日本語はダメか2

日本語はダメか2

2010.12.30
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 もう一度、伏鱒二の『厄よけ詩集』。
 なんだかスカされているような、そんなとぼけた味が溜まらない。
 この心境を引き寄せれば、こちらの心も少しは軽くなるだろう。

 掃除もしない、捜し物もしない、お飾りもお料理もしない……そんな晦日。



     歳末閑居

 ながい梯子を廂(ひさし)にかけ
 拙者はのろのろと屋根にのぼる
 つめたいが棟瓦にまたがると
 こりゃ甚だ眺めがよい


 ままよ大胆いっぷくしていると
 平野屋は霜どけの路を来て
 今日も留守だねと帰って行く

 拙者はのろのろと屋根から降り
 梯子を部屋の窓にのせる
 これぞシーソーみたいな設備かな
 子供を相手に拙者シーソーをする

 どこに行って来たと拙者は子供にきく
 母ちゃんとそこを歩いて来たという
 凍えるように寒かったかときけば
 凍えるように寒かったという


手書きハート太宰治が頼り切った井伏鱒二。丸い丸い顔をして『伊曽保物語』を載せた座卓に座っていた。
 何かと黒い噂がつきまとう井伏。太宰との関係においても『黒い雨』執筆についても。
 だが、本当のことは誰も知らぬ。
 人間は、外側から何か判断などしてはならないのだ。

「厄」とは災難だけではない、もとより。肉体的・精神的な変調でもある。

電話詩を書くことは、「風邪をひかないとおまじない」と書いているメール(下の「冬」という詩を参照)井伏。
 もちろん彼一流のユーモアも含まれているのだが、小説に書かなかった、あるいは、書けなかった事柄などを詩にして、自分自身の精神的な鬱積である「厄」を解いていたのだろう。
 さてさて「厄除け詩集」。この「厄除け」、読む者にとっても、なかなかの御利益をもたらしてくれそう。

メール   冬

 三日不言詩口含荊棘

 昔の人が云うことに
 詩を書けば風邪を引かぬ
 南無帰命頂礼
 詩を書けば風邪を引かぬ
 僕はそれを妄信したい

 洒落た詩でなくても結構だらう
 書いては消し書いては消し
 消したきりでもいいだらう
 屑籠に棄ててもいいだらう
 どうせ棄てるもおまじなひだ

 僕は老来いくつ詩を書いたことか
 風邪で寝た数の方が多い筈だ

 今年の寒さは格別だ
 寒さが実力を持つてゐる
 僕は風邪を引きたくない
 おまじなひには詩を書くことだ
(筑摩書房版)
 後記
 これは以前に出した「厄よけ詩集」の改訂版である。もとの本にはずゐぶん誤植があった。今度それを直し、そのほか気になるものや消したいものは取除いた。消した穴埋めには、後に書いたものや思ひ出したものを付加へた。「厄よけ」は「厄除け」とした。私としては自分の厄除札の代りにしたいつもりである。
 昭和五弐年六月

 井伏鱒二メール

 さ、こちらも「詩」を書くか、ショートショートを書くか。









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最終更新日  2010.12.30 20:16:13
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