おるはの缶詰工場

おるはの缶詰工場

2009年01月27日
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カテゴリ: 妄想天国
 視線の先で、男が3人の女に詰め寄られている。いつものように、浮気がばれての修羅場だろう。

 もう何度も繰り返し見ている光景に、呆れた溜息しか出てこない。

「なんで同じことを繰り返すのか…」

 反省、というものをしないのだろう。

 蜜を求める蝶のように、ひらひらとあちらこちらへ飛びまわる彼。

 そう考えると、そもそも浮気がダメだということがわかっていない可能性もある。

「ふむ、それはよくないな。浮気がいけないことだとしっかり教えないと」

 そろそろちゃんと捕まえよう、と思っていた矢先のこの修羅場。いい切っ掛けかもしれない。

「食べちゃおうか」



 うん、それでいこう。

 視線を戻せば、すでに修羅場も終わったようだ。恐る恐る頬を触っている様子に、まさかと彼のもとへ確認しに向かう。

 あぁ、やっぱり、頬に血がにじんでいた。

 報復だな、3人まとめて。

 物騒なことを考えつつも、彼の後ろから声をかけた。

「相変わらずのいい加減さだな」

「うるせー」

 ある程度予想していたのか、私が近づいても驚かない。最初のころは「なんでここにいるんだ!」と騒いでいたのに。その怯えて噛みつく姿も可愛かっただけに、ちょっとつまらないと思ってしまうのは贅沢な悩みだろうか。

「ほら、こっち向け」

 傷の具合を確かめるために顎に手をかけ、上を向かせる。

 愛嬌のある可愛い顔にこんな傷をつけるだなんて、正気じゃないな。



 ポケットから取り出したハンカチで、頬の血を拭われた。

「うるせー」

 高校時代。先輩後輩という立場で出会った彼に、どうしてこんなにも執着するんだろう?

 他に後輩なんていっぱいいた。けれど、彼だけがその中にいて埋もれることなく、私を惹きつけてやまない。

 それが「恋」なのか、「執着」なのか、自分でもわかっていない。けれど、そばに置いておきたいと思ったとき、恋人にしてしまえばいいのだと気がついた。そのとき、まさか断られるとは思ってもみなかったが。



 予想外に拒絶され、逃げられてしまったが、もちろん諦めるつもりはなかった。

 一定の距離を保って彼を追い続け……今日はついに手を伸ばそうと決意した。

「さ、ご飯でも食べに行くか」

「うるせー」

 同じ言葉を三度返される。

 それが拒絶のつもりだろうか。私には可愛くすねているようにしか見えないのだが。

 可愛いねぇと、ニヤリと笑って見せた。

「なんだったら、私の部屋でもいいが」

「絶対いやだ!」

 すでに巣にかかった蝶は、もがけばもがくほどに蜘蛛の糸に身をからめとられるというのに。

 離した手をもう一度あごにかける。

 人差し指で少し荒れた唇をたどると、彼は少し怯えたような目をしながらも、私の手を振り払うことはない。

 ほら、やっぱり私のモノじゃないか。

 蜘蛛の巣にかかった蝶が、助からないのならいっそのこと早く食べてほしいと願う、そんな気持ちなのだろうか。

「じゃぁ、今度君の家に行くよ」

 お望みどおり、頭からバリバリ食べるためにね。






予告して、間をあけずにアップできたのが、珍しい~と思って♪
……なんだか祐輔さんチックになったのは、気にしないでください!
やっぱりどうしてもいじめっ子を書くと、あの人になってしまう。

一番書きたかった最後のセリフがかけて満足です。





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最終更新日  2009年01月27日 15時22分35秒
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