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著者・編者 | アイザック・アシモフ=著 |
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出版情報 | 早川書房 |
出版年月 | 1994年6月発行 |
次にベイリは、ファストルフ博士の娘で、博士と敵対するロボット工学研究所 RIA のヴァジリア博士、彼女に気のあるサンティリクス・グレミオニス、ファストルフ博士の弟子で RIA 所長のケルドン・アマディロ博士と続けて面談する。アマディロは、宇宙国家(スペーサー・ワールド)では個人主義の傾向が強まっていることを指摘し、その欠点を補うために RIA を設立したという。さらに、個人主義には自己愛がつきまとうと批判する。そして、12 時間後にベイリがオーロラを退去するように、議会を動かすと通告した。
アマディロに足止めされたベイリ一行は、雷雨に遭遇する。まだ〈そと〉に慣れていないベイリはパニックに陥るが、ダニールのみに危険が迫っていることを告げ、2 体のロボットを逃がす。救出されたベイリは、グレディアと夜を過ごした。
翌日、オーロラ政府の議長、アマディロ所長、ファストルフ博士との会談に臨み、ファストルフ博士の名誉と地球の未来は救われた。
だが、ベイリには頭に引っかかることがあった――「彼がまっさきにあそこにやってきた」とは一体何者なのか。
『はだかの太陽』でも、ソラリアが極端な個人主義に陥っていたことが紹介されたが、オーロラはソラリアと違ってセックス・フリーであるものの、個人主義という点においては似ている。これらの個人主義は、アマディロが言う自己愛を超え、きわめて独善的に描かれている。
ジスカルドは、地球のシティと同じで、オーロラ人もロボットという壁にかこまれて暮しており、それが個人の過大評価に繋がると指摘する。
一方、ベイリはしばしば、「ヨシャパテ!」(Jehoshaphat !)という感嘆語を使うが、これはもちろん旧約聖書からの引用。ヨシャパテ王は、勝ち目のない戦に際し、聖歌隊を送り込むことで勝利したという話が伝わっている(第2 歴代誌20章)。イライジャ・ベイリのイライイジャは、旧約聖書の預言者エリアの英語読み。ヨシャパテ王と同時代の人だったとされている。
ベイリが、自からの欠点を克服し、事件を解決していくのは、彼の刑事としての使命感であり、公共の福祉に寄与しなければならないという義務感であろう。
個人主義・自由主義のアメリカで人気を博した SF 作家のアシモフが、このような東洋人臭い主人公を描くのは意外なことだが、彼は実はロシアに生まれた。ソ連成立後にアメリカに移民したのである。その生い立ちが影響しているのだろう。本作を含む晩年の作品は、いよいよ「公共の福祉=人類社会の幸福」について深く斬り込んで行く。
ロボット・ジスカルドは、ベイリとの別れ際に「さようなら、フレンド・イライジャ。これだけは憶えておいてください。“夜明けの世界”という言葉を、人々はオーロラに対して用いますが、いまこの時点から、地球こそ、まことの“夜明けの世界”だということを」と告げる。
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