コミックや小説の感想つれづれ書き~かなり雑多に

コミックや小説の感想つれづれ書き~かなり雑多に

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2025.10.16
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カテゴリ: 小説感想


いつまでも続きを待っている小説のひとつです。短編集でないかなぁ…

いまでは大好きな作品ですが、むかしはそれほど惹かれなかったんですよね。
たぶん「異世界で活躍する女子高生」の話が当時はあまり好きではなかったのかもしれません。

なにしろこれ、むかーしむかしは、ホワイトハートなる少女向けの小説の文庫で出てたんですよ…表紙は同じイラストレーターさんだったと記憶してますが、新潮のこれとは違います。

この当時、異世界に飛ばされて主人公が活躍するって話はそこそこありました。
いまの「なろう」みたいに猫も杓子もって有様ではなかったのですが、スタンダードな話といってよかったでしょう。ナルニアなどの名作も海外にはありましたからね。


そんな中でこちらは異彩を放っていた…かどうかは実は微妙なところなんですよ。
他にもなかなかにおもしろい作品はありましたから。

発表された当時から好きだった人も多いでしょうけれどね。

今では大好きなんですが、若かりし自分は…どうもこう…異世界に飛ばされて活躍っていうのに憧れなかったこともあり、それで好きと思えなかったんですよね。
いまでももちろん異世界に飛ばされるのは憧れないし、実のところそれ系の「なろう」作品はほとんど…好みじゃありません。なろうの異世界転移、転生、どちらも基本、読むのは避けています。

それでもやはり、この作品は面白いなと言えます。
異世界転移ものではあるし、ある意味で「転生」でもあるんですが、この話は「ゲーム内転生」の要素もあるんですよ。

それをうまく世界観に落とし込めているし無理がないから好き、なのですよね。

ゲーム転生っぽい、というのは後々になって感じたことです。

というのも、この「十二国」には不可侵のルールがありますよね?
他国への侵略はいっさい認めない、それしたら王様の命とりますし、国も滅ぼしますからねっていう。

ほかにもこまごまと「ルール」が存在している。

これに関してはヒロインの陽子も後に気づくんですよ。これはもともと日本人だったから気づいたことでもあるでしょう。ゲーム、とは言っていませんが。



陽子がヒロインとなるこちらの月の影では、陽子も必死すぎてそれに気づくことはありませんでしたけどね。


この上下二冊は、読むのがしんどい…とくに上巻は、と言われますね。

それもそのはずで、陽子の置かれた立場というか状況があまりに悪すぎるからなんですよ。
「ネズミが出てくるまでの辛抱だ」が合言葉になってますね。

この前半の陽子の悲嘆って、異世界転移には必要なことと思うんですよ。リアリティーをだすめたにも。


陽子にしても「無双」なんですよ。
なにしろ「王様」ですからね?
めったなことじゃ死なないし、言葉も話すことはできる。剣を振るうために「力」もつけてもらっている。

これってなろうあるあるの「チート」能力なんですよ。

それでも陽子は自分を厭いながらもなんとか生き抜いてやっと自分を認められ、最終的には王になる決意をする。
居場所が欲しいだのなんだのグダグダいってそうで、言ってないんですよ。

はじめはちゃんと日本に帰りたい、とも思っていた。
でも日本に陽子の居場所はないとも感じていた。

このあたりは、昔も今も変わらない「思春期」の悩みの一つですよね。


物語のはじまりに現れる金髪美形…景麒ときたら、そっけないし強引だし、もうちょっとやりようはなかったんかーいと思わせる冷徹さなんですが、ラストで再会したときは、なんか可愛いやつなんですよ。
ここらが作者さん「さすがだなぁ」と思わせる筆致ですよね。



どこでだったかで読んだのですが、十二国の王様たちは、「銀河英雄伝説」の主人公の一人、ラインハルトの治世がうまくいったら、という前提があるようでした。つまり、ラインハルトが善政を敷き続けられたらっていうね。

ラインハルトも十二国の王様になれたらいいんだけどねぇ…ほらここって結婚して「血筋」を残す必要がないからね。これならたぶんジークも死なずに済んだんでは…

ま、他国への侵略はNGなのでラインハルトとしてはつまんないかもですね。


この他国への侵略戦争がない、っていうのはじつはすごくいい設定なんですよ。
というのも、侵略戦争がないがゆえに、文明も目覚ましく発展しないんですよ。
何百年経っても、文化はさほど変わらない。これって地球上で考えると不自然極まりないんです。

だって地球なら、100年経てばかなり文明は発達しますよね?
数十年でもかわりますよ?
ここ最近のことでもそれは目に見えてわかるでしょう。
むかしは「スマホ」なんてなかったんですよ。黒電話でジーコロジーコロかけていて、その前は電話すらなくて飛脚なんてものがいたりして、…そもそも「電気」の歴史だけでも目覚ましいものがある。

こうした文明、文化の発達が十二国では起こらないんですよ。
天帝がそれを阻止しているとしか思えない。
子供が性交によって生まれない、つまり卵生ということも大きいかとは思うけれど。

王様と官僚の寿命も長い…この寿命の長さも「発展性」を阻害してくるんですよね。

だからいつまでたっても文明は発展しない。
日本から…異世界からやってくる人間が改革しようにも、おそらく阻止されるでしょう。

戦争によるさまざまな「発明」もされないんですよ。
そもそも他国へ侵略できなくて、せいぜいが内紛止まりですから。
この内紛もかなり大がかりではあるんだけど、どこかで頭をあさえられているような感覚がきっとあり、文明発達の道には至らない。


この世界は「円環世界」でもあるので、ホラーの妙手であるこの作者さんらしい世界観の作り方だと思うんですよ。

同じ世界の中でぐるぐると回り続けていくしかない世界で、だれかの意図も働いている「ゲーム」のような世界。


だからこの話がもとはホラーから始まるのはとても納得がいくのですよね。

何度読み返しても、ホラーってのは面白い発見があるんですよ。だからこの話も、ファンタジーでありホラーであり、わたしにしてみたら好きにならずにはいられない物語だったってわけです。

いうて、ホラー小説はあまり読んでないんですが。


やはり名作には違いないと思うので、十二国シリーズ、未読の方には是非にとお勧めしたいです。





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最終更新日  2025.10.16 22:00:04
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