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中君は、
『やはりこんなことになるのね。ああ、なんと嫌なこと』
とお思いになって、お返事もなさらず中へ引き込んでしまわれました。
すると中納言は中君について中に入り、
ひどく馴れ馴れしい様子で添い臥していらっしゃいます。
「宮には内緒で宇治においでになるほうが、
私にとっては嬉しいことではございます。
まさか聞き違いかと存じまして思わず御簾の内に入ってしまいました。
それにしてもよそよそしい態度でいらっしゃるとは
情けないことでございますな」
と、お恨みになりますので、中君はお返事もできず
反って中納言を憎らしく思ってしまうのでしたが、気持ちを抑えて、
「思いがけないことをなさるのですね。
女房たちがどう思いましょう。浅ましいことですわ」
と、泣きそうな気配なのもお道理ですので、たいそうお可哀そうなのです。
「このようなことで咎められはしないでしょう。
これくらいのことは宇治にてもご経験済みでいらっしゃいましょう。
故・大君のお許しもございましたのに、反って不自然でございます。
私には好色者のような不埒な気持ちなどございませんので、
どうかご安心くださいまし」
と、たいそう落ち着いたお振舞いをなさるのですが、
匂宮に譲ってしまった無念さ、悔しさを募らせていったことを
よくよく訴え続けて、捉えたお袖を離す様子もありません。
中君はどうしようもなく困惑していますのも、世の常というものです。
なまなか気心の知れた間柄でもありますので、
恥ずかしくまた悔しくついお泣きになります。中納言は、
「おや、お泣きになるとはずいぶん子供っぽい」
と、言ってはみたものの、言いようもなく可憐でありながら思慮深く、
気品のある態度が、昔宇治で添い寝した時よりも
殊の外女らしく成長なさったご様子を目にして、
『自分で宮に譲ったくせに、今更こんなにくよくよするなんて』
と、悔しさに「音ぞのみ鳴く」のでした。
近くにお仕えする女房は二人ほどいるのですが
知らない男が入ってきたならともかく、
お二人とも親しい間柄でいらっしゃいますのでお側にいるのは具合が悪く、
知らぬふりをしてその場を離れてしまいました。