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中君はいつもより沈み込んでいらっしゃいます。
『きっと六の姫とのご結婚に思い悩んでいらっしゃるのだろう』
と可哀そうにお思いになって、細やかに世の中のあれこれを、
まるで兄妹のように教えお慰めになります。
もともと声は大君に似ておいででしたが、
今はまるで大君その人が目の前にいらっしゃるようで、
もし人目がなければ簾垂を引き上げて中に入り、
差し向かいで悩みを伺いたいほどなのです。
『それにしても、真面目な人であっても女のために物思いをしない人は、
この世にいないものだな』と、痛切にお感じになるのでした。
「私は他人が望むようなきらびやかな出世には縁遠く、
それゆえ不遇のために嘆き悲しむことも、
心に思い悩むこともなく生きていけるものと思って参りました。
しかしおのずから悲しみを得、ばかばかしくも悔しい物思いまでいたしまして、
あれこれ気持ちが休まらずくよくよ思い悩んでおりますけれど、
それも甲斐のないことでございます。
世間の人が重大なこととする官位に悩むのは道理ですが、
私の悩みはそれより罪が深いように思います」
など言いながら、
持っていらした朝顔の花を扇に置いて見ていらっしゃいましたが、
萎れてしだいに赤みを帯びていきますのも
反って風情があるようにお感じになって、
そっと簾垂の中に差し入れて、
「よそへてぞ 見るべかりける白露の 契りか置きし 朝顔の花
(かつて亡き大君が身代わりにとてお約束したあなたさまを、
やはり私のものとしてお世話すべきでした)」
ことさら露を落とさないように持って来たわけでもありませんのに、
露を置いたまま枯れていく様子ですので、中君、
「消えぬ間に 枯れぬる花のはかなさに おくるゝ露は 猶ぞまされる
(露が消えぬ間に枯れてしまう花の儚さよりも、
残された露の身である私のほうが儚さではまさっております)
何を頼りにしての命でございましょう」
と、たいそうひっそりと仰せになって、
慎まし気に言葉を言い消していらっしゃるご様子に、
『やはり大君によく似ていらっしゃる』
と思うにつけても悲しいのでした。