全313件 (313件中 1-50件目)
![]()
『阪神淡路大震災』における隠された事実を追う傑作謀略ミステリ フィクションとノンフィクションの境界線が分からなくなる悪夢の展開!!!GEQ価格:1,890円(税込、送料別)ご面倒ですが、続きの感想は、下記をクリックして拙ブログの「別館」でご覧になってください。→柴田哲孝(著)「GEQ」感想 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.10.08
![]()
「第20回紫式部文学賞」受賞作、川上未映子の長編小説「ヘヴン」川上未映子にしか書けない傑作です。ヘヴン価格:1,470円(税込、送料別)ご面倒ですが、続きの感想は、下記をクリックして拙ブログの「別館」でご覧になってください。→川上未映子(著)「ヘヴン」感想 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.09.29
![]()
おなじみのガリレオシリーズ。 人気シリーズゆえに図書館では常に貸出し中だった本書を、ようやく今頃になって書架に発見!! 読んでいると頭の中で福山雅治が奏でる「VS~知覚と快楽の螺旋♪」が鳴り響きました。 で、作品のリーダビリティはさすがなのですが・・・。聖女の救済価格:1,700円(税込、送料別)ご面倒ですが、続きの感想は、下記をクリックして拙ブログの「別館」でご覧になってください。→東野圭吾(著)「聖女の救済」感想都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.09.18
![]()
2009年本屋大賞の受賞作で、松たか子主演映画化の湊かなえ(著)「告白」よくできた作品で、舌を巻きました。告白価格:650円(税込、送料別)ご面倒ですが、続きの感想は、下記をクリックして拙ブログの「別館」でご覧になってください。→湊 かなえ(著)「告白」 感想都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.09.09
3DCGアニメ『ヒックとドラゴン』を、家族で鑑賞。 ああ、面白かった。 気持ちのいい映画で、娘(小4)と息子(中1)も大満足でした。続きの感想は、ご面倒ですが下記をクリックして拙ブログの「別館」でご覧になってください。→映画「ヒックとドラゴン」感想 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.08.31
![]()
痛快時代小説「のぼうの城」のぼうの城価格:1,575円(税込、送料別)ご面倒ですが、続きの感想は、下記をクリックして拙ブログの「別館」でご覧になってください。→和田竜(著)「のぼうの城」 感想 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.08.24
![]()
『永遠の0(ゼロ)』『ボックス!』で名をはせた著者による傑作時代小説『影法師』 自己を捨て、生涯をかけて男と男の友情を貫いたサムライの生き方に、胸がキューンとしました。 百田尚樹は、まちがいなくプラチナ作家です。影法師価格:1,680円(税込、送料別)ご面倒ですが、続きの感想は、下記をクリックして拙ブログの「別館」でご覧になってください。→百田尚樹(著)「影法師」 感想 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.08.13
![]()
夏休みにあたって、我が息子(中1と高2)に読ませようと『45分でわかる! 14歳からの世界金融危機。 サブプライムからオバマ大統領就任まで。』を図書館で借りてきました。 まずは、味見のために小生が先に一読・・・。 池上彰さんの語り口そのままに、優しく丁寧にサブプライムローン問題以降の世界経済の危機が解説されておりました。14歳からの世界金融危機。価格:800円(税込、送料別)続きの感想は、ご面倒ですが下記をクリックして拙ブログの「別館」でご覧になってください。→「14歳からの世界金融危機 」感想 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.08.12
金曜ロードショー「サマーウォーズ」を観ました。 細田守監督の「時をかける少女」が好きだったので、本作も期待していました。(それなら映画館に足を運べばいいのに・・・と自分にツッコミを入れる) で、最後にニコッとしながら見終えることができ、とっても良い気分・・・。ご面倒ですが、続きの感想は、下記をクリックして拙ブログの「別館」でご覧になってください。→「サマーウォーズ」感想 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.08.07
![]()
子供の夏休みの自由研究を兼ねて家族で”大阪市立科学館”に行き、念願の『HAYABUSA-BACK TO THE EARTH-(はやぶさ)』を鑑賞してまいりました。探査機はやぶさ7年の全軌跡価格:2,415円(税込、送料別)続きの感想は、ご面倒ですが下記をクリックして拙ブログの「別館」でご覧になってください。→「HAYABUSA(はやぶさ)」感想都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.08.06
![]()
ニコラス・ケイジ主演の『ノウイング』をレンタルして鑑賞しました。ノウイング プレミアム・エディション価格:3,591円(税込、送料別)続きの感想は、ご面倒ですが下記をクリックして拙ブログの「別館」でご覧になってください。→ニコラス・ケイジ『ノウイング』感想 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.08.05
映画『インセプション』を鑑賞しました。 小生は古くからのSFファンなので、CMで流れる映像なんかにほだされてしまい、ほとんど衝動的に映画館へ足を運んでしまいました。続きの感想は、ご面倒ですが下記をクリックして拙ブログの「別館」でご覧になってください。→映画『インセプション』感想 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.07.25
![]()
『借りぐらしのアリエッティ』★★★★☆ 2D手書きアニメ『借りぐらしのアリエッティ』を、娘(小4)と二人で鑑賞。 公開早々なので超満員かと恐れていましたが、6分の入りでした・・・。◆メール便は送料無料◆セシル・コルベル/Arrietty's Song [借りぐらしのアリエッティ -主題歌...価格:999円(税込、送料別)続きの感想は、面倒ですが下記をクリックして拙ブログの別館でご覧になってください→『借りぐらしのアリエッティ』★★★★☆ 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.07.19
スウェーデン発のベストセラーシリーズ第1弾 「ミレニアム1 ドラゴンタツゥーの女」↓↓↓感想へは、ここをクリックしてください↓↓↓→スティーグ・ラーソン(著)「ミレニアム1 ドラゴンタツゥーの女」 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。 (現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.07.04
![]()
世界が賞賛した感涙のダーク・ファンタジー映画『パンズ・ラビリンス』↓↓↓感想へはここをクリックしてください↓↓↓→ファンタジー映画『パンズ・ラビリンス』★★★★☆ 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)パンズ・ラビリンス価格:3,591円(税込、送料別)(以下、ネタバレ有り)
2010.07.02
![]()
アメコミ原作の実写映画『ウォッチメン』↓↓↓感想へはここをクリックしてください↓↓↓→DVD『ウォッチメン』★★★★☆ 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)ウォッチメン スペシャル・エディション価格:1,943円(税込、送料別)
2010.06.27
第五回ホラーサスペンス大賞受賞作家による傑作ホラー小説、沼田まほかる(著)「アミダサマ 」↓↓↓感想はここをクリックしてください↓↓↓→沼田まほかる(著)「アミダサマ 」 都合で、”楽天ブログ”から、 FC2ブログ『 子育てパパ BookTrek(P-8823) http://p8823.blog134.fc2.com/』へ引っ越しました。 よろしければ、新天地でもおつきあい下さい。(現行ブログは、少々使い勝手が、アレでして・・・・。)
2010.06.27
![]()
高橋克彦氏絶賛の超古代伝奇エンタテインメント、藤木稟(著)「太古の血脈」太古の血脈価格:2,205円(税込、送料別)■内 容 異端の歴史研究家だった酒井勝軍の孫・酒井勝一が、祖父が遺した手帳がきっかけに恐ろしい陰謀と暗闘に巻き込まれていく…。 浦島伝説、三種の神器、もう一人の天皇、日本人=ユダヤ人同祖説などが入り乱れる超古代伝奇エンタテインメント。■感想など 高橋克彦氏絶賛!「未熟な読者は要らない。目も眩む想像力と常識の崩壊にただ途方に暮れるだけだろう」という宣伝文句。 小生は、伝奇小説好きなんだけど、「太古の血脈」に入り込めなかったから、どうやら未熟な読者に分類されちゃいそう・・・。-◆- 30年前に読んだ”半村良”の伝奇小説『産霊山秘録』『石の血脈』とか、”高木彬光”の『成吉思汗の秘密』も面白かったなぁ・・・。 ”和田竜”の『忍びの国』なんてもの、広義では伝奇小説にいれてもいいかな・・・ あと『ダ・ヴィンチ・コード』とか・・・。 フリーメイソンを巡る陰謀話が、なんとなく「ありそう」だと思えてきますでしょ。 その気にさせられる面白さがあります。 これらの作品に比べると、「太古の血脈」は圧倒的に物足りないんです。-◆- 伝奇小説ってのは、頭の中で虚実が混交してしまう楽しさがある筈なんだけど、「太古の血脈」の場合は、登場人物の言動が軽すぎてリアリティがない分、伝奇小説がもつべき説得力を欠いてる気がしました。 たとえば・・・。 主人公の酒井勝一が帰宅すると、警察が取りまいている---何者かによって妻が殺されていて、現場検証してるです。 で、勝一は若い刑事に伴われてファミリーレストランで待機することになります。 そこに一人暮らしをしている娘から勝一の携帯に連絡が入って、一通り会話を交わした後の描写・・・『私は長い安堵の溜息をつき、コーヒーを再び口に含んだ』 さらに一緒にいる刑事が大口を開いて眠ってしまって、それを目にした勝一が『思わず苦笑した』 突然妻を殺されて悲嘆に暮れるシチュエーションだと思うのですが、勝一には妙に悲壮感が無くて、物語からリアリティが消え去ってしまう・・・。 出足からこういう感じなので、気持ちが萎えちゃう。 致命的なツッコミどころだと感じてしまったのです。-◆- 勝一を中心に進む冒険談は、それなりに痛快で、三種の神器などのガジェットにそそられるんですが、物語世界に入り込むことが出来ませんでした。 つくづく故・半村良氏の偉大さを感じることになったのであります。
2010.06.21
![]()
おなじみ、リンカーン・ライム・シリーズ第8弾。 ソウル・コレクター価格:2,500円(税込、送料別)■内 容 リンカーン・ライムのいとこアーサーが殺人の罪で逮捕された。 アーサーは無実を主張するが、DNAなど証拠が揃い有罪は確定的で、弁護士もサジを投げかけてる。 アーサーの妻ジュディに助けを求められたライムは、そろいすぎた証拠に違和感を覚え、確定的証拠が揃いながら被疑者が無罪を訴えるケースを洗い出すと、すでに複数の同様の事件が・・・。 姿の見えぬ何者かが、巧妙に証拠を捏造し、己の罪を他人になすりつけ、殺人を繰り返しているのだった。 史上もっとも卑劣で神のごとき力を持つ犯罪者『すべてを知る男』と、ライムや刑事アメリア・サックスたちの戦いの火蓋が切って落とされる・・・。■感想など リンカーン・ライムシリーズの近作の中では、小生はこの作品にインパクトを感じました。 何しろ、”五二二号”と名付けられた犯罪者「すべてを知る男」が恐い。 ”五二二号”は、小売店での購買履歴、サービス利用履歴、電話の通話履歴、クレジットカードの利用履歴など、膨大なデータベースを蓄積・分析して顧客全体のニーズの傾向などを洗い出してビジネスに役立てる”データマイニング”を業務にする『SSD社』の関係者。 データベースを不正利用してターゲットの好みや趣味を把握して近づき、やがて絵画などを奪った上で暴行し殺害。 また、犯行の際には、巧妙に証拠を捏造し、偽の目撃情報を流すなどして、無実の人間を犯人に仕立て上げる・・・。 データベースを駆使し、コンピュータ上の記録を書き換えることで、セリットー刑事の検査結果を書き換えて薬物使用者に仕立て上げたり、電気代未払いのデータをでっち上げられたライムの自宅は、電気を止められ停電する始末・・・・。 偽データによりアメリアも愛車を没収されてしまい、捜査陣は混乱。 コンピュータ上のデータに依存しきっている社会を好きなように改変出来る”五二二号”は、全知全能の力を持つ男なのです。-◆- ”五二二号”が犯罪を始めるにあたって、”練習台”にされた男は、見に覚えの無い借金などが降りかかるなど、あれよあれよと言う間に仕事も家族も財産をも失い、人生をズタボロに・・・。 いまでは半ば精神を侵され、携帯電話、クレジットカードをはじめ、あらゆる電子機器を徹底的に避けるパラノイア状態。 とにかく、オーウェルの小説「1984」に出てくる”独裁者ビッグブラザー”が市民を監視しているようなことを、データマイニングを行う一企業『SSD社』が行っていて、個人情報について神経質にならざるを得ない怖い物語となっています。-◆- で、現実に”データマイニング”という手法は存在しており、<”五二二号”に人生を奪われる>なんてことが、まったくの絵空事とは云いきれないから背中が寒くなってきます。 知らない間に収集されている個人情報を思うと怖い・・・。 楽天が顧客データを収集してる話なんて、『ソウル・コレクター』状態でしょ。 小生は、インフォシークでは検索しないようにしてますが、アンケートとかに答えているからヤバいかも・・・。-◆- 『SSD社』に犯人がいることは安易に想像出来るんですが、社長以下、社員には、犯人らしき怪しげな登場人物が何人も周到に配置されていて、読者を惑わせる技は一級品。 また、前作「ウォッチメイカー」の犯人の影も現れ、続き物としての魅力も・・・。 細かいことは抜きにしても、抜群のリーダビリティは健在だし、ライム、アメリア、プラスキーらレギュラー陣も活きいきしており、文句なく楽しめました。 500ページを超える長編ですが、全然長い気がしない娯楽作です。ウォッチメイカ-価格:2,200円(税込、送料別)ポーカーはやめられない価格:998円(税込、送料別)
