或る日の“ことのは”2

或る日の“ことのは”2

2015.11.27
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薄いコーヒーを啜りながら談笑していたら、友人が突然話題を変えた。

「あたし、この間、老眼鏡作ってん」

・・・
・・・

こんな場合、どう言えば地雷を回避出来るのだろう?

倍速で考えを巡らせた。

1 そっかー、誰もが通る道だよねー

2 え、まだ早いよー、モノが見辛いならちゃんと診察して貰わなきゃ! 病院行った?






友人は私の小さな苦悩には気付かなかった。


「仕事してると、夕方になるともう、メガネだろうとコンタクトだろうと、対象物が見難くてね、

見え方がおかしいんで、診察してもらったの」

「そうしたら、受ける検査受ける検査、どう考えても「老眼」に対する検査なのね」

「検査が終わったらなんとなく私には判ってたんだけどさ、医師が「老眼」て言わないの」

「あの手この手で「老眼」と言う言葉を回避するのよ」

「『加齢や疲れ目で目の焦点が合いにくくなる症状』みたいにね」

「それを何度も繰り返すからイライラして、」

「『先生、私気にしませんから。 はっきり老眼って仰って下さっていいです!』って言ったら」

「『そう言って頂けるなら有難いですが』とか言いながら、やっぱり「老眼」と言わない」

「で、眼鏡の処方箋を貰って、眼鏡屋に行ったら」



とかいうわけ」

「何で皆、『老眼』って言わないわけ? 失礼だとか思うわけ?こっちは思わないのに」

「ホント腫れ物に触られるような扱いが頭にくるわ」



私は、一瞬前の自分の逡巡を悟られまいと努めた。



自分たちがそういう年齢であること、

世間から少しセンシティブに扱われる立場であることを、少し、思った。



一応。

パソコンやスマートフォンを使う関係で、「老眼」になる人はどんどん低年齢化しているという。

私はもともと近視である上に、強度の乱視であるから、裸眼では生活できず、

今の所、老眼鏡を購入する必要は無いけれど、

それでも、夕方酷く目のぼやける事だって無くはない。




『年をとるとね、』なんて言葉を聞くと、少しドキッとするようになった。

時間の経過と共に全てが劣ってゆく激流の中を、

立ち止まることも叶わず、足に纏わり付く水を蹴散らし、ざばざばと遡ってゆくような、

いつの頃からか、そんな流れに入ってしまった。

健脚で、私よりずっと足の早かった叔母は、痛みに苦しみ、歩行器が手放せないし、

肺病持ちの母は、近くの買い物ですら、すぐ疲れると言って中々出歩かない。

頑健に見える父すら、完全に右足を引き摺って歩いている。




どんな人間も、

「老い」に攻め立てられながら生きてゆかねばならないのだと、

せつない気持ちで頬杖を付いてみる。




しかし、医師に対し、

ハッキリ言って下さい!と言い切った友人のように、

どんな現実に対しても、オブラートに包んだりせず、

真正面から立ち向かって行きたいものだと、

・・・そう思う。












・・・辛いけど。






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最終更新日  2015.12.01 18:51:13
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