ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Jan 28, 2018
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カテゴリ: 映画、テレビ
「A whale is no more a fish than a dorphin is」(評価 ★★★☆☆ 三つ星)

 可愛いイルカちゃんたちを殺して食べるらしい残酷で野蛮なとんでもない国ジャパァンっ!を描いた2009年の米国映画​ 「ザ・コーブ」 ​。アカデミー賞までお獲りになっちゃったこの作品に対抗して日本人監督が制作したのがこのドキュメンタリー映画。
 こちら英語圏市場では、英語吹き替え版で配信されており。

<感想>
 この映画は後半が面白い。ご多忙の方は後半だけ観てもいいかも。前半はそれぞれの当事者がそれぞれの言語で愚痴とか言い訳とか言ってばかりで、なんだか「コーブ」から全然進歩してないような気がして焦ったけど、後半にかけて論理的になっていく。
 「コーブ」が、巧みな隠し撮りとか、危機感をあおる超かっこよい編集で、しかもお金をかけて作られてて世界ぢゅうから注目を浴びたのに比べ、この映画は地味。どこまで世間一般に観てもらえてるのかは不明。
 開き直って、冷静に事実だけをパワーポイントとかで淡々とわかりやすく説明したほうが説得力があったか。多角的な取材、分析という意味では「コーブ」より優れているわけだし。「あと出しジャンケン」という見方もできるけれど、日本語話者、英語話者ともに多くの人に取材している点はすばらしい。

 そして、その情報をどのように理解するかはぼくら視聴者次第。てか、相変わらず日本のみなさまってば、芸能人の不倫ネタでせっせと貴重なお時間を割いてお過ごしでいらっしゃるようだけれど、こうゆう映画を観て、「媒体が公表する情報」に関してどこまで興味を持ちどこまで信じてどこまで無視し、そしてどこまで自分たちの日常生活や信念に適用するべきかを改めて考えてみたいかも。
 あと、自分の信念を他人に押し付けたい場合、どのような方法をとるかってのも大事。

 例えば、動物愛護を論じるなら、人間はどのようなときに動物を殺しているのかをまず整理してからでないと。
一.食べるため(例:美味、栄養)
二.装飾品を作るため(例:象牙、鯨油、くじらのヒゲ、ヘビやワニの革)
三.寒さから身を守るための衣類を作るため(例:イヌイット)
四.伝統文化、娯楽、スポーツのため(例:英国のキツネ狩り、スペインの闘牛)
五、農作物を荒らされたり、人間の生活を脅かされたりするのを防ぐため
六、(殺しはせず)捕獲して動物園や水族館で展示したり芸をさせたりするため
など

 これらはいっしょくたにせず個別に討論していくべき。まず、その対象となる動物は、どこで線引きをするのか、誰が決めるのか。イルカとクジラの違いだけでも激しく論争されそう。
 さらに、食用だったら、水銀、タンパク、バレニンなどはどのぐらい含まれているか、人体に関する影響はどの程度か、とか。
 装飾用だったら、動物の皮で作ったカバンと、石油で作ったプラスチック製のカバン、どちらが「持続可能」、「地球に優しい」のか、とか。
 捕獲に関する国際的な法律や基準があるなら、その対象となっている動物、加盟国/非加盟国、そして、政治的な資金の動きなどはどうなっているのか。
 国連にはどれぐらい頼り、どれぐらい距離を置くべきか。他の捕鯨国(北欧とか)と日本とではなぜ国際社会の反応が異なっているのか。

 環境保護団体シーシェパードの活動についても同様、成功例、失敗例、彼らの活動の優れている点、よろしくない点など客観的に分析したい。太地町の町長さんも町民さんも、シーシェパードに対してはもっと論理的に抗議すべき。観光業にも大打撃のようだし。逆ギレして慣れない英語で抗議するのは絶対に逆効果。
 ふだんの町の皆さんの笑顔の映像観てると、いい人そう賢そうなお方ばかりなのでもったいない。

 結局、「コーブ」の製作者、およびシーシェパードの太地町非難者たちは、何に対して誰に対してご立腹なのかいまだにわかりづらい。そしてこの映画の最後のほうで触れられているように、「アメリカは日本のことを上から目線で見たがる人種である」ことにも留意する必要がある。

 実際この映画で一番興味深かったのは、アメリカでも日本でもない「第三者」さんへの取材内容。ノルウェイのオスロ大学教授なんとかかんとか氏の、感情に流されない冷静な分析には、なるほどぉと思った。









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最終更新日  Feb 3, 2018 01:35:40 PM
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