2010.06.15
![]()
海外ドラマ『フラッシュフォワード』の原作長篇フラッシュフォワード価格:945円(税込、送料別)■内 容 欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を用いて、物理学者ロイドとテオは、ヒッグス粒子を発見すべく大規模な実験をおこなった。 実験開始の瞬間、全世界の人類が約2分間意識を失い、数十億の人びとの意識が21年後の未来に飛んでしまった。 この”フラッシュフォワード現象”によって、航空機墜落など世界中で事故が起こり、多くの死者が出てしまい、ロイドは罪の意識に苛まれるのだが・・・。■感想など ドラマ版『フラッシュフォワード』を観る前に、原作を読んでおこうと、図書館で借りて一読。 ”SF”らしい”SF”で、ある程度は面白いし、リーダビリティにも優れていて、サクサク読めてしまいました。-◆- ダン・ブラウンのベストセラーで、トム・ハンクス主演の『天使と悪魔』でも出てきた『欧州原子核研究機構(CERN)』って、なんか科学への好奇心をくすぐられるし、どことなくミステリアスな雰囲気もあって、SF小説の舞台にはバッチリです。 で、ここでの実験が原因となって、人類の意識が21年後の未来に飛んでしまい、航空機事故など大惨事が起きるというプロットですから、てっきり”ディザスター小説”の色合いが強いのかと思いきや、大惨事については意外とあっさりと描かれていて、肩透かしをくった感じ・・・。 むしろ人類が見てしまった21年後の世界は、変更可能な未来なのか、不可避の未来なのかを登場人物の物理学者が量子論的な思索を重ねる部分が濃く描かれていて、婚約者とは別の女性と暮らしている未来のビジョンを観たロイドが、結婚するかどうか悩んだりしてなんかウジウジした印象も・・・。 せっかく、フラッシュフォワードという、とてつもない現象を材料にしているのに、小説の中盤部分が小ぢんまりして勿体無い・・・。-◆- さて、小説終盤、2度目のフラッシュフォワード現象でロイドの意識が飛んだ先は、はるか未来で・・・。 このあたりは、ACクラークの『幼年期の終わり』『スペースオデッセイシリーズ』などなど、時間と人類の進化を描いた古典的な展開。 しかし、全体を通してみると、”CERN”という最先端の壮大なガジェットを用いながら、AC・クラークやI・アシモフほどの壮大さを描けていないかな・・・。 やはり、クラーク、アシモフ、ハインラインの世代は偉大だったなぁ・・・。 とはいえ、まずまず楽しめるSF作品でしたヒューマン価格:966円(税込、送料別) 幼年期の終わり価格:780円(税込、送料別)
2010.06.07
![]()
DVD『ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~』を鑑賞しました。 こんなにいい映画だと知っていたら、映画館で観たのに・・・。【アニメ商品対象】ホッタラケの島 ~遥と魔法の鏡~ ファミリー・エディション【 概要 】 ある日、高校生の”遥”が神社で、なくした母の手鏡を返してもらえるよう祈っていたところ、不思議なきつねが現れる。後をつけて奥に入っていくと、不思議な水たまりに吸い込まれ、子供のころに大切にしていた宝物の数々を集めて作られた不思議な島“ほったらけの島”に迷い込んでしまう。 ”遥”はなくなった手鏡がこの島にあるはずだと思い、島の住人テオと一緒に探し始めるが…。【 異世界が抜群 】 女子高生の”遥”が水たまりに落ちて異世界に飛び込む様は、穴にはまってしまった”アリス”へのオマージュなのかな・・・。 誰も知らない異世界『ホッタラケの島』は、日本版『アリス・イン・ワンダーランド』って感じ。 (そういえば、『トトロ』も、穴だったなぁ・・・。) で、ホッタラケの島の住民(謎のキツネ)は、自分ではモノを生産できず、人間が”ほったらかし”にした品々を利用して、文明を維持してる。 このユニークな異世界のイメージが凄い!! パステルカラーで埋め尽くされていて抜群に綺麗!! 世界中が東京ディズニーランドのトゥーンタウンみたいな感じ。 ここを”遥”たち登場人物が縦横無尽に躍動するから、ワクワクしちゃう!!【 2D映像の奥行き!! 】 『ホッタラケの島』は2D映画ではあるけど、立体的で奥行きがありました。 ”3D”技術で見せなくても、映画に”力”があれば、”2D”映像が、心の中で”3D”に変換されるんだと感じました。 『アバター』などの”3D”映画には、多少の驚きを感じるものの、”3D”映像にこだわりすぎて、無用の”あざとい場面”が組み込まれていて、邪魔な部分もあるんですよね・・・。 見所は”3D”だけ・・みたいなアニメ映画も有りますが、『ホッタラケの島』は”2D”で充分です。【 綾瀬はるかの声!! 】 ”遥”の声を、綾瀬はるかが担当。 これが、また、スッごくイイ!!! 本職の声優さん並みに上手いし、”ほわん”とした声が、とても心地いい!! この声を聞いてるだけで、心が癒されます。 で、”遥”が子供の頃大事にしていたが、その後手放してしまい”ほったらかし”にしていた縫いぐるみの”コットン”とホッタラケの島で再会。 ”遥”は「今までほったらかしにして、本当にゴメンナサイ」と”コットン”に謝罪・・・。 はるか昔の話ではあるけど、小生も、子供の頃一時熱中しながら、その後「放ったらかし」にした”おもちゃ”があるので、”遥”に感情移入できちゃう・・・。 「ゴメンナサイ」いう”遥”の憂いのこもった申し訳なさそうな声が、心に響いてきたのであります。【 日本の誇り!! 】 とにかく、絵は綺麗だし、幼いときに亡くした母の手鏡を探すストーリーも秀逸!! キツネの”テオ”とか、”遥”がほったらかしにしていた縫いぐるみ”コットン”、“ほったらけの島”を支配している”男爵”などのキャラもよくできてる。 『ワンピース』の世界観を感じさせるほどぶっ飛んでいて、米国の『ロボッツ』『モンスターズ・インク』『クローン・ウォーズ』に勝るとも劣らない出来栄え。 この映画が、ジブリ、ディズニー、ピクサー、ドリームワークスなどの”ブランド映画”だったら、もっと多くの観客が詰めかけて大ヒット作になった気がします。 こういうコンテンツを作る「想像力」「創造力」に、少し大げさだけど<日本の誇り>を感じました。
2010.05.30
![]()
傑作大河ファンタジー第2弾『アイスマーク2~炎の刻印』アイスマーク(2)■内 容 闘う王女を主人公にした正統派ファンタジー『アイスマーク 赤き王女の剣』の続編。 氷の平原を治めるアイスマーク王国。かつて南からの帝国軍をしりぞけ、民と 領地を守った気の強い王女シリンは魔術師のオスカンと結婚し、五人の王子王女に恵まれた堂々たる女王となった。しかし戦いから二十年をへた今、復讐に 燃えるベロルム将軍が帝国軍をひきいて、ふたたび侵略を開始する。末の王子シャルルマーニュに民を託し、南の大陸に避難させることになるが、王子は運命に導かれるように、援軍を求めてさらに南へ旅立つ。一方で帝国軍の攻撃に さらされるアイスマークは必死に抵抗するが、自軍の内部にある恐ろしい魔力がうごめいていることをまだ知らなかった……。(ヴィレッジブックス)■感想など ものすごく面白い!! 第1作『アイスマーク 赤き王女の剣』で大活躍した王女シリンと魔術師のオスカンの間に生まれた兄妹の末っ子、シャルルマーニュ 彼は、病気の後遺症で、足が不自由なため、兵士としての能力に劣っていることをコンプレックスに感じているんですが、「運命にみちびかれ、南の地へおもむき、やがてアイスマーク国を救いに帰って来る」と、父・オスカンが予言・・・。 そして、シャルルマーニュは”ポリポントゥス帝国”の侵攻を前に、疎開民を率いて南の国へ向かうことに・・・。 というわけで、少年”シャルルマーニュ王子”の冒険と成長の旅がメイン。 隠れていた才能に目覚め、北の雪国から遠く離れた南の国で出会った者たちから信頼を得て行く様子などは、お約束のパターンなんだけど、これがすごく爽快なんです。-◆- 女王シリンが統べる”アイスマーク国”の同盟者・・・気むずかしいバンパイヤの王と女王や、勇敢なユキヒョウ族、勇猛無比のウェアウルフ族、神秘的なオークの森の王など、数々の登場人物(人物じゃないなぁ・・)が魅力に満ちています。 指輪物語などに出てくるエルフやドワーフよりもかなり個性的かも・・・。 こういう物質文明に頼らないアイスマークの同盟者と、欲望の固まりのようなポリポントゥス帝国を率いるスキピオ将軍とその息子の戦いが、これまた小気味のよい興奮をさそいます。-◆- シャルルマーニュの姉・メディア王女は、魔術師の父の血を濃く受け継いでおり、遠見や、天候を操るなどのパワーを持っていますが、弟シャルルマーニュを理不尽なまでに妬んでおり、彼の命を狙っています。 ネガティブな感情が、やがて彼女をダークサイドへと誘い、父と娘=光と闇の戦いへと突き進みます。 この親娘、兄妹間に起きる問題も、物語にハラハラ感を与えます。-◆- 700頁を超える分厚い本作は、図書館のジュニア向けコーナーに置かれていましたから基本的に児童書扱いのようですが、小生のような50歳のオッサンでも胸躍る出来映えになっています。 『ロード・オブ・ザ・リング』や『ドラゴンライダー』シリーズより、サクサク読み進めることの出来る傑作ファンタジーで、「大人も読まないと損」だと個人的には感じる一作であります。アイスマーク(赤き王女の剣)
2010.05.24
![]()
《恐怖の帝王》、堂々の帰還。 ブラム・ストーカー賞受賞作、スティーヴン・キング(著)「悪霊の島」 悪霊の島(上) 悪霊の島(下)■内 容 不慮の事故で片腕を失ったエドガーは、離婚を余儀なくされ、リハビリも兼ねてフロリダの孤島”デュマ・キー”に移り住んだ。 ある日、エドガーは、絵を描く衝動にとりつかれる。 失った右腕が、何かを感じて、彼の意思と関わりなく手が描き出す。 やがて、エドガーの描いた絵を手にしたものに、悲劇が振りかかる。 そして、悲劇を招いた邪悪な存在“パーシー”に気づいたエドガーは、身を賭して戦いを開始する。■感想など 予め書き記しますが、小生は若かりし日に『呪わてた町』を読んで以来、かれこれ30年以上、キングの作品に魅入られ、出る本、出る本、読み続けてきました。 スティーヴン・キングには、並々ならぬ思いを持っていて、極めて好意的。 『ミザリー』『トミーノッカーズ』『ダーク・ハーフ』『ニードフル・シングス』くらいまで、ハズレの無いプラチナ作家。 <モダンホラーの帝王>そのものでした。 ただし、近年は、さすがのキングも引き出しの中身を出し尽くしたのか、はたまた交通事故で重傷を負ったことが影響しているのか、往年の冴えは薄まりつつあって、ハズレ作品も出現することが・・・・。-◆- そこに「《恐怖の帝王》、堂々の帰還。」って帯をまとって、『悪霊の島』が刊行されたから、もしかして、久々の大傑作かと期待・・・・。 ”訳者あとがき”にも、読み始めたら止まらないジェットコースター小説である旨が書かれてるし、いよいよワクワク・・・。-◆- しかし・・・。 読めども読めども、一向に面白くならない。 ようやく下巻の200ページあたりから物語が結末に向かって大きく動き始めるんだけど、これといって驚くほどの出来事に出会うこと無く、そのままお終い・・・。 『シャイニング』に感じた、緊迫感や怖さは、もう、見当たらない。 これは、読む側の小生の情緒・感受性が枯渇したのか、作り手側のキングの衰えなのか・・・。-◆- 「不慮の事故で片腕を失ったエドガー」が後遺症に苦しむ様は、交通事故で重傷を負ったキングの経験が色濃く反映されてます。 そこが、この作品のミソでもあるんだろうけど、これがクドさを感じるほど長くなってしまっていて、物語のスピード感を削いでしまってるようにも感じました。 上下巻合わせて約1000ページ。 700ページくらいに削いだ方が、鋭さが出ると思いました。 充分、水準を超えた作品ではあっても、キングが頂点を極めた頃の先品から滲み出ていた”凄み”を感じることができませんでした。 シャイニング(上)新装版 シャイニング(下)新装版
