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夫は、煙草を吸う。 ひとから猛然と「やめさせたほうがいい」と言われることがあるが、煙草をやめろとは言えないし、そうしたほうがいい、とも考えていない。
夫がやめたい、と言えば、協力しないでもないが。
それでも夫は、ひと知れず、外に出て煙草を吸う。
自分の仕事部屋から小さな庭に出て、煙草を吸っているときの背中を、なんだかわたしは、ちょっと好きなのだ。
それがこのごろ、なぜだろう。
わざわざ階段を上がり、2階のベランダに出て吸うようになっている。何かを見下ろしているような様子。
「何か、見えるの?」
「真昼のホタルが……」
なんだなんだ、真昼のホタルって。
ベランダの手すりにつかまって、下を覗く。
あ、ホタル。
なんという名の草かわからないけど、黄色い花がいっぱい咲いている。
ホタルみたいに見える。
「花が開くのは日中だけで、夕方から朝にかけてつぼんでるんだ」
そういえば、数日前、夫とのあいだに、こんなやりとりがあった。
「庭の草とり、しなくちゃね」「もうしたよ」
だけど庭には雑草がぴょこぴょこ生えていて、草とりをしたようには、とても見えなかった。あのときは、草とりなまけて「もうした」なんて、何さ、と思った。
そうか、真昼に、きいろいホタルを飛ばすためだったんだなあ。

2階のベランダから見た小さな庭(ほんとは、駐車スペース。
車をもたないわたしたちにとっての、空き地)。


この花、何だろう。
繁殖力をもつ怪獣のような草だったら……?。
何にも知らない相手。
少しは知りたい相手。

朝、まだ起きていない花。
午前8時くらいから、ゆっくり花が開きはじめます。
夕方は、暗くなる前に、また閉じます。
眠るんでしょうね。
雨が落ちてくる直前にも、なにかを予感するように、
閉じます。