おるはの缶詰工場

おるはの缶詰工場

2009年08月20日
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カテゴリ: 妄想天国
「青虫いらっしゃーい」

 微かに緊張しながら訪れた三智の家で、天敵が台所に立っていた。

「お茶いれようか?」

 と言い出すほど、三智の家でくつろいでいるのは、別出版社に勤める花柿一瑠。揚羽の天敵中の天敵だった。

「いらない」

「なーんだ、青虫が好きそうな青汁用意して待ってたのに」

「僕の名前は『青虫』じゃないし、青汁なんて好きじゃない!」

 一気に吐き捨てるように言うと、くらりとめまいがした。

 興奮したせいで、なんだか熱が上がってきたようだ。けど、弱っているところを見せるのがイヤで、意地になってそこそこ整った一瑠の顔を睨みつけた。



 あの頃と一緒で、揚羽が困るのを楽しんでいるとしか思えない。

 以前、揚羽が三智と二人きりになろうとすると、いつも一瑠が割り込んで邪魔してきた。一度文句を言ったら「だって恋人の絢ちゃんが可哀そうじゃないか」と真顔で言われた。

『可哀そう』と同情するなら、一瑠が慰めてやればいい。

 そう言ってやりたかったのに、なぜかそれは言葉にできなかった。

 その代りに、三智を落とそうと躍起になった。

 もちろん結果は惨敗。いっそ乗ってしまおうと迫っていたところを絢に目撃され、あっけなく撃退された。

「柚木くん、いらっしゃい」

「あ…、先生。お邪魔してます」

「来週の締め切りの打ち合わせだっけ?」

「はい」

 あんなことがあったのに、三智は以前と変わらない態度だった。



 そんなに魅力がないかな、とため息をつくと、思いがけず熱い息だった。

「どうかした?」

「いえっ、なんでもないです」

 風邪のせいでだるい身体に鞭をうち、必死に取り繕った笑みを浮かべて、なんとか打ち合わせを終えることができた。

 これでようやく休めることができる。



「青虫」

「なんだよっ」

「コレ」

 押しつけられたのはプラスチックの薬の瓶。

『こどもかぜシロップ』

 馬鹿にしているのか、と押し返そうとした揚羽の手を、一瑠がギュッと掴む。

「これ飲んでいい子で寝てな」

 低くそう命令されて、揚羽はかっと顔が熱くなったのを感じた。

 熱のせいだけじゃなく、火照る頬が熱くてたまらなかった。











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最終更新日  2009年08月20日 16時31分19秒
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