2010.05.12
![]()
春休みで時間を持て余している息子(中1)と娘(小4)を連れて、映画『ダレン・シャン』を観賞しました。面白さ ★★スピード感 ★★痛快感 ★不気味・グロさ ★★★★登場人物の魅力 ★★【 あらすじ 】 原作は、言わずと知れたのダークファンタジー「ダレン・シャン(全12巻)」 友人にも恵まれ、成績優秀で女の子にもモテモテの14歳の少年ダレン・シャンは、親友スティーブと一緒に、怪しげな見せ物サーカス“シルク・ド・フリーク”を見に行く。 このことがきっかけで、スティーブが毒グモに噛まれ死の淵に・・・。 ダレン・シャンはサーカスの一員だったバンパイアのクレプスリーと取引し、スティーブを救う薬と交換に、自分がクレプスリーの手下となることを承知して、ハーフ・バンパイアになる。 やがてダレン・シャンは、人の命を奪わない”バンパイア一派”と、人を殺してしまう”バンパニーズ一派”の抗争に巻き込まれ・・・・。【 不気味、悪趣味 】 小生の個人的な感想ではありますが、さほど面白い映画ではありませんでした。 物語の背景となるサーカス団“シルク・ド・フリーク”ってのは、狼男から小人、ヒゲ女、超クビレ男、ヘビ少年などなど、いわゆる”見せ物”でして、不気味さを楽しめるか、悪趣味に近いグロテスクさが不快か、微妙なところです。 腕再生女なんてのは、腕の肘から先を狼男に食わせて、見る見るうちに腕が元通りになると言う芸を披露したり、親密な仲間に好んで指を食わしたり・・・・。 怖がりの息子は、パーカーのフードを目深に被って、画面を見ないようにしているし、娘は顔を小生の腕に押しつけて目を隠してる。 小生は、子供連れで行くべきではなかったと、やや後悔・・・。【 消化不良 】 物語自体も、”バンパイア”と”バンパニーズ”の抗争が本格化するまでが描かれていて、まだ”さわり”の部分でしかないから、いまいち盛り上がらないまま、ようやく少し面白くなったところでお終い。 続編があるのだろうけど、”第1作”だけでは、なんだか消化不良を起こしそうです・・・。 また、ダレン少年を演じたクリス・マッソグリアとか、ダレンが思いを寄せる少女レベッカを演じたジェシカ・カールソンらは、ハリー・ポッター=ダニエル・ラドクリフ、ハーマイオニー=エマ・ワトソンほどの魅力を発散できておらず、やはりインパクトに欠けます。【 渡辺謙が 】 そんななかで、ダレン少年のお師匠さん”クレプスリー”が、いい味出してたかな・・・。 あと、“シルク・ド・フリーク”のオーナー、Mr.トールという怪人物を”渡辺謙”が演じてる。 すごい長身で頭がいびつなMr.トールは、“シルク・ド・フリーク”の団員に睨みを利かせ、”バンパイア”と”バンパニーズ”の抗争では中立の立場を維持する力を持った実力者。 『バットマン』の時と、どことなく似た香りのする一筋縄では語れない役どころ。【 トラスカの吹き替えが 】 吹き替え版を見たのですが、未来を予知するヒゲ女・トラスカの吹き替えが小生には違和感ビンビン・・・。 吹き替えを担当したLiLiCoというタレントさんのことは全然知らないのだけど、適材適所って感じは受けませんでした。 そもそも、何年か前に原作を読んだとき、惹きつけられるものを感じなくって2巻以降は未だに未読だというのに、ファンタジー映画が好きなので、ついつい見てしまった小生が浅はか・・・・。 でも、もしかすると続編はもう少し面白くなるかも・・・と多少期待。
2010.04.02
![]()
星間商事株式会社社史編纂室■内 容 主人公・川田幸代(29際、独身)は、女友達3人で発行する同人誌に、男同士の同性愛を描いた小説をせっせと書き続けるオタクな腐女子で、『星間商事株式会社』の社史編纂室に所属する会社員でもある。 会社の50周年に発行予定だった”社史”は、やる気のないゆる~~い本間課長のぺースのせいか、未だに日の目を見ない有様。 社史編纂室の幸代、矢田、みっこちゃんが過去の資料を集めるが、高度成長期のある時期について資料が集まらず、なぜか先輩社員やOBもこの時期について語ろうとしない・・・。 幸代たちが、この高度成長期の穴──社の秘められた過去を探ろうと奔走するのだが・・・。■感想など 川田幸代の同人誌仲間が結婚し、同棲中の彼氏との結婚を頭がよぎる・・・・。 アラウンド30の女性の心の動きが、生活感たっぷりに描かれていておもしろい。 例えば幸代とコミケ仲間の英里子との会話・・。 英里子「男の人って、種付けしといて子育てはどっか他人事よ?それに対するイライラで削られるエネルギーを、計算に入れておくべきかも」 幸代「英里子のだんなは、子育てに協力的でしょ?」 英里子「協力的というのが曲者よ。」「本体なら、自分の子なんだから育児をして当たり前でしょ。『育児に協力的な奥さん』とは言われないのに、『育児に協力的なだんなさん』が褒められるのは変よ。」 なかなか生々しいでしょ。 小生も父親の端くれで、子供が小さい頃は積極的に育児参加をして『育児に協力的なだんなさん』のつもりだったから、著者から「協力的というのが曲者よ」としてバサッと斬り込まれると、返す言葉がないのであります。 降参、白旗!!!-◆- 社史編纂室所属という”閑職”にある本間課長、幸代、矢田、みっこちゃんらが、星間商事株式会社の闇の歴史に気づいてしまったことで、なんだかんだが起きるところが物語のメイン。 NHKの金曜21時枠、あるいは土曜22時枠のドラマにしたら面白そうな内容です。 オタクな腐女子を自認している幸代の他、幽霊部長、ぬるい課長、女好きで仕事はサボり気味のヤリチン先輩、”いまどき女子”の後輩みっこちゃんら、およそ企業勤めとは思えない連中のキャラが憎めなくて、妙に愛おしくなってしまいました。-◆- 同性愛小説を書き続けた幸代が、合コンで偉そうにしている男性を苦々しく思った際に「男性のペニスを100本は描いてきたのだ」と、心の中で自分に気合いを入れて息巻いてる場面に爆笑・・・・。 こんな具合で、出来すぎたマジメ人間は一人として登場しない、楽しい作品でした。
2010.03.17
![]()
森見登美彦の十八番、京都ファンタジー『宵山万華鏡』 宵山万華鏡■内容(「BOOK」データベースより) ”祇園祭宵山”の京都。ふとしたことで姉と手を離してしまった妹は、姉とはぐれてしまい、赤い着物姿の少女たちと、現実と幻の狭間を彷徨う。 大学最後の夏、”宵山法度違反”で怪しい男たちに捉えられ、「白塗りの怪僧」や「金魚鉾」、そして謎の「宵山様」に出会う驚愕体験をした男・・・。 ”祇園祭宵山”を舞台とした「宵山姉妹」「宵山万華鏡」「宵山金魚」「宵山劇場」「宵山回廊」「宵山迷宮」からなる、”幻想”と”ナンセンス”の連作中篇集。■感想など 「宵山姉妹」「宵山万華鏡」は幻想色の強い作品で、幻想小説の名手で、既に伝説と化した”山尾悠子氏”を思い起こします。 作中登場する「赤い着物を着た美しい少女たちの集団」は、謎めいていて、なにやら哲学的な趣さえ有ります。-◆- 「宵山金魚」「宵山劇場」は、『夜は短し歩けよ乙女』の続編的な作品で、大学生のナンセンスな日常が可笑しい。 大好きな作品『夜は短し歩けよ乙女』の、懐かしい面子やエピソードに出会えて、旧友と酒を酌み交わしたような心地よさ。 バカバカしくて、不条理で、突き抜けていて、常識に塗り固められた社会人などからすると、もはや異次元、別世界。-◆- それぞれの中編が繋がったとき、”幻想”、”ナンセンス”、”不条理”が混然一体に溶け合って、作品は互いに絡み合い、メビウスの輪のように物語は完結していく・・・・。 森見登美彦固有の職人芸です。夜は短し歩けよ乙女
2010.03.05
翻訳家の浅倉久志さんが心不全でお亡くなりになった。 79歳。-◆- 小生はSF小説が好きで、高校生だった約30年前から浅倉久志さんが訳された本には大いにお世話になりました。 江戸川乱歩が、エドガー・アラン・ポーをもじったペンネームであるように、”浅倉久志”という名が、SF界の巨星、故”アーサー・C・クラーク”を元にしたペンネームであることも有名。-◆- アマゾンで検索して、小生のお気に入りだった浅倉久志さんの訳本を探し出すと・・・。A・E・ヴァン・ヴォクト著『スラン』フィリップ・K・ディック著『高い城の男』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』カート・ヴォネガットJr『タイタンの妖女』『プレイヤー・ピアノ』ポール・アンダースン著『タウ・ゼロ』ロジャー・ゼラズニイ著『地獄のハイウェイ』A.E.ヴァン・ヴォクト著『宇宙船ビーグル号 』ハル・クレメント著『重力の使命』ジェイムズ・ブリッシュ著『宇宙零年(宇宙都市シリーズ)』フィリップ・ホセ・ファーマー著『階層宇宙の創造者(階層宇宙シリーズ)』ハリイ・ハリスン著『銀河遊撃隊』『宇宙兵ブルース』『人間がいっぱい』サミュエル・R・ディレイニー著『プリズマティカ』ジョン・ヴァーリイ著『へびつかい座ホットライン 』マイクル・クライトン著『アンドロメダ病原体』 などなど、キリがないほです。(短編も含めると、本当にキリがない) あらためて思い出すと、痺れる名作ばかりで、SF黄金期が懐かしい・・・。 (小生にとっては、リアルタイムで読んだ本でも、もはや古典の域に達してるから、歳を感じます。)-◆- こうしてみると、多くのSF作家の著作を読んできたと言うより、浅倉久志さんの訳文を驚くほど沢山読んできたんだと、思い知らされます・・・。 浅倉久志さんの訳文は、ちゅんと日本語になっていたから、これ程多くの作品を読破できたんだと思います。(上手くない訳者にかかると、訳文が日本語になっていない本も結構ありますからねぇ・・・。) 今思うと、浅倉久志さんとか矢野徹さんらが翻訳してる作品だったら、きっとこの本は面白いはずだと考えて、本を買っていた気もします。 浅倉久志さんのご逝去で、なんだか、小生の50年ほどの人生の一部を失ったような気分になってきました。 衷心よりご冥福をお祈りします・・・。
2010.02.16
![]()
第142回 芥川賞 候補作品老人賭博■内 容 雑誌掲載時に『現代演劇の鬼才が、人間の悪意と尊厳をユーモアとアイロニーに包んで描ききる問題作』と惹句が付いた作品 顔面の内側が崩壊する奇病にかかったマッサージ師のボクが主人公。 ある日、ボクが勤めるマッサージ店に、B級映画やホラー映画の脚本を手掛け、1本だけ監督をした経験を持ち、副業としてコラムを書いたり俳優やっている海馬五郎が客としてやってきて、ひょんなことからボクは海馬の弟子になっちゃう。 そして、海馬が脚本づくりに携わった映画の撮影で北九州の町へと同行するボク。 この映画で人生初で、恐らく人生最後の主演の座を得た老優・小関泰司が、セリフでNGを出すかを賭けた「老人賭博」が幕を開ける。 地元のヤンキーや、共演のグラビアアイドル海らも加わったギャンブルの行方は・・・。■感想など 「そろそろ”松尾スズキ”を読んでおかないと」と、なんとなく”松尾スズキ未読”への焦りを感じて読んだ一冊。 顔面の内側が崩壊する奇病だったボクは、治療を受け整形も施した結果「わけもなくつぶらな瞳の青年」に変身しちゃうという、のっけからナンセンスな物語。 しかし、ボクという一人称の心の声「しのげ。無理にでも。今を。この1日を。」というフレーズに痺れちゃう。 なんか、短いフレーズなんだけど、切実さだとか、自分を無理に鼓舞するボクの心情とか、諸々の感情がこもっていて、凄い気がする。-◆- 海馬五郎が、ボクに老優・小関泰司のことを、「・・・・俺たちはこうしてじいさんの話を聞いてるけど、決して、今、目の前にいるじいさんと会話しているわけじゃないだろ。 じいさんの記憶のスライドショーを見せられているだけじゃない。そして、じいさんの方も過去を見世物にすることでしか、俺たちとコミュニケーションできないのがわかってるんだな。そこに横たわる圧倒的断絶が俺は哀しいのよ。だって、先生がじいさんの話に興味を持ってもだよ、だからってじいさんと友達になるわけにはいかないだろ。最後までつき合いきれないのに興味を持つのは、遺跡の見学者みたいで、なんだかさ、無責任で残酷じゃないか」と語る。 老人・小関と会話することを『じいさんの記憶のスライドショー』『遺跡の見学者みたい』と偏屈な視線で論じる海馬五郎が『無責任で残酷じゃないか』と言葉を締めるこの感覚が、普通の切り口とは違っていて凄い。 ここいらが、松尾スズキが奇才たる所以かな・・・。-◆- 老優・小関をトチらす為に、わざわざセリフに早口言葉を入れたり、マチュピチュ遺跡を盛り込んだり、海馬は自分が賭けに勝てるように脚本をいじる。 監督も賭けに乗ってるから、わざわざカメラの長回しをしてNGを出すように仕向けちゃう。 賭けの対象になった老優・小関を取りまく俳優、スタッフが皆、小関のセリフに固唾を呑んで、賭けの勝ち負けを気にしてる・・・。 バカバカしく、ブラックなクライマックスに爆笑してしまいます。 最初で最後の主演に意気込み、老いと戦いながらも、自らのキャリアとプライドを賭けてセリフを頭に叩き込む小関と、彼の弟子でお世話をする山崎の悲哀も漂ってきて、笑いモノになってる老優・小関が滑稽でもあり、可哀相でもあり・・・・。-◆- 芥川賞候補作品であるから、以上の展開から何かのメッセージを読みとるべきかと思ってしまうのだけど、やや毒のある笑いが印象に残ったものの、深読み出来ずに読了。 主人公が「顔面崩壊」→「わけもなくつぶらな瞳の青年」に変身したことを、もっと膨らませたら筒井康隆の初期作品的な不条理さも出せたかも・・・なんてことも、読後に少し思いました。
