数えだしたらキリがない。
我が家の3人娘は、札幌出身の母親と三重県出身の父親の両方から様々な事を吸収し、帰省した時にも両家の違いを楽しみながら大きくなった。夏休みや冬休みに帰る田舎があり、両方から大歓迎を受け可愛がられるというのは本当に幸せだ。
インナーチャイルドの誘導を受けて、私は父が大好きになった。物静かで口下手で、地味な父。思えば、思春期の頃から少しずつ距離ができて、決して嫌いなわけではないのだけれど、共通の話題もなくすれ違って行った気がする。
亡くなった母からは、結構父に対する愚痴を聞いていた。父が単身赴任で大変だったこともあるのだろうが、これと言った趣味もなくまじめで仕事一筋の地味な父に物足りなさもあったと思う。世の中が段々豊かになり、旅行や食べ歩きが好きだった母と、家でゴロゴロしている父とでは、娘心にも大きな隔たりを感じていた。
母に言われ深く傷ついた言葉があった。「あんたがお腹にいた時に、お父さんに堕ろせと言われたのよ」と。母はつわりがとてもひどかったそうだ。父の仕事の関係で、一時二人で東京で暮らしたことがあったと聞いている。仕事のために上京し、そのうちに私がお腹にいることが分かり、堕ろせと言われたという事だった。若い二人が慣れぬ東京に出てきて、頼る人もなく、つわりがひどい妻を見て、やむにやまれぬ発言だったと思うのだが、母の口から聞いた時は、ショックと言うより「いつもと同じ私でいなければ」と義務のようなものを感じ、平然と装う自分がいた。そして私は母から聞いたことを封印した。
高江洲代表の誘導には様々なバージョンがある。インナーチャイルドの誘導を受け、さらに母親の胎内に戻るという誘導を受けた時、私は溢れる涙をこらえる事が出来なかった。
つわりの辛さよりもお腹の私を気遣う若い母の声。そして、お腹の私に語りかける若い父。私は若い父と母の会話を聞いた。父と母は私の誕生を心待ちにしていた。私は愛されそして望まれていた。
人は時として、他人を傷つけてしまう。他人だけではなく自分自身も。
私は過去にさかのぼり、自分自身の存在の意味を知ることができ幸運だった。
複雑なしがらみや親子関係で悩んでいる方はたくさんおられる事と思う。もしその方々が自分の子供の頃に戻り、自分が覚えていない事実に気付くことができたなら、がんじがらめのキモチの糸はちょっぴりかもしれないがほぐれるのではと思うし、ほぐれてほしいと願わずにいられない。
今はオリンピックの真っ最中。我が家は真央ちゃんの活躍でモチキリだ。真央ちゃんの華麗な滑りは子どもたちの記憶の中に鮮やかに残るのだろう。私にとって、札幌オリンピックの時のジャネット・リン選手の尻もちシーンと彼女の笑顔、そして赤いコスチュームが鮮烈なキオクとして残っているのと同じように。
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さそい水さんComments