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March 14, 2006

久世さん最後のドラマ「東京タワー　オカンとボクと時々オトン」

(8)

カテゴリ：ＴＶ番組

昨日に引き続き、急逝した久世光彦さん関連のお話。

１１０万部を突破したリリー・フランキーさんの「東京タワー」。
私もブログを書き始めた頃、記事に書きました。
久世さんがドラマ化を熱望し、準備を進めていたものが、今夏フジテレビ系列でスペシャルドラマとして放映されます。
久世さんは自分の死期を感じていたのでしょうか。
「自分に万が一のことがあっても、絶対に実現させてほしい」とスタッフに話していたそうです。

私は父をがんで亡くしました。見つかってからたった４ヶ月での別れでした。
父親っ子だった私は、読み進めるうちに、リリーさんのオカンへの思いを自分のことのように感じ、同時に自分の親不孝さを思い知らされました。

どうしてこんなに遠く離れる前に、もっといろいろ話しておかなかったのだろう。

父が声に出して記事を読んでくれて、私は字を覚え、言葉の使い方を覚えました。

大学進学で家を離れ、就職してからも一人暮らしをしていた私は、結婚して実家の近くのアパートに住むまで、あまり実家には帰りませんでした。
父や母がキライだったのではなく、「いつでも会える」と思っていたからです。
子どもが生まれて実家によく行くようになってから、年をとってすっかり白髪になった父は、初孫を抱いてゆらゆら揺すり、ニコニコと笑いかけていました。

父が体の不調を訴えて入院したのは、２月の寒い日でした。
病院の先生に呼ばれて、母と二人、小さなレントゲンフィルムの倉庫で父の病気と余命について知らされた時も、どこかドラマの１シーンのようで、現実感がありませんでした。

父親が死ぬ。

人がいつかは死ぬということは十分わかっているけれど、自分の肉親にそんな時が迫っているということにあまりにも自覚がありませんでした。

結局父の病気は地方の病院では手に負えず、紹介された東京の病院に転院して手術をしましたが、６月の雨が降る朝に亡くなりました。
私は父の死に目に会うことはできませんでした。
一週間前に見舞った時が、生きている父に会った最後でした。

どうしてあの時、もっとちゃんと向き合わなかったのだろう。

リリーさんの本を読んだ時に、その時のことがまざまざと思い出されて、涙があふれて止まりませんでした。
今まで父のことについては、あまり思い出を話すこともありませんでした。
母も私も夫も（夫は父の得意だった手打ちそばを教わっておかなかったことを今でも悔やんでいます）。
どうやって言葉にしたらいいかわからなかった部分もあるのかもしれません。

それもリリーさんのおかげだったと思います。
久世さんが最期の命の灯火を燃やして取り組んだ「東京タワー」のドラマ化、どうなるのか見てみようと思います。

ちなみに「ボク」は大泉洋さん、「オカン」は田中裕子さんです。

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