2010.02.08
![]()
爽快、傑作、中学校部活青春小説!!少年少女飛行倶楽部■内 容 中学1年生の、海月(みづき:愛称クーちゃん)が主人公。 両親は、美しい「月夜の海」をイメージし、字面も綺麗な「海月」という名前を付けたが、よくよく考えると”海月”と書いて”クラゲ”と読む・・・。 だから、愛称はクラゲの”クーちゃん”。 彼女は、変な名前でぐれることもなく、まっとうに育って中学に入学。 この中学では部活が必修で、ひょんなことから幼馴染の樹絵里とともに「飛行クラブ」に入部。 クラブの目的は、ただ漠然と「空を飛ぶことを目的とす」とされているだけで、手段など細かいことは何も決まっていない有様。 今まで部員は、2年生の変人部長”斉藤神”(通称カミサマ)、野球部と掛け持ちの”中村海星”だけで、1年生の”海月””樹絵里”が加わり、その後、同じく1年生の”るなるな”、”球児くん”、”イライザ”が入部して、総勢7名の零細クラブ・・・。 さて彼らが空を飛ぶ日はやって来るのか・・・・。■感想など ノー文句に気持ちがよい小説であります。 小生が知る作家の中で言うと、”有川浩”の恋バナ系小説とか、初野晴の『退出ゲーム』なんかと感じが似てるかな・・・。 また、アニメ版の『時をかける少女』的でもあるし、NHKの『ドラマ8』になりそうなネタでもあります。-◆- あくまで自分自身が飛ぶことを旨とし、飛行機やヘリでの飛行は除外。中学校の部活なので、予算など諸々の問題を考慮して、人力飛行機を作るなどの方法も排除する「飛行クラブ」って、飛ぶという目的だけが先行していて、具体的飛行手段に関しては、まったく「ノー・プラン」という、かなりナンセンスで、人を食ったクラブ。 このバカバカしさだけで、小説世界に引き込まれます。(登場人物たちは真剣なんですが・・・)-◆- こういう怪しくも下らない部活に参加する、”クーちゃん”たちの、二度と戻らないみずみずしい中学生活がイイ感じ・・・。 ”海月(みづき)”と言う名の、漢字の読みは”クラゲ”。中村先輩の”海星(カイセイ)”という名前は、漢字の読みは”ヒトデ”宝石=ジュエリーの”樹絵里”「朋」と言う名前は、月が二つだから”るなるな”と読ませる。野球部員と野球部マネージャーだった両親が、息子の甲子園出場を目指して付けた”球児”障害を持つ”エンゼ”という名の姉を守るために付けられた斉藤部長の”神(ジン)”という名前。 親が入れ込んで付けた変わった名前をもつ中学生たちが、みな個性があって可愛らしい。 小生は50歳直前でありまして、バカバカしいことにも真剣になれる「飛行クラブ」の面々の若さが羨ましく、自分自身の中学時代が懐かしくもあります。 そして彼らの淡い恋が、何となくくすぐったい感じ・・・・。 これらがすべて相まって、読後には心がふわっと飛行したような気分に浸れました。 フ~~ム。これぞ精神的な「飛行クラブ」!!!!-◆- 飛行することって、色々なくびきから解き放たれること・・・即ち”自由”の象徴なんですね。 だから「飛行クラブ」ってことなのでしょう。 とにかく、現実社会がドロドロゆえに、この作品の清涼感が心に沁みます。 あ~~気持ち良かった。 ななつのこ
2010.01.25
![]()
本川 達雄(著)「ゾウの時間ネズミの時間」と「時間―生物の視点とヒトの生き方」を読みました。■内容(「BOOK」データベースより) 『ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学』 動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、総じて時間の流れる速さが違ってくる。行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。ところが一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズによらず同じなのである。本書はサイズからの発想によって動物のデザインを発見し、その動物のよって立つ論理を人間に理解可能なものにする新しい生物学入門書であり、かつ人類の将来に貴重なヒントを提供する。『時間―生物の視点とヒトの生き方』 生物学的時間。この新しい時間の見方を使って現代社会を眺めて見ると、現代の抱える問題がはっきりと見えてくる。本書はいま人がウンと言える新たなる行動指針や倫理を求め、時間やエネルギーを軸に、生物としてのヒトに無理のない生き方、社会のあり方を探究する。 ■感想など NHKの『爆笑問題のニッポンの教養』(2009年11月24日放送分)~「ナマコ権威 本川達雄」で、著者を初めて知ったのですが、凄まじくユニークで面白かった。 そして、本川達雄氏が語られた「体のサイズと時間の関係」「消費エネルギー(代謝)と時間の関係」に、現代社会の問題の本質を見た気がしたものですから、図書館で本川達雄氏の本を探して、この2冊を読みました。-◆- 『都会人のやっていることは、はたしてヒト本来のサイズに見合ったものだろうか?体のサイズは昔とそう変わらないのに、思考のサイズばかり急激に大きくなっていく。それが今の都会人ではないだろうか。体をおきざりにして、頭だけがどんどん先に進んでしまったことが、現代の人類の不幸の最大の原因だと私は思っている。(「ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学」より)』 ゾウのような大きな動物は長生きで、ネズミのような小さな動物は短命なのだそうです。 だけど、心拍数とか呼吸数、代謝率などを勘案すると、どうやら体が大きなゾウの生物的時間はゆったり流れ、小さなネズミの場合は時間が速く流れており、ゾウとネズミが各々体感する寿命の長さは同じだろうと著者は語っています。 自動車に例えると、同じガソリン消費量でゆっくりと長距離を走った場合がゾウ。猛スピードで短距離を走った場合がネズミにあたるようです。-◆- 『現代人も縄文人も、体自体に大きな違いはなく、私たちの体のリズムは昔のままなのです。とすると、体の時間は昔と何も変わっていないのに、社会生活の時間ばかりが桁違いに速くなっているのが現代だということになります。 そんなにも速くなった社会の時間に、はたして体がうまくついていけるのでしょうか? 現代人には大きなストレスがかかっているとよく言われます。そのストレスの最大の原因は、体の時間と社会の時間の極端なギャップにある、と私は思っています。(「時間―生物の視点とヒトの生き方」より)』 ゾウの時間 ネズミの時間の理屈をヒトにあてはめると、どうやら縄文人の暮らしぶりぐらいが身の丈にあった時間の流れなのだそうです。 で、多くのエネルギーを消費する生き物ほど、体内で流れる時間は早くなるらしく、人間は肉体の代謝にプラスして石油などのエネルギーを大量消費して社会環境を変化させ、生物的時間の速度を異常に速めているとのこと・・・。(例えば、徒歩や走る場合のエネルギー消費とは桁違いのエネルギーを消費する自動車・新幹線・飛行機などを用いて移動時間を短縮してる) このように、現代人は体のサイズにそぐわない時間環境下で生きていることにより、大きなストレスを感じてると言うのが著者の主張。 たしかに、歌謡曲・流行歌だけをとっても、小生が若かった頃には凄まじい早口だと感じられた吉田拓郎の曲でさえ、小室以降の曲のテンポに比べたら凄くスローテンポです。 また、人々が喋るスピードも速くなっていて、電気店の若い店員やファストフード店の店員さんの言葉が聞き取れない場合があります。 このように、どんどん人間、あるいは社会のテンポが速くなっていると平素から小生は感じ、なにかしら世知辛いのであります。-◆- とにかく、生物学者が書いた本なのだけど、人間の在り方、社会の在り方に対する示唆に富んでおり、「あぁ、そういうことだったのか」と”目からウロコ状態”になりました。 便利なモノやサービスが増えて、時間に余裕ができたはずなのに、時間に追われる感じがすることの原因は、本川達雄氏が語る「体の時間と社会の時間の極端なギャップ」に違いないと思った次第です。 人間は人間らしく身の丈にあったスピードで暮らさないといかんなぁ・・・と、しみじみ思います。【送料無料選択可!】ゾウの時間ネズミの時間 ? 歌う生物学? [オンデマンドCD] / 本川達雄「長生き」が地球を滅ぼす大人の科学マガジン(vol.09)
2010.01.15
ジェームズ・キャメロン監督作の映画『アバター』を観賞しました。 「『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督」という宣伝文句も聞きましたけど、むしろ「『アビス』のジェームズ・キャメロン監督」って感じの映画かな・・・。(パンドラの夜光植物とか神秘的な雰囲気が『アビス』を思いおこさせます。) あと、個人的な感想ですが、宮崎駿が『もののけ姫』や『ナウシカ』で描いたテーマと、底通するものを感じました・・・・。【 あらすじ 】 戦争で負傷して下半身不随になった元海兵隊員ジェイクは、遥か彼方の衛星パンドラで実行される“アバター・プログラム”への参加。 パンドラには、身長3メートルで青い肌をした知的生命体ナヴィの生息。彼らは、科学文明は発達させていないが、豊かな森など自然とリンクして暮らしている。 ナヴィが暮らす森の地下には高価な希少鉱物が埋蔵されていて、これを狙う地球人がナヴィと交渉するが、進展することなく膠着状態が続き、小競り合いも起きる。 そんな状況下で、遺伝子操作でナヴィそっくりに作られた肉体”アバター”のドライバーとなったジェイクは、情報を探るためにナヴィの集落へ派遣されていたが、ナヴィの女性ネイティリと恋に落ちる。 やがて、武力行使して希少鉱物を略奪しようとする狂信的な大佐の蛮行で、ナヴィが破滅の危機に見舞われたとき、ナヴィと心通じさせたジェイクが、パンドラの文明を守ろうと立ち上がる・・・・。【 上映時間:162分 】 後半のストーリー展開には圧倒され、一気にラストへなだれ込んでいきました。 暴走し始めた大佐が”悪の権化”となって、勧善懲悪物語になったのもわかりやすい。 ただし、前半の1時間チョイあたりまでは、小生は退屈でアクビをかみ殺しながらの観賞。 ”3D映像”を見せる為のシーンが挟み込まれているせいなのかな・・・やや上映時間が長過ぎるような・・・。【 3D効果 】 ジェームズ・キャメロン監督が、構想14年、製作4年の歳月を費やしたという”野心作”であり、3D元年といわれた2009年の映画の中でも、特に”注目の3D映画”だとされていたので、過度に期待心を煽られて観賞・・・。 そのせいか、小生が勝手に抱いた高い期待度ほどは「革命的な映画」ではないような印象。(30年前に初めて『スターウォーズ』を観たときの方が遙かに衝撃的だった) 確かに、3D技術によって衛星パンドラの壮大な世界が迫力満点に描かれているのだけど、もっと凄いこと---観ているだけで乗り物酔いするほどの”3D効果”---を期待していたので、意外と驚きを感じませんでした。 とはいえ、巨大な樹木や野生動物など、パンドラの世界はなかなかのものだし、航空機やボトムズ風のモビルスーツなど、メカニックもイケてる。 これらCG映像を、CGとして意識することなく目に入ってきます。【 モーションキャプチャ 】 ナヴィの表情を表現する為のモーションキャプチャの新技術”フェイシャルキャプチャシステム”は凄いのだと思う・・・。 だけど『スタートレック』のクリンゴン人・ウォーフなど特殊メイクに比べるとまだ見劣りします。 たとえば、ナヴィ青い顔がすべすべしすぎていて、”小じわ”が無いとか・・・。 顔の表情って、もっと陰翳がある気がしますし・・・。 脂っこかったり、染みがあったり・・・生物臭さがやや物足りない。【 宮崎駿的 】 尖った耳のナヴィは”エルフ”で、翼竜風の飛行生物は”ドラゴン”だと考えると、ヨーロッパの神話をベースにしたようなパンドラの世界なのですが、冒頭に書いたように、宮崎駿の『もののけ姫』や『ナウシカ』などと底通するものがあるので、なんとなく既視感を覚えました。 物語の大きなテーマは、もしかすると『もののけ姫』とほとんど同じ・・・。 衛星パンドラの世界は、『ナウシカ』や『もののけ姫』的で、ナヴィの巨木は『トトロ』・・・。 で、『アバター』は”3D技術”で奥行きを表現しているのだけど、宮崎駿・ジブリは『耳をすませば』の”逆遠近法”や、『もののけ姫』のディダラボッチ(ダイダラボッチ)の巨大さ、遠くに見える鹿の姿などで、奥行きを表現。 最新技術による”3D”も悪くないけど、小生には、宮崎駿が平面に描き込む”奥行き”の方が勝ってるように思えました。 以上、ハードルを高くしすぎて少々不満も残る(まだ3D元年ですから仕方ない)内容でしたが、水準以上の超大作。(歴史に残るほどの傑作ではないとは思うけど・・・・) ジェームズ・キャメロン監督の意欲やエネルギーはさすがに大したものです。≪限定酒・感謝セール≫蒼天の煌・赤兎馬 1800ml芋焼酎2本セットが全国送料無料!
