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ソウル五輪で金メダルをとったマラソンのジェリンド・ボルディン選手が、レースに勝つための条件を次のように言っていた。 「まず、トレーニングだ。次にプレッシャーなしでレースに挑める精神的コンディションをつくらなければならない」 ボルディン選手は、ソウル五輪で、日本の中山竹通選手が勝つと思って、マークしていた。ところが、実際に優勝したのはボルディン自身だった。彼は、その理由をこう分析している。「中山はレース中、ナーバスになり、余計なことでエネルギーを浪費してしまい、ラストスパートの余力が残っていなかった」 日本人がオリンピックで勝てないのは「プレッシャーに弱い」からだといわれる。しかしオリンピック選手に限らず、「ここ一番」というときに実力が出せない。あがってしまうという人は多いのではないだろうか。 「失敗するのではないか」「予想しなかったことが起こるかもしれない」「その日に限ってコンディションがよくないかもしれない」などなど、心配し始めれば、心配のタネは山ほどある。 よくなるなら心配するのもいいが、心配するだけでは何も変わらないのである。 それでは、どうすれば、プレッシャーを感じることなくレースに挑めるようになるのだろうか。ボルディン選手はこう言う。 「レースにあまり出ないからナーバスになるのだ。私のようにもっと多くのレースに出たほうがよい」 心配性でプレッシャーに弱い人間は、人生の゛レース゛に出ることが苦痛だから出場するのを避ける。けれども、避けていたら、いつまでたってもレースに慣れない。 たくさんのレースに出ていれば、失敗を繰り返すが、度胸もついてくる。レースに勝つためには、心配するよりも、まずはたくさんのレースに出ることだ。恐れずにレースに出ることに挑戦してほしい。 あるプロテニスプレーヤーは、「強くなる秘訣は?」と聞かれてこう答えている。 「たくさん負けることです」
かつて、女子選手で初めて、陸上競技の一万メートルで三十分台の記録を出したノルウェーのイングリッド・クリスチャンセン選手。彼女は、結婚して子供が生まれてから急に記録が伸びたと言っていた。それまでは、それほど目立った活躍をしていなかったのに、出産を機に、めきめきと頭角を現したのだ。その理由を、彼女はこう語る。「それまでは競技のことばかり考えていた。十分にリラックスすることもなかったし、レースでは逆に精神集中ができなかった。子供ができてからは、練習時間は減ったけど、すごく集中できるようになった」 子供の世話に時間をとられるようになったおかげで、かえって頭の切り替えが早くなったという。家事は全て自分でやり、料理や掃除をしたり、子供の世話をしているときは、レースのことはまったく考えないのだそうだ。 この話を聞くと、仕事するばかりが能ではないことがよく分かる。仕事をする時間が多ければ多いほど、いい仕事ができるわけではない。仕事のことばかり考えていれば仕事がうまく運ぶわけではないのだ。 リラックスする時間を持つと、逆に、集中するときには集中できる。遊びの時間を上手にとれば、仕事もはかどる。クリスチャンセン選手のように、家族との団欒の時間も大切だ。世のおとうさん族も、夜、家に戻って、妻や子供が話しかけてきたとき、「仕事で疲れているのに・・・」といわずに話す時間を持ってみてはどうだろう。 一日中、仕事のことで頭をいっぱいにしていては、ずっと張り詰めたゴムのように、伸びっぱなしになってしまう。ときにはゆるめることが、長持ちさせるコツだ。 ワーカホリックにとっては、仕事以外のことを考えている時間は「もったいない」「ムダな時間」と考えがちだ。しかし、実はそれがまったくムダではなく、生きた時間になるのである。 クリスチャンセン選手はこう言う。 「レースが全てだと疲れるでしょう、勝てなかったらがっかりするし、負けたときは家に帰って子供の世話をしていると、気も楽になるし、すぐに忘れられるわ」 気持ちの切り替えが下手な人は、ぜひこの方法を試してみたいものだ。
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