コミックや小説の感想つれづれ書き~かなり雑多に

コミックや小説の感想つれづれ書き~かなり雑多に

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2025.11.28
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カテゴリ: コミック感想


タイトルと表紙の絵で敬遠していたのですが、読んでみるととても面白かったです!
かなり丁寧なお話づくりをしているし、絵も漫画も上手で…その点で表紙のイラストはちょっと残念かも。

この話、令嬢ものであり、舞台は最初「学園もの」なんですよ。じつはそれで避けていたってこともあるんですよね。
私がなぜ学園ものを敬遠するかというと、「生徒会」がその理由の一つに挙げられるんですよ。

というのも、生徒会ってそんな権限ある??
たかだか数年…おそらくは三年程度しか在籍しない生徒にあれもこれもと「学校」の運営をさせますかね?
部活動をまとめる、学校の風紀の指導を生徒側から指摘するといった、部活や委員会の延長線上にあるものというのなら「生徒会」もわかるんですが、なろう系に限らず、学園ものってこの生徒会の権限がものすっごい広くて教師が何もしてこないんですよ。
さすがにおかしいでしょ…生徒ですよ?


もちろんこの「生徒会」がからんでこない、ごくふつうの学校が舞台なだけの青春ラブコメとかは好きなのも多いんですがね。

ともあれ、そんな理由で敬遠していたこちらのコミックでしたが、学園ものというよりはちゃんと「令嬢もの」として機能していて、学園での事件もちゃんと意味のあるものだったしで、読んでいてとても楽しかった。

ヒロインのビアトリスは最初こそおどおどって感じだったのですが、メインキャラのひとりのカイルという男子と出会うことで心を変え、どんどん強くなっていくんですよ。
この過程がとても丁寧に描かれていて、すごく納得もできたし、純粋に応援したくなる子でした。
公爵令嬢という立場をしっかりわきまえているのもよかったです。

アーネストという王太子のひどい対応というか、突然冷たくなり、それゆえに「関係改善」はできないものとビアトリスは最終的にアーネストと婚約を解消する流れとなるんですが、この婚約解消「劇」がとてもよかった。

かなりてこずるんですね。
けれどビアトリスは屈せず、カイルの協力を得て、「劇」をやり通すんですよ。

この婚約解消劇のうまさって、アーネストに周囲の非難を向けるやり口なんですが、見ていてちゃんと「スカッと」しないんですよ。アーネストが気の毒になるながれになっているのがいい。
もちろんビアトリスもそれを承知していて、あえてアーネストを傷つけるように仕組んだんですよ。
これも当然のことで、同情心はあるにしても、ビアトリス自身も傷ついたのはたしかなのだから、その程度の意趣返しはしてもいい。けれども、やりすぎない程度に抑える、という。


この時傍にいたカイルの態度も良かった。

なによりこのアーネストを傷つけるための婚約解消劇があったおかげで、アーネストの性格の深堀もできるようになって、読むと切なくなるんですよ…アーネストかわいそうなんですよ、いやほんと。
もちろん、カイルもここで深堀され、アーネストとカイル、どちらにも同情できる話の展開になっている。

ここらの描き方は漫画家さんがうまいなと感じました。
アーネストの母親はある種の「毒親」なんですが、憎み切れないキャラとして描かれているのもいいですね


そして、アーネストにべったりくっついてた嫌な女だったマリアもですねー
すごくいいんですよ。
この子、いい子だなと感じられるようになりますよ。
逞しくて、いい子なんですよ、ヒロインに屈しないけれど、ちゃんと頭を下げて最低限の謝罪はします。反省というよりは、ちゃんと義理人情があるっていうか。筋は通す子なんですよ。
読み進めていくと、このマリアも嫌いには慣れないし…幼なじみの彼とうまくいきますようにと願わずにはいられません。


アーネストがビアトリスに執着する理由も納得のいくものだったんですよ。
だからビアトリスとの婚約が解消されるにいたって、一番解放されたのはアーネストだったんじゃないかな…もちろん母親との対峙ではまだ勝てないだろうけど、この執着からの解放はアーネストをより良い王になるために必要な出来事だったと、おそらく後に彼自身が思えるでしょう
うーん、アーネストも幸せになってほしいな…かーちゃんもね…いいかげん、アーネストを認めてあげなよっていう