2009.12.30
![]()
宝島社の「このミステリーがすごい」2009年版で『黒百合』が”国内7位”にランクされていた作家の多島斗志之さんが、自殺をほのめかす手紙を残して失踪というニュースに驚きました。 今朝(12月25日)の朝刊にも、氏の作品『クリスマス黙示録』の広告が載っていたのに・・・・。 小生は、多島斗志之さんの作品は、『黒百合』ただ1冊しか読んでいないのですが、無事を願う気持ちを込めて感想を書かせて貰います。多島斗志之(著)「黒百合」★★★★★黒百合■内 容 「六甲山に小さな別荘があるんだ。下の街とは気温が八度も違うから涼しく過ごせるよ。きみと同い年のひとり息子がいるので、きっといい遊び相手になる。一彦という名前だ」父の古い友人である浅木さんに招かれた私は、別荘に到着した翌日、一彦とともに向かったヒョウタン池で「この池の精」と名乗る少女に出会う。夏休みの宿題、ハイキング、次第に育まれる淡い恋、そして死―一九五二年夏、六甲の避暑地でかけがえのない時間を過ごす少年たちを瑞々しい筆致で描き、文芸とミステリの融合を果たした傑作長編。 【内容情報】(「BOOK」データベースより)■感想など 小生、学生時代、一夏泊まり込みで『六甲オリエンタルホテル』のバイトをした経験があって、六甲山の香りがしっかり記憶に焼き付いています。 だから、六甲山が舞台となった多島斗志之氏による「黒百合」を読んだとき、みごとなまでに、”六甲山の清涼な空気”が書き込まれていることに驚きました。-◆- 決してミステリ色の強い作品でもないし、波瀾万丈の展開があるわけでもないのだけど、しっとりと胸に滲みてくる静かで美しい傑作です。 本作を今年の2月に読んでから少し時間が経っているので、大雑把な感想になりましたが、とにかく気持ちの良い読後感が印象的でした。 どうか、ご無事で・・・。
2009.12.25
![]()
処女小説『チャイルド44』で注目を浴びたトム・ロブ・スミスによる”レオ・デミドフ”シリーズ第2弾!! グラーグ57(上巻) グラーグ57(下巻)■内 容 世界を震撼させた『チャイルド44』の続編、怒濤の登場!(新潮文庫HPより・・) 運命の対決から3年――。レオ・デミドフは念願のモスクワ殺人課を創設したものの、一向に心を開こうとしない養女ゾーヤに手を焼いている。折しも、フルシチョフは激烈なスターリン批判を展開。投獄されていた者たちは続々と釈放され、かつての捜査官や密告者を地獄へと送り込む。そして、その魔手が今、レオにも忍び寄る……。 レオに突きつけられた要求は苛酷をきわめた。愛する家族を救うべく、彼は極寒の収容所に潜入して、自ら投獄した元司祭を奪還する。だが、彼を待っていたのは裏切りでしかなかった。絶望の淵に立たされ、敵に翻弄されながらも、レオは愛妻ライーサを伴って、ハンガリー動乱の危機が迫るブダペストへ――。国家の威信と個人の尊厳が火花を散らした末にもたらされる復讐の真実とは?■感想など 前作『チャイルド44』は、ミステリの面白さに加えて、スターリン体制下のソ連における人民の閉塞感や、共産党独裁による監理社会の恐ろしさが見事に描かれていて、とびきり面白かった。 そして、本作は、『チャイルド44』から3年後の物語。 かつて、国家保安省捜査官レオに逮捕した女性が延々と恨みを持ち続け、レオはもとより、その妻ライーサや養女のゾーヤにまで牙を向ける復讐談。-◆- シリーズ第2弾も面白い。 ただし、管理国家ソビエトの陰鬱な社会を緻密に描写した前作『チャイルド44』には及ばない感じがしました。 モスクワから極東の収容所、さらにはハンガリーにまでおよぶスケールの大きな物語は、小さな出来事の積み重ねが見事に収斂していった『チャイルド44』と比較すると、やや大味・・・。 主人公レオが、収容所で受ける過酷な試練や、ハンガリー動乱にまつわる顛末は個々に見ると面白いのですが、物語を通してみると、展開が強引すぎるような・・・。 また、レオと妻、レオと養女の関係が重すぎて、しんどい。-◆- 『チャイルド44』の出来映えが良すぎたってことかな・・・。 それでも、妙な疲労感を抱くことなく読み進めることが出来るのは、訳文が良いからなのかも知れません。 翻訳物は、訳者の力量で大きく印象が変わるのだと感じます。 チャイルド44(上巻) チャイルド44(下巻)
2009.12.19
![]()
面白すぎる琉球王朝ファンタシー テンペスト 上(若夏(うりずん)の巻) テンペスト 下(花風の巻)■内 容 美と教養と見栄と意地が溢れる珊瑚礁の五百年王国は悩んでいた。少女真鶴(まづる)は憧れの王府を救おうと宦官と偽り行政官になって大活躍。しかし待ち受けていたのは島流しの刑だった--。 黄昏の美しい王国にペリー来航。近代化の波に立ち向かう宦官兼側室の真鶴。しかし破天荒な一人二役劇は突然幕を閉じる?。時代の変わり目を嵐(テンペスト)となって生き抜いた王宮人の苛烈な愛と涙の物語。(web.KADOKAWA:テンペストより)■感想など 著者が未来の東京を描いた「シャングリ・ラ」も、ものすごく濃厚でぶっ飛んだ作品だったけど、本作「テンペスト」も超濃密。 「シャングリ・ラ」にはアニメッぽさを感じたけど、「テンペスト」は韓流ドラマか、テレビ東京が作りそうな歴史ドラマって感じかな・・・。-◆- 琉球王府では女人は役人に就けないため、主人公の真鶴は宦官を装い”孫寧温”と名乗って任官試験を受け稀に見る好成績で合格。 役人になった真鶴=孫寧温は、次から次へと事件に巻き込まれて、あるときは知恵を絞って見事に難事を解決して琉球王府のトップ官僚に登り詰める。 しかし平穏は続かず、女系の王族の恨みを買って足を引っ張られた挙げ句に八重山に島流しになるなど、もう波瀾万丈を絵に描いたようなストーリーで、面白いの何のって・・・。-◆- 生命力たっぷりで濃いめの登場人物が魅力いっぱい。 登場人物が生き生きしているから、物語もエネルギッシュで力強い。 凄まじい分厚さの上下2巻だけど、読み進めるには苦痛は皆無。 極上のエンタテインメントで、非日常的異文化体験を楽しめました。 (なお、「テンペスト」特設サイトには、池上永一のインタビュー動画や、人物相関図も掲載されていて、本作をより一層楽しめるようになっています。) シャングリ・ラ(上) シャングリ・ラ(下)
2009.12.07
![]()
阪急電車■内 容 片道わずか15分間の阪急電鉄今津線の8つの駅を起点に乗り降りする乗客の物語からなる連作短編。■感想など 本作の舞台となる阪急電鉄今津線は、北から『宝塚駅(宝塚大劇場前)』『宝塚南口駅(宝塚ホテル前)』『小林駅』『仁川駅(阪神競馬場前)』『甲東園駅』『門戸厄神駅』『西宮北口駅』の8駅。 小生がよく利用したことのある路線なので、この連作は凄くリアルに心に滲みてきます。 (今津線は、西宮北口駅から今津駅に向かってあと2駅有るんだけど、歴史的経緯があって西宮北口駅で線路が分断されているのでありまして、この作品では南側の2駅は舞台になっておりません。) で、作者が語るように、阪急電鉄今津線沿線は、都市部にありながらどことなく時間の流れが穏やかな感じがする・・・。 そんな各駅の雰囲気が上手く醸し出されていて、そこに有川浩お得意の”恋バナ”が絡んでくるから、たまらなくイイ感じの物語になっています。-◆- 主人公の一人が二週間に一度のペースで通う図書館で、登場人物が「ああ、あの口うるさいおじいちゃんがまた職員を困らせているな」と口にする・・・・。 小生もよく図書館で見かける風景で、なぜか図書館には我が儘な文句を垂れる爺さんなどがいるのです・・・。 曰く「空調の効きが悪い」とか、いんねんの類のクレームを付けたり・・・。 と言うわけで、有川浩は日常を切り取ったような一コマの描き方が上手い。 また別の場面では「一般教養の必修科目の教科書だが、講座の教授の自著でえらく高い。これをわざと教科書指定し、一年生に売り捌いて儲けているともっぱらの噂である。必修なので落とせない事情を衝いた一種の悪徳商法で、その教授はおそらく学生全員に嫌われている。」と登場人物が語る・・・。 ワッ、これまたリアルに大学時代を思い出す。 こういう登場人物の言葉の積み重ねが、物語にリアルな生活感と味わいを出すんですよねぇ。 有川浩の作風は、もはや「芸」の域に達していますよ。-◆- 阪急電鉄今津線ではないのですが、小生が住まう街の駅も物語中に登場してなんだか嬉しい気分。 また、宝塚南口駅前にある”宝塚ホテル”とか、小林駅そのものとか、小生が思い出を持っている駅で物語が動くことにも心地よさを感じました。-◆- とにかく、有川浩の作品は図書館戦争シリーズを含めてライトノベル風の軽い肌触りではあるけど、生き生きした登場人物の描き方はそんじょそこらのライトノベルとはひと味も二味も違ってるように感じます。 有川浩の「芸」に脱帽です。★私鉄 Nゲージ 鉄道模型★阪急7000/7300系(旧塗装)増結用先頭車2輌【グリーンマックス・41...
2009.11.28
![]()
19世紀イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』を、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『フォレスト・ガンプ/一期一会』や『ポーラー・エクスプレス』のロバート・ゼメキス監督ロバート・ゼメキス監督が、モーション・キャプチャーCGアニメーション映画として蘇らせた作品。 娘(小3)&息子(小6)と家内と私で、3D版を見てきました。(まだご覧でない方にはネタバレになります)【 ストーリー 】 主人公スクルージ(ジム・キャリー)は、金銭欲を満たすことだけを生きがいにする拝金主義者で、家族を持たず親戚にも背を向け、誰に対しても冷酷だから街一番の嫌われ者である。 クリスマス・イヴの夜、事務所から自宅に戻ったスクルージのもとに、かつての共同経営者で、十年前に亡くなったマーレイの亡霊が現れる。 強欲の罪で鎖につながれたマーレイの亡霊は、“過去のクリスマスの精霊”“現在のクリスマスの精霊”“未来のクリスマスの精霊”が次々とスクルージの前に出現することを予言する。 そして・・・。 【過去の精霊】に、哀しい子ども時代のことや、金を優先したために婚約者に去られた過去を見せられるスクルージ。 【現在の精霊】に、スクルージに薄給で雇われている男クラチットの貧しいが愛にあふれた家庭を見せられるスクルージ。 【未来の精霊】に、ベッドで寂しく横たわる死体。スクルージと名を刻まれた墓石を見せられるスクルージ。 これらの超常体験を経て、スクルージは人との繋がりや慈善に目覚め、金がすべてだった生活から悔い改めるのだった・・・。 というわけで、冷酷無悲な生き方をして金のことばかり考えて生きていると、ろくな未来は待っていないと言うキリスト教的精神訓話・・・。 「クリスマスの日まで金を数えているようではダメで、人間愛をもってクリスマスを祝うのだ~~~。」って話であります。【 3D、CGアニメーション 】 2009年は『3D元年』だと言われているので、09年中に3D映画を見ておこうと思っていたのですが、『クリスマス・キャロル』で、なんとか『3D元年』に滑り込みセーフ。 娘(小3)と息子(小6)は、スクルージが空を飛んで建物にぶつかりそうになる場面で身体をよじって激突を避けようとしていましたし、マーレイの亡霊が扉の向こうから飛び出してくる場面や、黒い馬がひく馬車に乗って未来の精霊が追いかけてくるシーンなど、3Dならではのビックリ・ドッキリ場面にビビっていた様子で、子どもたちは終演後に面白かったと感想を述べていました。 物語自体は、ベタに道徳的すぎて子どもには退屈だったかと思ったんですが、”3D”の威力で子どもたちも楽しんだみたいです。 小生は、『クリスマス・キャロル』の”3D”は「あぁ、こんなモノかな・・・」って感じで、驚くほどのことはなかったです。 子供の頃、白黒テレビがカラーテレビに変わった時の方が感動的でした・・・。(古っ!) 今後はもっと”3D”の活かし方が見いだされ、凄い映画が出来るだろうという気はしました。 (『クリスマス・キャロル』上映前に3Dで予告が流れた『アバター』は、あざといほど”3D”にこだわった映像だった・・・) で、”3D”もさることばがら、パフォーマンス・キャプチャーCGなる技術に感心。 スクルージの皺だらけで嫌味な顔なんて、実写版映画の特殊メイクに見えて、CGと実写版の境界線が分からなくなってきました。 あきらかに『ポーラー・エクスプレス』の時より映像技術が進んでいました。 結果的に『クリスマス・キャロル』の映像を見ながら、3D版で『スターウォーズ』をリメイクしたら凄いのに・・・・なんてことを考えてしまいました。 『エイリアン』も、3D版だったら怖さが増すかもしれないなぁ。【 精神訓話 】 物語に戻って・・・・。 ギスギスした生き方に対して『こんな生き方してちゃダメだよ』って映画なんですが、マネー万能主義が行き詰まってしまったこういう世の中なので微妙に心動かされます。 スクルージのエピソードを見て「もっと人に親切にしないとイケナイ」とか、「潤いのある人生を送らないとだめだなぁ・・・」って思わされちゃう。 ベタなキリスト教讃歌に、洗脳されちゃったかな・・・。 世の中を見渡しても、行政刷新会議の事業仕分け作業におけるトゲトゲしいやりとりとか、およそ人と人との関係に余裕や潤いが社会から無くなっていますから、『クリスマス・キャロル』の道徳的精神訓話に感化されてしまいます。 生まれ変わったスクルージさんのよに、トゲを無くしてソフトで人間的な人生を送りたいものです。愛すべき未来へ(初回限定2CD+2DVD)
