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profile:山本ふみこ
随筆家。1958年北海道生まれ。つれあいと娘3人との5人暮らし。ふだんの生活をさりげなく描いたエッセイで読者の支持を集める。著書に『片づけたがり』 『おいしい くふう たのしい くふう 』、『こぎれい、こざっぱり』、『人づきあい学習帖』、『親がしてやれることなんて、ほんの少し』(ともにオレンジページ)、『家族のさじかげん』(家の光協会)など。

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2013/12/24
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カテゴリ: うふふ日記


 この日は出かける用事もなく、急ぎの仕事もなかった。手紙書きと書類整理がたまってはいたけれども、休養を選んでもよさそうだった。とつぜん手にした幸運がこぼれないように気をつけながら、階上にある夫の仕事部屋に駆け上がる。
 「きょうわたし、夕方まで廃人になります」
 と宣言する。
 「ああ、そう。アルプスの少女になるんだね」
 「え?」
 「ほんとうの廃人になっちゃうと困るからさ、アルプスの少女ハイジンね。早く明るいハイジに戻ってよ」

 きょうひと日、「通常の社会生活を営むことができなくなったひと=廃人」となるほどの「覚悟」で布団にくるまろうとしていたというのに、夫の駄洒落によってわたしは、いきなり、アルムの山に放りだされた。放りだされるや、いきなり眠った。夢を見た。ことしうまくゆかなかったこと、しくじり、至らなかった事ごとのシンボルだろうか、灰色の渦が夢のなかにあらわれ、苦悩のおさらいをさせようとしたが、なにしろ場面がスイスの山だ。灰色の渦巻きは、長くとどまることもできずに、消えてしまった。
 たしかに、ことし、うまくゆかないこともあった、しくじりもあった、至らなかったことも少なくはなかった……。しかし、自分にはいいところが(少しは)あるらしく思えたのもまた事実だった。
 その事実は、夢を見ているわたしの気持ちを明るくした。
 目覚めたとき、あるがまま生きるがよし、という心持ちになっていた。夢にまであらわれてわたしを責め立てようとした苦悩の多くは、あるがままの生き様を隠そうとし、とりつくろうことによって生じたものかもしれない。寝ぼけた頭で、わたしはそう考えていた。

 「ハイジン、目覚めました」
 と夕方報告したときも、
 「ああ、そう。お帰り」
 と夫の受け答えはそっけなかったが、そんなこと、いいんだ。
 いろいろなことに一所けん命取り組むんだ、覚悟もして生きるんだ。けれど、思い詰めず、遊ぶくらいのゆとりを持とう。
 あるがままのわたしを信じて、明るい気持ちでゆこう。

ブログミニ将棋.jpg

「NHK杯テレビ将棋トーナメント」を観ました。
3回戦第4局 羽生善治三冠 対 大石直嗣六段。
結果は大石六段の勝ちでした。
わたしが観ていたときすでに、後手の大石六段が
優勢でしたが、用事を終えて結果を知ったときには
驚きました。
羽生三冠が弱くなったのではなく……、
若手が強くなっているのです。
負けるというのはわるくないなあ、と
将棋の対局を見ていていつも思います。
「負けました」と云うときの棋士が立派だからです。

NHK杯3回戦第4局をさいごまで見られなかったので、
写真の携帯用の将棋盤を持って(ただ持って)、
用事に出かけました。

〈お知らせ〉
12月はじめ、
『暮らしと台所の歳時記 旬の野菜で感じる七十二候』
(PHP研究所)を刊行しました。
手にとって見ていただけますれば……幸いです。

            *

ことしの「うふふ日記」はこれで終わりです。
1年間、おつきあいいただき、またたくさんおたより(コメント)を
いただき、どうもありがとうございました。
来年は1月7日(火)スタートです。
どうか皆さま、佳い年をお迎えください。






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最終更新日  2013/12/24 10:34:43 AM
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