ヒーローにあたるカイルも、すごくいいやつなんで、めっちゃ好きなんですよね。
彼の出生のこととか、わりと早い段階でにおわせてくれているのも良かったと思う。
ヒロインに対しての距離の取り方が絶妙で、いやらしさがないのもいいですね。さいしょ、「友人」としてわきまえた態度をとっているんですよ。まわりにはビアトリスへの好意がモロバレでも、ね。

そして決めるところでちゃんときめてくれるんで、かっこいいし、そりゃビアトリスも惚れるやろっていう自然な流れが作られてます。

できすぎ君ではあるんですが、いやみったらしくないんですよ、カイル。
そしてそのできすぎ君なカイルも、幼い頃に喪失感はあって、アーネストを妬んだりもしていた。
子の件は大事で、それゆえにアーネストに対して多少なり同情できるようにもなるんですよ。

つまり、カイルはアーネストを憎み切れない。

この画き方がとても丁寧で、カイルもええなぁ…となるわけですよ。
アーネストは逆転劇で「いいな」と思えるキャラなんですが、じつはカイルもそうで、さすがにできすぎやろな印象だったんですが、いやみのないイケメンってのをゆっくりと見せられたおかげで、「やっぱりいいな」と印象が良い意味で変わるんですよ。
つまりどっちもいい男やで…いやアーネストは弱いんですけどね。アーネストは頑張ってほしい子やで…

ビアトリスにたいしての印象も、話が進んでいくと変わっていきます。
ちゃんと応援したくなるキャラなんですよ。
友人がふたりできるんですが、それもごく自然な流れだったように感じますし、その友人との交流がベアトリスを強くしていく過程にも納得でした。

父親との関係も改善されていくあたり、
「関係改善をあきらめて」
のタイトルをうまく回収できているように感じました。これは友人という、学園での人間関係すべてにおいてかもしれませんが。

初期ベアトリスは委縮していたこともあって、誰に対しても人間関係の構築を「あきらめていた」感があるんですよ。

でもアーネストを「あきらめて」代わりにほかの人たちとの関係改善を試みたことで、いろいろと変わっていく。

タイトルの前半部分は回収できたかなーと感じました。
まあ、塩対応はどうかとおもうんですが…このタイトルぶっちゃけあまり好きでなかったので読むのを避けてたんですけどね。

ともあれ。
アーネストとの婚約は無事解消され、その後はカイルとの恋愛にいくわけですが、それもなかなかスムーズにはいきません。
邪魔がはいるといういい方は適切ではないんですが、このくらいの「邪魔」は恋愛ものの漫画には必要かな、ということがおこります。
これに関しては、ビアトリスもカイルもちゃんと情報共有できているのがいいんですよね。

なので、すれちがって勘違いしてワタシカワイソーナノーな流れにならないのはほんとに心地よいです。

いい意味でのもどかしさがあって、「あーもうはやく両想いになーれ」と純粋に楽しめます。
ビアトリスの「恋心」がゆっくり育っていくのもいいんですよね。
そりゃそーやろっていう。前段階があるからですね。アーネストのこと、きちんと割り切れたにしたって、だったら次いこ次みたいにかるーい感じがありません。

好きを自覚していても、恐れはあってしかるべきなんですよ。
まだ若いからなおさらです。


ここまでの流れ、存外さくさく進むので、ダレる感じはありませんでした。
漫画家さんの力量は高いと言っていいと思います。

キャラの絵も安定していて、ちゃんと描き分けができています。
キャラはけっこう多めなんですがちゃんと個性が感じられます。

表紙絵だけみると若干古臭く感じるかもしれませんけれどね。
カイルやアーネストらは表紙より、漫画の中のほうがかっこよく描けてます。


なろう系の令嬢ものであるには違いないんですが、キャラの性格などをきちんと考えられたよい少女漫画だなと感じました。

じつはこれ、似た内容のコミックもあるんですが、大枠はにているけれど調理の仕方が違うため、ちゃんと別の物語として読み進めていきます。どちらも好きと思えましたからね。


じつによい少女漫画でしたので、これは令嬢もの好きな方にはお勧めしたいコミックです。





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最終更新日  2025.11.28 22:00:05
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