2009.11.16
![]()
抜群のリーダビリティ発揮の、新興宗教黙示録!? 仮想儀礼(上) 仮想儀礼(下)◆◆ 内 容 ◆◆ この国には、「救われたい」人間が多すぎる――。現代人の本質を抉る渾身長篇! 男二人が金儲けのために始めたネット宗教。しかし、信者の抱える闇は、ビジネスの範疇を超えていた。家族から無視され続けた主婦、愛人としてホテルで飼われていた少女、実の父と兄から性的虐待を受ける女性……居場所を失った女たちが集う教団は、次第に狂気に蝕まれてゆく。圧倒的密度と迫力! 二十一世紀の黙示録的長篇サスペンス。(新潮社HPより)◆◆ 感想など ◆◆【 新興宗教設立 】 小説家を目指して東京都庁を退職した鈴木正彦が主人公。 編集者・矢口からゲーム小説の執筆を持ちかけられ、5000枚の大作を書き下ろしたが、これがインチキ話で、金も仕事も家族も失った鈴木正彦・・・。 で、思いついたのが”インチキ宗教”の立ち上げ。 『信者が三十人いれば、食っていける。五百人いれば、ベンツに乗れる』として、矢口に手伝わせてネット上に宗教サイトを構築して”聖泉真法会”をスタートさせるた。 教義やなどは、鈴木が書き上げていた5000枚のファンタジー小説が下敷きだ・・・。 序盤、主人公鈴木正彦が金も地位も失うくだりから新興宗教立ち上げまでは、そっけないほどサクサクとコトが運んじゃう。 まぁ、新興宗教設立後がメインの物語だから良いようなものだけど、序盤のストーリーはやや雑な感じがしました。【 次々と問題が起こって 】 ”聖泉真法会”がスタートすると、俄然話が面白くなってきます。 清貧で宗教色を薄目にした鈴木を慕う者がどんどん増えて、信者は最大数千人にふくれあがる。 組織が巨大化するにつれ、中高年の女性信者と、今風の若者信者の間のジェネレーションギャップによって起きるトラブル。 ”聖泉真法会”に入れ込んで、会社の施設を提供してしまう会社社長の浮き沈み。 元・芥川賞作家で、売れなくなって女房子どもを抱えながら、”聖泉真法会”に入信した男が次々と起こすトラブル・・・。 大手の新興宗教団体による”聖泉真法会”への策謀とスキャンダル。 そして、”聖泉真法会”を敵視する信者の家族との問題。 まぁ、次々と問題が起こって、まったく退屈することがない。 上下2巻、結構なボリュームだけど、どんどん引き込まれてページをめくり続けることに・・・・。【 カルト化 】 国会議員など影響力の大きな人物を敵に回し、仕組まれたスキャンダルなどで教団は財産と多くの信者を失ってしまう。 一方、わずかに残った信者は「神懸かり」「先鋭化」してゆき、教祖である鈴木のコントロールが効かなくなっていく・・・。 カルト化を避けようとしていた鈴木の思惑とは正反対の方向に向かって、ことが流れていく。 「オウム」や「イエスの方舟」のように・・・。 そして、破滅と転落。 小生の好みの問題だけど、トントン拍子で教団が拡大していった上巻の成功物語で幕が閉じてた方が、後味は良かったような・・・。 後半が、あまりにもドロドロしていて・・・。 でも、作者が書き表したかったのは、ドロドロの帰結なんだろうなぁ。 新興宗教と、救いを求める現代人が紡ぎ出す破滅がメインディシュなのでしょう・・・。【 すっかり小説世界に… 】 とにかく、色々な信者がいて、それぞれに苛々したり、腹が立ったり、ムカついたり、ウザかったり・・・彼ら登場人物によってすっかり小説世界に引きずり込まれて面白かった・・・。 ただし、ほんの少しばかり話を整理して、濃縮した方が小説として完成度が高まる気もしました。 また、篠田節子氏の作品では『ゴサインタン』なんかに比べると、近作の『転生』や本作『仮想儀礼』は随分と印象が変わってきましたねぇ。 すこしラフな感じがします。 転生
2009.11.08
![]()
純文学とエンターテイメントの融合 平野啓一郎の「ドーン」 ドーン■ 内 容 ■ 2033年、人類で初めて火星に降り立った宇宙飛行士・佐野明日人(さの あ すと)。火星から帰還した明日人はアメリカ大統領選挙をめぐる巨大な陰謀に巻き込まれ て い く。鍵を握るのは、宇宙船<ドーンDAWN>の中で起きた「ある事件」。明日人の妻・今日子、副大統領候補の娘リリアン・レイン・・・・・・ 様々な人 物 た ちの間でうごめくそれぞれの思い。世界的英雄となった明日人を巻き込む人類史上最大の秘密とは?30年後、人類はまだ人を愛することができるのか!? 『決壊』を経て、平野 啓一郎が描く、最高の純文学かつ究極のエンターテイメント小説。 (講談社HPより)■ 感想など ■【 再チャレンジ 】 実は小生、平野啓一郎『決壊』で途中挫折しています。 凡人の小生には、濃密に書き込まれた文学的な言葉の羅列が、上手い文章なのか、はたまたくどい表現や過剰な比喩の積み重ねなのか分からないまま、文学を読み切る心の体力が切れてしまい、大作の序盤でリタイア。 ですから「ドーン」で平野啓一郎に再チャレンジなのであります。【 これが平野啓一郎 】 本作から「これが平野啓一郎の文章だ!!」ってことろを引用します。『・・・・そこでひとつの刹那が、彼を衝撃とともに拉し去って、抱擁しながら跡形もなく引き裂くはずだった。 自分の生の痛ましい痕跡と引き替えに、完全な沈黙へと消え入りながら、もういい、と一言囁いてくれるはずだった。』 大衆小説やライトノベルではお目にかからないような文章表現です。 さらに平野啓一郎らしさに溢れる部分を引用・・・。『四十億年以上もの時間をかけて、気がつけばこうなっていたという、その完全な偶然任せ!呆れるほど楽天的な結果論的美! あらゆる我執から、清々しいほどに自由な時間への信頼! 目にも見えないほどの分子の結合から積み上げて、その表面を晴れやかに覆い尽くす大気に至るまでの誇大妄想的な運動の連鎖! 何もかもが、このたった一つの空間の力に引き寄せられている。人と動物との別を問わず、生物も無生物も関係なく、同じ一続きの場所を得て、重力を介して相互に交わり合っている。もし気まぐれに手を離されれば、たちまち、無限の死の世界へと放り出されてしまうような孤独の最中に、特別にそれを意識させられることもなく、あらゆる生命の活動を許し、あらゆる無機物の存在を受け容れながら、ついに一個の自らであり続ける巨大な複製不可能な生命! 地球と呼ばれる完壁な時間! その表層的な器の中で、独創性の限りを尽くして、ありとあらゆる生物が誕生しては、束の間栄えて絶滅してゆく。---人間たち! その極最近になって登場し、異様な繁殖力で「全地の表」を覆い尽くして、その場所を、神が自分たちのために準備したと錯覚しながら、架空の君臨に酔い痴れてきた、愛すべき、滑稽な人間たち! その経営が任されるには、あまりに無力で、あまりに無知で、あまりに卑小な人間たち!』 登場人物が、宇宙の中の地球と人類を語っているのですが、なんとも凄まじい文学的表現!! 平野啓一郎は、読者に媚びることなく、言葉の塊をぶつけてくる!! これら決して生易しくない文章の連なりを身体が受け付けるかどうかが平野文学を読破できるか否かの分かれ道かな・・・。 幸い「ドーン」は、人類初の火星着陸を果たした宇宙飛行士を巡るストーリーの面白さがあったので、最後のページまで辿り着くことが出来ました。【 何を訴えかけている(1) 】 さて、文学作品でありますから「ドーン」を通じて平野啓一郎が何を訴えかけているのか、”解”を見つけたいなどと思ってしまいました。(国語のテストみたいな・・・) まずは、主人公を巡る身近な物語から・・・。 医師である主人公・佐野明日人は東京大震災で一人息子を亡くし、その後火星探査に参加し、6年間地球を離れる。 明日人の妻は、亡くなった息子の詳細データから作られ年月とともに成長する息子のホロイメージを家の中に再生し悲しみを埋め合わせている・・・。 火星探査によって生じた6年の空白や互いの異性問題など、主人公夫婦に降りかかる複雑な出来事の積み重ねによってすれ違ったり、理解し合おうとしたりする”夫婦の心・感情”が「ドーン」の柱ではあると思う。 だけど、それだけがこの物語のすべてではない気がします。【 何を訴えかけている(2) 】 作中、2030年代のアメリカの大統領選挙が描かれているのですが、この時代のアメリカは中東を通り越して東アフリカで民主化のための戦争をやらかしていて、一国主義で主戦派の現職と、国連主義で東アフリカ戦争に懐疑的な対立候補が選挙運動を繰り広げています。 イラク戦争の延長線とも思える「軍産複合体」「民間戦争会社」「ロボット兵器・ハイテク兵器」などの是非を議論する両候補の言葉を通じて、平野啓一郎はアメリカの振る舞いを諫めているのでしょうか・・・。 でも、平野啓一郎が単純に反米を訴えているようにも思えない。 もっと深い意味合いがありそうです。【 何を訴えかけている(3) 】 ネット上にアバターを作るように、現実社会で自分の色々な個性・人格を使い分ける「分人」という概念が登場します。 職場での人格、恋人や家族と過ごすときの人格などを別人格として独立させ、積極的かつ意識的に”多重人格”である生き方・・・「分人主義」 たしかに複雑な社会を生きていくためには、色々な顔を使い分けていますものね。 小生自身で考えれば、趣味に没頭するオタクな自分、子どもと接する子煩悩な自分、公の場での完全なる作りものの表情を浮かべてる自分、友人と猥雑な話をしている自分、電車で老人に席を譲る自分、嫌いな上司に憎しみさえ抱く自分・・・考えれば数え切れない自分があります。 作中の近未来では、これらの自分を独立させて日々を過ごす人が多数派になっています。(小生の稚拙な言葉では表現しきれていないなぁ) 色々な顔があっても自分は自分だという考え方も含めて、「自分とは何なのか?」を平野啓一郎は語ろうとしている気がしました。【 何を訴えかけている(4) 】 イギリスでは監視カメラが至る所に設置されて犯罪捜査などに利用されていると聞きます。 アメリカでもいわゆる「愛国者法」に基づき盗聴や監視カメラなどでテロ予防が行われています。 日本でも、道路に設けられたNシステムで通行車両が撮影され、犯罪捜査に用いられています。 これら国家権力による監視体制の独占に対抗するために、店舗の監視カメラなど民間が設置したカメラをネットワークでつなぎ誰もがアクセスできる「散影」というシステムが作品の重要なアイテムとして登場します。 国家だけにコソコソと監視させるより、いっそのことすべての監視映像をオープン化することで国家権力を牽制しようと言う考え方。 国家権力への問題提起と、急速に進歩する情報通信技術の未来についての考察を、平野啓一郎が提示してるのかな・・・。 以上を総合すると、「ドーン」には、複雑化した社会が、新しい技術の進歩でさらに深く複雑化したとき、人間の生き方がどう変わるかを書き示されているのか・・・・。 とにかく「分人主義」「散影」という平野啓一郎の造語による概念やツールが印象的で、翻って”今の自分”、”今の社会”を考える材料となる一冊でした。凡庸な小生には難しい作品だったけど、きっと「これが答えだ」なんてモノもなくていいのでしょう。 一冊読み切って、何かが心の肥やしになればそれで良いのかも・・・・。 (小さなことだけど、主人公・佐野明日人が”さのあすと”ではなく、”セイノ・アストー”と英語読みで呼ばれていることも妙に印象的でした。)
2009.11.02
![]()
面白すぎる傑作ジャパン・ファンタシー 獣の奏者 (1(闘蛇編)) 獣の奏者 (2(王獣編))■内 容 国を守る戦闘獣”闘蛇”をあやつる闘蛇族で、獣ノ医術師の母と暮らす少女エリンが主人公。 ある日、闘蛇が一斉に大量死し、その責任を問われ処刑されそうになる母を救出に向かったエリンだったが、母を救うことができずに闘蛇の背にまたがって川を伝って逃亡するうちに消耗し果てて気を失う・・・。 目を覚ましたエリンを蜂飼いのジョウンが見つけて、彼がエリンの親代わりとなって暮らすことになる。 蜂を育て薬草を探す暮らしをする内に、エリンは山中で天翔ける”王獣”と出合う。 やがてエリンは王獣の医術師を目指して学舎に通うことになるのだが、王国の政治の渦に巻き込まれ・・・。■感想など うつ病持ちの小生は、読書を日課にしているのだけど、1日100ページ読むことを目標にしているうちに、趣味の読書が自分に科されたノルマのようになってしまい、重荷になりつつありました。 そんなことを心療内科の医師に話すと、「子ども向けの本はサクサク読めるし”心の栄養”になりますよ」とアドバイスしてくれて、早速、図書館の児童書のコーナーに行って見つけたのが、この『獣の奏者』-◆- アニメ『獣の奏者エリン』(見てない)の原作で、”守り人”シリーズの著者の本だから、試しに読んでみようと思ったんです。 で、読み始めたら児童書なんてレベルじゃない!! 50歳前の小生が読んでも、めちゃくちゃ面白い!!-◆- 少女エリンの過酷で波瀾万丈の運命や、彼女を取りまく登場人物の造形や、何もかも一級品のファンタジー!! ダイアナ・ウィン・ジョーンズと比較するのは少しずれてるかもしれないけど、DWJに勝るとも劣らない物語の面白さです。-◆- 残念ながら、図書館の書架には「1:闘蛇編」「2:王獣編」しか並んでいなくて、3巻、4巻はしばらく順番待ち状態の人気ぶり。 これだけ面白くて内容もしっかりした本作品だったから、心療内科の医師が言ってくれたとおり”心の栄養”になりました。 いつかアニメ版の『獣の奏者エリン』も最初からじっくり見たいな・・・。グリフィンの年
2009.10.08
![]()
第12回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。 プラ・バロック■内 容 主人公は、射撃の名手で神奈川県警機動捜査隊に所属する美貌の女性刑事・クロハ 刃物で首を切り大量出血させる連続殺人。 そして埋め立て地の冷凍コンテナからは、集団自殺をうかがわす14体の凍死体が発見される。 冷凍コンテナ事件を追う内に自殺サイトの存在が明らかになり、鼓動と呼ばれる管理人にいきつくクロハだが・・・。■感想など 第12回日本ミステリー文学大賞新人賞で、応募作151編から選ばれた最終候補4編の選考で、選考委員の有栖川有栖、石田衣良、田中芳樹、若竹七海が全会一致でこの作品を選んだそうな・・・・。 驚くべきことに公式HPまで作られてる。-◆- 恐ろしく怜悧な作風。 あまり読んだことのないメタリックな味わい。 生活臭のない無機質な文章。(良い意味でも悪い意味でも・・・) 仮想空間が絡む物語はミステリだけどSF的な肌触りも・・・。-◆- 機動捜査隊に移動してきた女性刑事・クロハと古株刑事カガの対立など、お約束の展開もあるんだけど、普通の警察小説とは違ってる。 登場人物の名前はクロハ、サトウ、タカハシなどほぼカタカナ表示で、日本が舞台でありながら何かしら無国籍な雰囲気。 時代的にも現代なのか近未来なのか掴み所のない不思議な別世界のよう・・・。-◆- 自殺願望と殺人願望が絡み合って、事件は収斂していく。 クロハの追跡行は突き刺さるような苦しみを伴う。 生と死、現実と仮想、残虐と正義、どれもこれも尖ってる。 クロハが追いつめた犯人は、犯人であって犯人でない・・・。-◆- 静かな作品だけど、読み終えてから圧倒的に不可思議な後口を感じさせる。 フ~~ム? 面白かったのか、面白くなかったのか? 文学だけでなく、アニメなど今風のメディアの影響を感じる作品。 際だってクールな1作です。★映画版レインフォール(DVD)レイン・フォール/雨の牙 コレクターズ・エディション (レインフォール)★小説版レインフォールレイン・フォール/雨の牙
2009.09.22
![]()
CIAで戦略スタッフだった作者による暗号化プログラムを巡るサスペンス。フォールト・ライン■内 容 優等生の弟アレックスは弁護士になりシリコン・ヴァレーの法律事務所に勤務。 体育系の兄ベンは軍隊に入り、今では特殊部隊に身を置き、暗殺などにも手を染めている。 過去の悲しい出来事から、二人の間には決定的な確執が生まれ、ここ数年は連絡も取り合っていなかった。 アレックスは、莫大な利益を生み出す画期的な暗号化プログラムを開発したリチャード・ヒルゾーイの代理人となって特許事務などに携わり、製品化後の手数料収入を踏み台にして法律事務所で共同経営者に名を連ねることを狙っている。 そんなある日、ヒルゾーイが殺される。 さらにこのプログラムを審査していた特許局の係官も殺害される。 そして、謎の敵はアレックスの自宅に侵入し・・・・。 九死に一生を得たアレックスは、敵の魔手から逃れるために兄ベンに助けを求めるのだが・・・。■感想など 08年に映画化された『レイン・フォール/雨の牙』(出演:椎名桔平、長谷川京子 他)の原作者で、CIAで戦略スタッフだった作者によるサスペンス。-◆- 画期的なセキュリティソフトのもととなる暗号化プログラムを巡る攻防がストーリーの柱。 弁護士のアレックスが見えない敵から命がけで逃れるストーリーは小気味いい。 実際にCIAスタッフだった著者の経験が活かされていて、リアリティな諜報の世界が書き込まれていて、テンポ良く読み終えました。-◆- アレックスとベン、そしてアレックスの同僚女性弁護士が正体不明の敵と攻防を広げるのだけど、スケールの大きさはそれほどでもないかな・・・。 敵の正体に関する謎解きにもそれほどのサプライズは感じない。 そのあたりを差し引いても、それなりに面白かった。 大傑作ではないけど、まずまずの作品でした。★映画版レインフォール(DVD)レイン・フォール/雨の牙 コレクターズ・エディション (レインフォール)★小説版レインフォールレイン・フォール/雨の牙
2009.09.10
![]()
おバカで奇天烈なポリティカル・ノベル「細菌列島」細菌列島■内 容 富士急ハイランドに勤める35歳の男が主人公。 月岡正一と名乗るその男が、ある朝突然、原因不明の高熱を発してから日本を揺るがす事件が起きる。 正体不明の細菌が猛威を振るい、人々は目などから黄色い粘液を流しながらバタバタと倒れていく・・・。 著名な学者は1000年に一度地球に接近する謎の天体ステルスから細菌が降り注ぐというのだが・・・。 謎の病気は、某国の仕掛けた細菌戦なのか、宇宙からの災いなのか・・・。■感想など 「細菌列島」という題名から、シリアスな中身だと思いこんで読み始めたら、とんだ勘違いで・・・。 金正日まで登場する超軽くて良く言えば洒脱な細菌パニック&ポリティカルサスペンス!? ほとんどキワモノのトンデモ本であります。-◆- 月岡正一の正体は知る人ぞ知る北の将軍様のご長男。 大好きなテーマパークの研究のため(?)日本に潜入して”富士急ハイランド”でアルバイト(ゲゲゲの妖怪屋敷でねずみ男の着ぐるみを被るバイト)をしてる。 そんな彼が、愛する日本女性との間に産まれた子供を救うために日米朝を巻き込む細菌戦阻止に立ち上がる???-◆- こういう小説って、どういうジャンルになるんだろうか? ライトノベルでもないし、外交・安保絡みの話だけどポリティカルサスペンスと言うにはオチャラケてるし、ユーモア小説の部類なのか・・・。 ジャンル分けしがたい軽~~い読み物で、他人様にお勧めするほどの小説ではないかも・・・。 神器(上) 神器(下)
2009.08.20
![]()
感動した。涙した。 零戦による特攻攻撃で命を落とした操縦士の感動の物語「永遠の0(ゼロ) 」 若い人に是非読んで貰いたい1冊です永遠の0■内 容 フリーライターの慶子が第2次世界大戦の特攻隊員を取材することになり、弟の健太郎を臨時の助手従えて、特攻攻撃で亡くなった祖父・宮部久蔵の調査を始める。 宮部のことを知る生き残った元軍人に取材する内に、宮部を「臆病者」と呼ぶものと「命の恩人」と呼ぶ者がいることが判明する。 相反するように思える宮部の人物像の背景にあった彼の心の内とは・・・。 太平洋戦争の痛ましさと、家族愛などを描いた感動傑作。■感想など 読み終えた時、涙が・・・。 泣けました。 そして、世知辛いとはいえ今の平和な日本の礎となった人々に心を馳せました。-◆- 元軍人をインタビューする形で戦争の悲惨さ、愚かさ、理不尽さがヒシヒシと伝わってきます。 そして、「生き残りたい、妻子と再び暮らしたい」と願い続けた天才ゼロ戦パイロット宮部が、自ら特攻死した経緯が感動的。 さらに、宮部と彼が残した妻子、そして孫でフリーライターの慶子とその弟・健太郎の不思議なえにしはファンタジックでさえあります。■印象に載ったフレーズ「六十年も世代が違うと字も読めなくなるんだなあ」「なんか全然違う人種を相手にしてる気分だよ。」 元軍人から届いた手紙の文字は、旧字体と達筆すぎる文字が並んでいて、若い慶子と健太郎には判読が難しいのです。 この小さなエピソードで戦後六十数年の時の流れを教えてくれます。 太平洋戦争は、わずか60数年前でもあり、遙か60数年前でもあるのです。-◆- 旧・日本軍上層部の愚かな作戦や軍上層部の官僚的発想の過ちがよく書き込まれているのですが、なかでもゼロ戦の性能に関する次の文章は、今まで思いもしなかったものでした。 「八時間も飛べる飛行機は素晴らしいものだと思う。しかしそこにはそれを操る搭乗員のことが考えられていない。八時間の間、搭乗員は一瞬も油断出来ない。(中略)いつ敵が襲いかかってくるかも分からない戦場で八時間の飛行は体力の限界を超えている。自分たちは機械じゃない。生身の人間だ。八時間も飛べる飛行機を作った人は、この飛行機に人間が乗ることを想定していたんだろうか」 人を人として考えていない設計思想には今まで思いが至りませんでした。 で、昨今の雇用不安。 ハケン、期間雇用など非正規雇用の労働者を消耗品として扱う今の労働環境って、特攻隊という究極の消耗戦を敢行した日本軍の思想を受け継いでしまっているような・・・。 政治や経営者の責任だけではなく、我々日本人全体が個人の命や生活を軽く考える国民性を持ってるんでしょうか?-◆- 戦前戦後の新聞社の姿勢について、作者は厳しく断罪しています。※記者の言い分・・・。「戦前の過ちを検証し、戦争と軍隊を否定したのです。そして人々の誤った愛国心を正しました。平和のために。」※元軍人が語るメディア論・・・ 「戦前、新聞は大本営発表をそのまま流し、毎日、戦意高揚記事を書きまくった。戦後、日本をアメリカのGHQが支配すると、今度はGHQの命じるままに、民主主義万歳の記事を書きまくり、戦前の日本がいかに愚かな国だったかを書きまくった。まるで国民全体が無知蒙昧だったかという書き方だった。自分こそが正義と信じ、民衆を見下す態度は吐き気がする。」 今に通ずるジャーナリズムの在り方が問われていると同時に、人が「唯我独尊」「独善」に陥ることをたしなめているような気がします。-◆- とにかく抜群のリーダビリティと、精密に組み立てられた物語は抜群に上手い。 同じく海軍を部隊にした奥泉光の『神器 軍艦「橿原」殺人事件』と共に読むのも面白いと思います。 そして、家族や仲間を思いながら戦争で命を落とした御霊に合掌であります。 神器(上) 神器(下)
2009.08.08
![]()
「このミステリーがすごい! (2009年版)」19位にランクされた山岳ミステリ 大倉崇裕(著)「聖域 」聖域■内 容 主人公・草庭と学生時代山岳部でパートナーだった安西が登山中行方不明に・・・。 悪天候で救助もままならず、滑落死とされた。 安西の登攀技術で落ちる山ではない・・・草庭は一抹の疑問を抱き、安西が落ちた山に登るのだが・・・。■感想など 「このミステリーがすごい! (2009年版)」19位と、そこそこ評価を受けた山岳ミステリ。 著者自身が学生時代は山岳部に所属し、思い入れのある一冊。-◆- ボクは山登りなどしないのだけど、取っつきにくさは全然無く、読みやすい。 ただし、読みやすさ、灰汁の無さは、インパクト不足にも繋がってるかな・・・。 主人公・草庭が、じわりじわりと”安西滑落”の謎に迫るのだけど、静かに展開するのでやや地味目。 登場人物も、大人しい。-◆- 謎解きというか、犯人については「意外性」と「反則」の狭間みたいな感じ。 少し強引だと思うなぁ・・・。-◆- 山を舞台にする作品では、高嶋哲夫著『ミッドナイト・イーグル』とか、 笹本稜平著『グリズリー』などスケール感のある派手目の作品が好きなので、地味で至極真面目な本作には少し物足りなさを感じました。 ただし、山登りをしないボクには分からない魅力が詰まっているのかもしれません。 グリズリー ミッドナイトイーグル
2009.07.24
![]()
CATVで放映された『銀色の髪のアギト』(2006年公開)を観ました。 特段の思い入れもなく、たまたまEPG(電子番組表)で放映を知って録画したのですが、これがなかなか素晴らしい作品でした。銀色の髪のアギト DVD 通常版■作品概要 今からおよそ数百年後の未来。文明が崩壊した世界は、意志を持った植物達が支配する森と、荒地に分断されていた。森に隣接する『中立都市』に暮らす少年・アギトは、勝手に近づいてはいけないと言われている泉の底で、光を放つ不思議な機械を見つける。その中には、一人の美しい少女・トゥーラが眠っていた。彼女は長い間眠りについていた過去の世界の人間だったのだ。だが、彼女の目覚めをきっかけにバランスを保っていた世界はその均衡を崩していく…。(メディアファクトリーHPより) 【 物語世界や絵がイイ 】 森が人を襲うようになってしまった300年後の地球が舞台。 ”文明が崩壊した未来”の廃墟とか、そこの暮らす人々の描写が凄く良いんです。 全体的に、絵が美しい(日本のアニメらしいクオリティ) そして、物語世界の設定もとても魅力的。 ”地球緑化プロジェクト”での遺伝子操作の失敗により植物達が暴走して”意志を持った森”が誕生しているなんて設定に心くすぐられますし、武力によって、森を制圧しようとする「軍事都市」や、森との共存を模索する「中立都市」のせめぎ合いとかも、SF的、且つ観念的な魅力を引き出していて素敵です。 300年前の技術が残された『火山』からメカニカルな足が生えて自走するなんて設定も、なかなかはじけてますよ。 森の力を得て”強化体”となった主人公・アギトと、人口冬眠設備の中で300年眠っていた少女トゥーラもイイ。 『もののけ姫』や『ナウシカ』あたりと共通するテーマ性もあるし、なかなか良質のアニメだと思いました。【 興行収入約4億円 】 DVD版「銀色の髪のアギト」の宣伝文句には「興行収入約4億円と大ヒットを記録」なんて書かれているけど、『崖の上のポニョ』の約155億円とは二桁も下で、約14億円といわれる『ナウシカ』の興行収入と比べても3分の1以下・・・。 宮崎駿監督の長男の宮崎吾朗氏が監督した『ゲド戦記』でさえ76億円ってことだもの・・・。 「アギト=4億円」「ポニョ=155億円」って、そんなものなのかなぁ・・・。 そこまで作品内容やクオリティの差が大きいのかなぁ?【 ブランド力・・ 】 で、思ったんです・・・。 もし、『銀色の髪のアギト』を宮崎駿作品だと偽って06年に公開していたら、それだけで興行収入が一桁増えてたんじゃないかって。 ヘタしたら100億円のオーダーだって有り得たかも・・・。 ボクは『ナウシカ』や『トトロ』は大好きなんだけど、『ハウル』以降は宮崎アニメへの渇望感や、「ジブリ」「宮崎駿」というブランドへの安心感、期待感だけで映画館に行ったような感じです。 だから、『銀色の髪のアギト』が”宮崎ブランド”で公開されていたら・・・なんて、あり得ないことを考えちゃうのです。 少なくとも、「ゲド戦記=76億円」の約20分の1ってことはないと思うんです。 『銀色の髪のアギト』は万人ウケする映画じゃないから仕方ないかとも思うけど、『ゲド戦記』や『ハウル』もジブリ映画でなければ行かなかった人がいた気がするんです。 ありあえず、ボクの主観でしかないので、商業的な結果で評価するしかないのかな・・・。崖の上のポニョ[2枚組]
2009.07.16
![]()
ハヤカワ文庫‥‥小林めぐみ(著)「回帰祭」回帰祭■内 容 汚染された地球から脱出した避難船の一隻『ダナルー』が、300年年前に不時着した星が舞台。 といっても、人々は5万人収容可能な避難船『ダナルー』の中で暮らし、外の世界への植民は行われていない。 あくまでも、地球へ帰還するために一時しのぎであり、不時着した星に名前さえ付けず300年過ごしている。 『ダナルー』では誕生センターで人工授精に行って子供が生まれるのだが、中央システムの不具合で男女が9:1の割合で誕生し、16歳でカップリングできない”余った”男子は全員復興した地球へ回帰する。 そして今年16歳を迎えた3人の少年少女が閉鎖都市を揺るがす事件に遭遇する・・・。■感想など 結論から申し上げますと、結構面白い。 けど、結末に至る詰めが甘いかな。-◆- 平凡な少年アツと友人で変わり者の少年ライカ、そして勝ち気な少女ヒマリが主人公。 16歳になるアツは、『ダナルー』内ですれ違った名前も知らない少女に一目惚れ。 彼女を見つけるためにライカとともに『ダナルー』内を探検するうちに忘れ去られたエリアで『喋るウナギ』を発見・・・・。 と言うわけで、SFをベースに、少年少女の冒険談と淡~~い恋の物語も加味された物語。 ライトノベルなのか、ジュブナイルなのか、一般的なSFなのか境界線にある作品だから、サクサクと読みやすいことは確かです。-◆- 閉鎖都市『ダナルー』を仕切ってる中央システムの暴走というか不具合(2001年宇宙の旅のHALみたいな)があって、その原因も別にあって、その謎解きやらアツたちとシステムの対決やらがハイライト。 アツ、ライカ、ヒマリのキャラもしっかりして、不時着時に船体の半分が潰れた『ダナルー』で縦横無尽に繰り広げられる冒険談が面白い。 ラストは、完全に幕が閉じることなく余韻を残して読者に委ねられてる。 ただし、ラストへは、だだっと滑り込んじゃう感じで物足りなさも・・・。 とはいえ、不時着した地球脱出船という設定はいかにもSFらしくて、SF小説に飢えている小生の渇きを癒してくれました。 シンプルなSF小説でした。ちょっと贅沢なふんわりチョコロール■1日先着20名様限定■【ふんわりチョコロール】
2009.07.10
![]()
トム・ロブ・スミス(著)「チャイルド44」2009年度版『このミステリーがすごい!』海外編・第1位。この評価に全面的に納得の、超面白ミステリ!! チャイルド44(上巻) チャイルド44(下巻)■内 容 スターリン体制下の旧・ソ連が舞台。 社会主義体制維持のために恐怖支配を敷く”国家保安省”の捜査官レオ・デミドフが主人公。 部下ワシリーの恨みを買ったデミドフは、奸計にはまり妻とともにモスクワから片田舎の民警へと追放される。 追放処分で誇りをズタズタにされ、すべてを失ったデミドフは、新天地で猟奇事件に遭遇し、やがてこの事件解決に心を傾けていくのだが・・・・。■感想など 世間の評判と、自身の好みが合うとは限らないのだけど、この作品が『このミス1位』であることに100%納得。 文句なしに面白かった。 広大なソビエト連邦を舞台にした物語は壮大で、緻密に描かれた共産主義社会の重苦しさがズシリとのし掛かってくる。 国家から追跡されている主人公が、大量殺人犯を追跡するストーリーは、とにかく途切れることなく結末へと向かっていき、退屈することなく読み終えました。 ミステリの範疇を越えた傑作です。-◆- 遠い昔になりつつあるソ連の共産主義体制を描く文章は、痛々しいほどソ連の矛盾をいぶしだしている。 孤児院や知的障害者の施設の描写は凄まじく、人間より国家体制が優先される社会の醜さたるもの、悲惨という言葉では語り尽くせません。 そして、共産主義の理想と現実の落差や矛盾を知りながら、共産主義の”建前”に拘って人民を苦しめる国家保安省に属していたデミドフの言葉が端的にソ連社会を表現しています。 『犯罪は貧困と欠乏がなくなれば消滅する(上巻)』 『人はものを盗む必要もなければ、暴力的になる必要もない。なぜならみな平等なのだから。(上巻)』 大いなる矛盾が、事件に関係のない人民を次々と処刑に追い込み、逆に真犯人は途絶えることなく少年少女を殺し続ける----。-◆- 国家保安省の建物の雰囲気についてデミドフが語ります・・・。 『いつも居心地の悪さを覚える。その建物の中ではさりげない会話などまず聞かれない。屈託のない受け答えなどありえない。ここでは誰もがガードをしている。(上巻)』 こういう建物、こういう組織の中で、ひたすらデミドフへの妬みや恨みを抱きつづける部下のワシーリーは、ヘビのように嫌らしく、主人公を苦しめ続ける。 ワシーリーの策略に嵌り、追放され、追跡され、殺されそうになる主人公・・・。 この状況をかいくぐりながら、大量殺人犯を捜査し続けるデミドフの執念は、単純な正義感ではなく、酷く鬱屈した感情であり、物語に深みを与えています。-◆- ラストに向かい、人間の尊厳、夫婦の再生、飢餓など極限状況から生まれた悲劇などが次々と書き連ねられて文学の香りも・・・。 怒りや悲しみさえ封印して、生きることだけを目的に日々を過ごすソ連人民の様子が生々しく印象に残りました。 MW(ムウ)(1) MW(ムウ)(2)
2009.07.03
![]()
ボックス!■内 容 大阪の高校ボクシング部が舞台。 ボクシング初心者で校内でも5本の指に成績を続ける木樽。 天才肌でトリッキーなボクシングをする鏑矢。 ひょんなコトからボクシング部顧問になった英語教師・耀子。 そしてライバル高の強豪選手。 彼らが織りなす、青春「ボクシング」小説。■感想など 大阪の朝日放送で「探偵ナイトスクープ」の構成作家だった百田尚樹が書いたこの作品は、抜群に面白い。 素人時代からテレビに出演してめっぽう可笑しかった”百田尚樹”ではあるけど、「笑い」のカテゴリではなく、これ程「爽やかな青春小説」を書くって、少し驚き・・・。-◆- 小生が大阪生まれだから、大阪の高校が舞台のこの作品から伝わってくる大阪の匂いも心地よい。 そして、秀才・木樽が「強くなりたい」と願ってボクシングを始め、愚直なまでに努力を重ねるうちに、中学時代からの友人で天才的なボクサーである鏑矢に肩を並べる成長物語は凄く爽快。-◆- ボクシングの練習や試合の描写も精緻で、本を手にしながら、木樽や鏑矢の動きにつられて身体が動きそうになる。 高校生と一緒に汗をかいたような気になってしまう。 百田尚樹の筆が走る!! 上手い!! とにかく抜群のリーダビリティと、爽快さと、ほんの少しの切なさと・・・。 なんて気持ちの良い読後感・・・・。永遠の0(ゼロ)
2009.06.21
![]()
CVTVで観た映画版『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』の感想です。ぼくたちと駐在さんの700日戦争 ~1979年、こんな曲に夢中だった~ ブログ小説が原作の映画。 映画館で観るほどの映画じゃないけど、家で観る分には面白くって、爽快で、イイ感じでした。【 概要 】 映画版は栃木が舞台。 ママチャリ(市原隼人)たち、やんちゃな高校生がイタズラを仕掛けて駐在さん(佐々木蔵之介)を挑発し、駐在さんも大人げなく高校生に逆襲する。 田舎町でのイタズラ攻防戦が描かれた映画。【 悪ガキたち 】 こっそり駐在所にエロ本を置いて、駐在さんが一般市民からの顰蹙を買うようにしようとしたり、ひたすらたわいのないイタズラを仕掛ける高校生がとても可笑しい。 都会的な陰湿さが全くない悪ガキたちは可愛らしい。 市原隼人を筆頭に、お姉キャラのジェミー(冨浦智嗣)とは、肥満キャラの千葉くん(脇知弘)とか、個性的で罪のないキャラクターが揃っていて面白いんです。 高校時代の男子(子ども以上、大人未満)ってのは、こんなバカな日々を送るぐらいな方が良いですよ。 せっかくの青春時代も、あっと言う間に過ぎちゃって、社会に放り出されるんだから・・・・。【 佐々木蔵之介 】 駐在さんを演じる佐々木蔵之介は、情が厚いのか薄いのか掴み所の無さがとってもイイ。 悪ガキたちを騙して、パトカーで山中に連れ出して置き去りにしたり、酷く大人げないのだけど、憎めない不思議なキャラを巧く演じておられます。【 市原隼人 】 市原隼人って、笑顔が可愛らしいですよねぇ。 で、やんちゃな高校生を暗示させたら「当代一」ですよ。 青春の巨匠を自認する”森田健作”も政治の世界で手垢が付いちゃってイメージ良くないから、21世紀の青春の巨匠は市原隼人ですよ。【 面白かった 】 病気で入院している女の子に花火(空に打ち上がるでっかいヤツ)を見せるために、市原隼人たちが悪巧み(?)をするエピソードは、それなりにペーソスもあって爽やか。 アホらしいイタズラはベタに面白くてクスクス笑えたし、なかなか楽しめる佳作でした。虹の女神 Rainbow Song(期間限定)(DVD) ◆20%OFF!市原隼人/綾瀬はるか/あいくるしい 第1巻
2009.06.11
![]()
2009年公開映画原作「重力ピエロ」やっぱり伊坂幸太郎は良い!! 重力ピエロ■内 容 兄・泉水と弟の春。 二人の周りで起きる連続放火。 火事と関連がありそうな落書き=グラフィティアート。 兄妹は連続放火犯を求め、グラフィティアートの謎解きを試みるのだが・・・。■感想など 「連続放火事件」と「落書き」を巡る本作は、不思議な読後感の残る作品で、伊坂幸太郎らしさが良く出ています。 スマートで鮮やかで精緻に紡がれたストーリー・・・上手い。-◆- 伊坂幸太郎は、ガンジーの平和主義をも喝破してしまう。 『ガンジーの思想は駄目なわけじゃない。ただ、あれは残念なことに、人間にはあるレベルの善が生まれながらに備わっているのが前提なんだ。前提が違うんだから、ただの幻想でしかない」』 性善説を悲しみながら否定するこの一文は、著者が『魔王』で描かれている「悪」と表裏一体なんだと思う。-◆- とにかく、ポップだけど深みのある伊坂作品には駄作がない。 02年刊行の『ラッシュライフ』 03年に発表した本作『重力ピエロ』(直木賞候補) 04年『アヒルと鴨のコインロッカー』(吉川英治文学新人賞受賞) 05年『グラスホッパー』 06年『死神の精度』(直木賞候補) ・・・その後の活躍も周知のとおりで、映画化される作品も多い。 本作を含め、どの作品にも映画にしたくなる「深い物語」が描かれているからだと思う。 ■DVD=アヒルと鴨のコインロッカー◆小説=アヒルと鴨のコインロッカー■DVD=Sweet Rain 死神の精度◆小説=死神の精度
2009.06.01
全313件 (313件中 1-50件目)
![]()
![]()
![]()